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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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禍時の小径 ⑥



 全員がこの場に残ると決めた。私以外の皆んなは魔物との戦闘経験はまだ浅いにも関わらず、最低でもSランク相当の化物を相手にしようと言うのだ。命がいくつあっても足りない。念の為、残ると言った山下君とアベル君の二人にもう一度確認を取る。




「えっと、本当に二人は残るの? 死ぬかもしれない戦いになるけど………」



「承知の上でありますよ。ニア先生に護られるような男にはなりたくないでありますから、むしろ小生が命をかけて護り通すであります。それで死ねるなら本望!」



「僕も、美人な先生やメイドさんを庇って死ねるなら命は惜しくないよ!」



「「「………」」」




 二人はとんでもないことを言い出した。なんだか気合いの入りようもおかしいが、山下君の発言でニア先生の頬がほのかなピンク色に染まっている。私が見ていることに気付き、両手で頬を押さえてすぐさま後ろに振り向く。今の表情は完全に、恋に落ちた瞬間だろう。教師が生徒に手を出すことはないと思うが、卒業を迎えれば分からない。



 それに、アベル君は私のクラスメイトだったはずだ。リヴィアの件に関しては、ニア先生とは違い知っていた。もちろん悪魔であると言う事を………



 未だにリヴィアが悪魔であるという噂が出回っていないので、クラスメイトの全員が口を(つぐ)んでいるのは確かだ。




「ヤバくね? コイツら?」



「否定は出来ない………けど、何も言わないのが一番良いよ」



「はぁー、そうだな」




 エリスが、周りに聞こえない声量で話しかけてくる。山下君とアベル君の二人は少し狂信的な発言だったが、護りたいということには変わらないだろう。




「グァァァアアアア!!!!」




 重低音のような咆哮が体内にまで響いてくる。突然のことで身体が硬直してしまう。咆哮を発したドラゴンゾンビとは遠く離れているのに、私達に影響を与えてくる。今までとは違う咆哮で私は確信した。




「………ついに始まった」




 戦闘開始の合図、その代わりが効果的面だった。耐え忍んでいた冒険者達は、ついに痺れを切らし突撃し始める。雄叫びを上げることは一切なく、相手の一挙一動を見逃さないという熱意が伝わってくる。



 ドラゴンゾンビのすぐ側まで早くたどり着いた一人、男性らしきその人物は高々と剣を上げて力任せに振り下ろす。が、傷をつけることは叶わなかった。




「クッ! 硬い!」




 カキンッという、鉄と鉄を打ち合わせたような軽い音を響かせるだけで意味はなかったようだ。勢いをつけ、渾身の一撃を浴びせようとした影響で、剣を振り上げる前の状態にまで仰反(のけぞ)ることになる。



 全身に力を入れて、仰向けに倒れまいと必死に踏ん張っている。その結果、後ろに倒れることはなかった。さらに………




「身体強化! ハァァァアアア!!!」




 付与魔法に属する身体強化を体に施し、遠心力を利用するかの如く勢いをつけ斬り付ける。二度目の攻撃によって、先程とは違い小さなキズが出来た。



 だがドラゴンゾンビは何事もないかのように、次は自身の番だと巨大な前脚をその人物の真上へと移動させる。一瞬の間で誰もが理解した、そのまま踏み潰すつもりだろう。




炎連弾(フレイムバレット)」 「岩連弾(ロックバレット)」 「氷連弾(アイスバレット)」 「光連弾(シャインバレット)



「グァァァアアアア!!!」




 無数の魔法がドラゴンゾンビの顔面へと飛んでくる。視界を塞がれるだけではなく、ドラゴンゾンビは強制的に踏み潰す動作を中断させられた。すぐさま魔法を行使した存在を確認しようと、鎌首をもたげて向かってきた方向を見ようとしたが出来ない。身体に感じた違和感に気付き、自身の敵は既に脚元にいるとドラゴンゾンビは気付いた。



 そこにいたのは近接武器を構えた者達、何度も斬り付け攻撃を加えている。無駄だと分かっているが彼らの目的は倒すことではない。



 遠くに居る敵よりも、近くで邪魔を行なっている者達が脅威と感じたらしいドラゴンゾンビ、魔法を行使している者達を無視して暴れ始める。





















 崖の上にて待機していた者達がいた。一目見て魔女を思わせるような格好をしている者達、とんがり帽子に黒いローブを羽織っている。



 此処に居るのは、半数以上が女性で構成された即席のパーティーだ。彼女たちの役割りは、魔法をドラゴンゾンビに撃ち込むだけじゃない。弱点となる部分を探り、出来ることなら倒すことだった。



 一番前にて戦況を伺っていたリーダーらしき女性は「チッ!」と、暴れ始めたドラゴンゾンビに舌打ちをする。地面に巨大な前脚を叩きつけ揺らしているだけだが、運悪く踏み潰されてしまう可能性も否めない。



 女性が後方に合図を送ると同時に矢が放たれた。人手が少ない為に迫力に欠けるが、数人の射手による一矢がドラゴンゾンビに届く。




「ヨシっ!」




 矢が届いたとしても、ダメージを与えなければ意味がない。硬い身体である骨を貫ける威力を、普通は期待する。だが、彼女たちの目的は別にあった。



 矢が当たることはなく弾かれると誰もが思う。そんな予想とは裏腹に、ドラゴンゾンビの身体に矢が吸い付いた。



 その数秒後には爆発が起こり、煙と爆音を撒き散らす。魔法の威力を軽く上回る一撃、悲鳴に似た雄叫びを上げるところを見て、この方法なら通用すると確信した。




「通用しましたね! これなら………」



「倒せるかも! ドラゴンゾンビが相手だと知った時は、生きた心地がしなかったけど」



「うん! みんな、魔法と矢の準備!」




 最初の時とは大違いであった為に、全員で喜び合う。ただでさえ、戦って勝てる存在ではないと予想出来てしまったことで、戦意は喪失気味だったのだ。攻撃が通ったおかげで倒せると判断し、次の準備に取り掛かるが………




「………ん? なんだか様子がおかしい」




 なんらかの動きに気づいた一人は、ドラゴンゾンビが体勢を低くしたことで反撃に出ようとすると思ったが、様子がおかしいと観察し始める。



 背中にある、折り畳んでいた骨の翼をゆっくりと広げていった。風を受ける膜がないので飛べるとは思えないが、龍は魔力で飛行を可能にする。物理的な概念を一切排除した飛行を龍は行うのだ。


 

 ドラゴンゾンビは今まさに、その巨大な体躯に不釣り合いな三倍もの大きさがある翼で、飛びたとうとしていた。マズいと判断した彼女達は攻撃を再開する。




「………そんな⁉︎ 魔法が消された⁉︎」




 魔法による妨害で飛行を邪魔しようとしたが、上手くいかなかった。被弾する直前、ドラゴンゾンビは翼をはためかせただけ、それだけで魔法が掻き消される。



 そのまま驚いてはいられない。もしも離陸を許せば最悪の結果が待っていた。上空からのブレス攻撃はとても強力だ。手出しが出来ない場所、それだけで優位に立てる。逃げることも攻撃を当てることも難しい。



 継続して魔法を浴びせる。その度に翼で掻き消されて攻撃が届かない。このままでは魔法を撃つだけ無駄だと思った面々は杖を下ろす。魔法は魔力を消費している以上、限界がある。諦めた表情が浮かび上がるその瞬間、ドラゴンゾンビは今までよりも大きく翼をはためかせた。




「ちょ、ちょっと待って。あれって………」



「みんな!!障壁(シールド)展開!!」




 すぐに彼女達は攻撃されていることに気づく。おびただしい白い点々とした何かが向かってくる。それに気付くがもう遅い、障壁(シールド)を展開したところで間に合わないのだから。



 茫然とする者、恐怖に怯えて蹲る者、打開策を練る者にドラゴンゾンビの攻撃が降り注いだ。




 



 









 


 

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