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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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禍時の小径 ①



 カタカタカタカタ



「イヤァァァァァァァァァァァァ!!!」




 女性の甲高い悲鳴が洞窟内に響き、その声音は恐怖で染まっていた。完全に怯えていると分かる。本来であれば、すぐさま駆けつけて救出へと行動を移すのが一般的とされているのだが、今回の事情は少し違っていた。



 私達が現在いるところは"禍時の小径"迷宮へと潜って目的を達成しようとしていたが、攻略途中で一つの出来事が発生してしまった。それはエリスのアンデッド嫌いに由来する。



 こうなった原因は迷宮に入る数時間前のこと………





















 喫茶店にて突如行われた緊急会議、それは今回の件で潜る予定になっていた禍時の小径を見送るか、それとも攻略するかの話し合いだった。



 主軸となっている人物はもちろんのことエリスだ。



 彼女がアンデッドを苦手にしていると分かった以上は無視することが出来ない。迷宮で別行動は、かなり危険な部類に分けられている。その為にどうするかを考えていたのだが、エリス本人からは気にしないでくれと言われた。



 最初こそは納得出来なかったが、今では問題ないと判断している。迷宮"禍時の小径"に入って早々、エリスは獅子奮迅の活躍を見せていた。



 大剣であるデストルクシオンを頭上に掲げ、そのまま魔物目掛けて振り下ろす。




「はぁっ!!」



「ゴブゥゥゥゥゥゥ!!!」




 大剣の持つ重さのせいか何の抵抗もなく、スッパリと両断される。肩口から斜めに斬られたゴブリンの身体は、真っ二つに分けられ、光の粒子となって消えてしまった。




「せいっ! やぁっ! とおっ!」




 水を得た魚を思わせる程、生き生きとした表情と動きで、出現した魔物を瞬殺していっている。かれこれ三十体もの魔物、ゴブリン、スライム、コボルト、などの種類をたった一人で相手にして片付けていた。私達の出番がなく、全ての攻撃が会心の一撃で、戦闘が発生するのと同時に呆気なく終わる。



 迷宮に、戦う為に来た意味がないと本来であれば嘆くところである。が、迷宮へと潜ってまで普通の魔物を倒すことが目的じゃない。



 探しに来た魔物はアンデッドだ。特にゴーストと呼ばれる魔物、半透明の状態で白い姿をしている。物理的な攻撃を無効化するその特殊な性質を利用して、ちょっとした実験をしてみたいのだ。




「よーし、ちょろいな! これで三十個目だ! 次いくぞー!!」



「エリスさん、すごいご機嫌ですね。すこぶる調子も良いみたいで………」



「そうだね、エリスはデストルクシオンさえあれば、怖いモノなしとは言ってたけど………まだ実験段階だからって言ったんだけどね?」




 地面に落ちていた、水晶のように透き通る色がついた石、魔石を拾い集めながら巾着袋に次々と入れていく。魔石はエネルギー資源となっているので、換金所に持っていけば小遣い稼ぎにちょうどいい。パーティーメンバーに加え、リヴィアとニア先生を含めた八人もの人数で分けるとしたら意味ないが………



 機嫌が良いエリスは、大剣を片手で振り回している。私達は今からゴーストを見つけ実験するのだ。アンデッドの中でも特に苦手な部類に入るはずなのに………それは何故か、特殊な性質を持っていて攻撃が当たらないからこそ、エリスや獣人が苦手としていた。



 ゴーストは、魔法さえあれば簡単に対処出来る。だがエリスは魔法が使えないからこそ対策として、聖水を大量に用意していた。だとしても、怖い上に苦手としている以上はご機嫌ではいられない。アンデッドが出現する禍時の小径に、通常では意気揚々と入る気になれないだろう。



 その理由はデストルクシオンにある。魔力を溜め込むことが可能なら、ゴーストに干渉出来てしまうはずだ。つまり、迷宮へと入ることになった本当の理由がそれだった。造られたばかりのデストルクシオンの実験、それに魔力制御を習得出来ている実感を知る為には、ゴーストは相応しい相手だ。



 敵なしだとエリスは大剣を今も振り回しているが、危ないのでそろそろやめて欲しいと思った。だが時既に遅し、スポンッという音がしそうな勢いで、エリスの手から大剣が飛び出していったのだ。




「あっ!」



「「「あっ!」」」



「ゴブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」



「「「………………」」」




 私達の視線の先、そのまま空中できりもみしながらゴブリンの真上へと落ちた。絶叫を上げながら真っ二つにされて、先程のゴブリンと同じように消失していく。



 もしも私達の誰かに当たっていたら、ゴブリンと同じ結末を辿っていたところだろう。流石に笑いごとでは済まされない、全員が無言でエリスを見ている。件のエリスは申し訳なさそうに身を縮こませていた。



 この後、さらなる恐怖をエリスは味わうことになるとは誰も思わなかった………



 休憩を取り落ち着いた後、迷宮の攻略に乗りだすところまでは良かった。次に出現した魔物達が問題だったのだ。



 現れた魔物は"スケルトン"人型の骨をした魔物であり、細身の片手剣と円形の盾を装備して身を固めていた。それが一度に三体も出現したのだが、アンデッドに分類されているので、エリスからしてみれば相手にすらしたくないはず。



 表情を見ると嫌な顔をするどころか、かかって来いと言わんばかりに勝ち誇った表情をしていた。確かにゴーストと違って、物理的な攻撃が通る相手だからか恐怖は半減しているのだろう。



 ブンッと大剣を振るところを見ると、とても余裕があり、そのまま戦闘に(なだ)れ込むと思った。だがいつもと違い様子がおかしい。



 三体のスケルトン達は動くことなく、エリスをジッと見ている。何かに気付いたエリスは表情を崩し「なっ、何だよ!」と言いながら一歩後退っていた。最大限警戒して、両手でしっかりと大剣を握り込んで対応出来るようにしている。



 そしてここで冒頭に戻る………




 カタカタカタカタ



「イヤァァァァァァァァァァァァ!!!」




 エリスは絶叫を上げながら大剣を落とし、両手を頭へと置いて怖がっていた。



 何かに気付いたのはエリスの方ではなく、スケルトン達だった。一瞬にして恐怖の対象はアンデッドだと悟ったスケルトン達は、顎の骨を鳴らしてエリスを怖がらせることにしたようだ。



 そのせいで恐怖に震えて動かずにいると思われたエリスは、驚きの行動を起こした。すぐさま取り出したのは聖水の入った瓶、コルク部分を片手、しかも親指で器用に弾き中身をスケルトン達にぶっ掛ける。



 シャワーを浴びるかのように聖水で濡れたスケルトン達は苦しみ悶えていた。




「ギャアアアァァァァァァ!!!」



「メガアアアァァァァァァ!!!」



「イタイイイィィィィィィィ!!!」




 次はスケルトン達の絶叫が迷宮に響く、聖水を直接浴びれば痛くて堪らないだろう。アンデッドに対して効果抜群の聖水、丸々一本使用して倒すことに成功する。地面へと倒れ込み、その後は立ち上がることはなかった。



 







 


 





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