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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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報告



 夕食を食べ終えてまったりとしていると、双子が立ち上がり私のところへと駆け寄ってくる。




「お姉ちゃん! お風呂入ろー!」「入ろー!」




 風呂に入ろうと誘ってくる双子、一緒に入っても問題ない。昔からよく一緒に入浴を済ませ、寝床で就寝する時も同じだった。魔法学園に入学する前は、別々に入浴を済ませていたし、自分専用の部屋もある。



 突然そんなことを言い出したのは、私が学園都市に戻るからだろう。色々な事を教えていた影響か、必死に後ろを着いて回るぐらいに懐かれていた。双子でいつも一緒にいる時間が多いといっても、私の元から離れるのが寂しいと思い、実家にいる間の少ない時間を過ごしたいのだろう。




「良いよ、入ろっか?けど………」




 視線をテーブルの上に落とし見渡す、食べ終えたばかりの為に空の食器が未だに置かれている。この状態のまま、風呂の方へ行って一緒に入るには気が引けた。だがそれを察した両親は、威風堂々な立ち振る舞いで、任せろと言った雰囲気を醸し出し始めて言った。




「………此処は父さんに任せろ! 玲夏ちゃんが家にいる時間は少ない。真夜と真昼の為にも一緒に居てやってくれ」



「そうよ? 玲夏ちゃんが帰って来るって聞いて、楽しみにしていたのだもの、一緒に居てあげて」




 父さんと母さんの二人は、立ち上がり食器を片付けていく。さすがに悪いと思い、少しでも手伝おうと食器の一つに手を伸ばし掛けるが、横から詩音が奪い去った。



 思わずギョッ⁉︎として目を見開いたが、私の反応に構うことなく片付けている。もちろんエリスも委員長も同様に、何も言わず無言で手伝っている。残された私と双子は、仕方なくお風呂の方へと直行することになった。





















 リビング前の廊下にて、端末を耳に当てて相手が出るのを待っている詩音がいた。何度目かのコール音の後にようやく音が鳴り止み、その途端に全神経を集中させ端末へと向ける。端末から聞こえてきた声は、女性の透き通るような美声だった。『もしもし?』と、何処かで聞き覚えがあるその声の持ち主は………




「あぁ、ようやく出てくれました。リヴィアさん、夜分遅くにごめんなさい………」




 端末から聞こえてきた声の正体は、悪魔であるにも関わらず、メイドとして働くリヴィアだった。少し戸惑っている感じがひしひしと端末の向こう側から感じ取れた為か、不安そうに詩音は問いかける。




「………どうかしました? リヴィアさん?」



『いえ、気にするほどでもないのですが………いつもは念話の方で話しをしていたので、少し違和感があります』



「そうなんですか? まぁ、気にしない方が良いなら………ところで、あの件については?」




『フフフッ………問題ありません。バッチリです!』




 自信満々に言い切ったリヴィアの言葉に、詩音は唇の端を吊り上げほくそ笑む。周囲には内密に進めてきたことがあった。




『先ずは、魔法が使用された痕跡を発見することには成功しました』



「つまり裏には………」



『黒幕がいる可能性が濃厚になりましたね?』




 調査していた内容は、前回に出現した魔王種の件についてだった。独自の調査によって詩音がリヴィアに依頼する形でお願いしていたのだ。その結果、魔法が使われた痕跡を発見して、魔王種が出現したのは人為的だと明らかに分かった。



 魔王種と大量の魔物が消失したり、いきなり別の場所に現れた。それだけでなく、知能があるなし関係ないのにも関わらず群れていた影響も、これで幾つかの疑問が解けることになると思われたが………




『と、言いたいところですが、魔法の使用者についてはさっぱり分かりません』



「えっ⁉︎ ちょっと待ってください。今、言いましたよね? 魔法の痕跡を、発見することは出来たと」




 驚愕の表情で、問い詰めるかのように声を荒げている。詩音が驚いている理由として、魔法の使用者が分からない点だ。魔法の痕跡を辿れば、すぐに分かる情報が出ていてもおかしくない。魔力には人それぞれの特徴が現れる為に、分析した後は容易いのだ。



 魔力をエネルギー源として魔法へと変化させた後、魔法自体は霧散、分解されて魔素へと還る。そして魔素が人の体内へと吸収されれば、魔力になるというサイクルが存在している。その工程の途中に残った痕跡を見つけ辿れば、魔法を使用した黒幕を発見することが出来た。この情報は、世間一般がよく知る事実とされている。



 だが、使用者を見つけるのは無理だとリヴィア自身は言った。




『魔法の痕跡は見つけましたが、辿る事が出来ませんでした。もちろん、使用者自身がいないのであれば、話しは別ですがね?』



「そうですか………」




 深く考え始めた詩音の頭の中には、様々な疑問が渦巻いている。一つは黒幕がいて、魔王種を含めた魔物達を移動させた可能性が出た。だがどうやってそれを成したか?



 大量の魔力を注ぎ込んでも、街を攻められる戦力は移動出来ない。移動用の魔導具なら、と考えてみるが、始点と終点の二点が決まらなければ難しい。



 現場に残されているなら、簡単に分かってもいいはず。証拠を回収する為に、終点となった片方の魔導具をどうにかして隠したり、壊しに来ても良かった。もちろん、怪しい人物が現場にいればすぐに見つかる。



 二つ目は、魔法の痕跡が分かっても使用者が追えない。魔法が使用された魔力を分析すれば、それを追って犯人を突き止められた。どちらが難しいかと言えば、魔法の痕跡を発見することの方だった。その後は魔力の情報を元に追跡し、簡単に足取りを追えるのだが………悪魔であるリヴィアでさえも追跡出来ないらしい。




「魔法や魔力の痕跡を消すことは………」



『無理ですね。というより、長く放置すれば消せるのに、足取りを追えないようにするとは思えません。それが証拠に、魔法を使用した痕跡が消えていませんから』



「そうですよね? 気にしているなら、真っ先に消してもいいはず。自然現象で消えたにしては不自然過ぎますし………」




 ふと思い浮かんだ自然現象には、魔物や人が消失したといった今回に似たような現象が起こっている。特に世界三大奇象に関わる神隠しなら、魔物などが消えてもおかしくない。実際にそれは、魔法の痕跡が残ってなければの話しになる。二人は考えれば考える程に分からなくなる今回の件に、疑心暗鬼に陥ってしまう。




「まるで、魔力を持たない何者かが暗躍しているみたいですね?」



『えぇ、まさに幽霊という言葉が相応しいですよね?』




 その例えに頷いた詩音は、七不思議の一つに数えられる"不変の少女"の話しに似た事が起きていると思い出す。クロミア社を出る前に詩音は、委員長である彼女に続きを聞いたのだ。



 "不変の少女"については何年も前に、似たような少女を見たことがあるという事例が報告されている。それも、迷宮に入る者達の一部と管理者達からだ。似ているなら、他人の空似で片付けられた。だが迷宮に入る際には確認が必要であり、不審に思った一部が調べ追跡した結果は、少女の足取りを追えなかったという話しだ。



 直に見つけて追っても、煙のようにいなくなることで、なんとか魔法を駆使して魔力を追っても空振りに終わったらしい。"不変の少女"もしくは"魔力を持たない幽霊"などと噂されている。




「とりあえず今回の件ですが、リヴィアさん。ありがとうございました。残りは私がどうにかします」



『分かりました。何か分かれば連絡してください。手伝います』




 端末の終了ボタンを押して会話を終わらせる。溜息を吐いて、リビングへと戻ろうとしたところで声を掛けられた。




「詩音? どうかしたの? さっきの会話………」



「れ、玲夏さん………」




 いきなり背後から声を掛けられた詩音はびくりとして振り向く。そこにいたのは、風呂上がりらしき"小鳥遊玲夏"彼女が怪訝な表情で詩音を見ていた。





 


 



 


 


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