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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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家族



 空を見上げると、すでに日は落ちて暗く、夜になっていた。このまま列車に乗って帰ることも出来なくはないが、その場合には深夜を越えてしまうことは容易に想像できた。かと言って、無理に乗って帰ることにしなくても良いだろう。



「どうするんだ?」と言ったエリスに対し私は待つように促す。三人はどうすれば良いか訳も分からない様子だったが、それほど長い時間を待つことなく目の前に一台の車がやってきた。



 夜のせいで暗くなっていた為に、誰が運転しているのかは分からない。だが私には、車に乗っている運転手が誰なのかは、手に取るように想像出来た。滑るようにゆっくりと停車した車の窓ガラスが下がり、運転していた人物が正体を現す。




「お・ま・た・せ」



「「「………」」」




 まさかの第一声に、私は声が出なかった。他の三人も同様に思って声を出せないのだろう。目をパチクリとしているだけで反応していない。車から顔を出したのは私の父親、表情は決まったと物語っていたが、その直後固まることになる。




「スゲー! もしかして、最新モデルの"アルタイル"かよ」




 車に齧り付くように見回し始めたエリスに、私の表情は既に引きつることしか出来ないでいた。まるで、キズがつきやすい宝石でも扱うように手を触れずに見ている。さらには端末を取り出し、車の持ち主に許可を得て撮影を開始し出した。



 聞かれた本人はその勢いに、ただ頷く事しかできずに石像と化している。エリスの持つ、あまりの執念にその行動しか取れないのは私も同じだった。私と同様に、詩音も驚いている気持ちだろう。隣でどうして良いのか分からずにいるのだ。



 そういえば、委員長が先程から見当たらない。何処かで(はぐ)れてしまったかと辺りを探していると、エリスと同じように鑑賞していた。




「私は将来………大人になったら車を乗り回して、街を飛び出そうと思ったことがあるんです。あの頃が懐かしいですね」



「ちょっと何言ってるか分からない」




 感傷に浸り出した委員長、訳が分からなかった。過去に何があったのかは推測ぐらいしか出来ない。街を飛び出してまで嫌なことがあるならば、それは仕方ないと言える。



 その後、ようやく落ち着いたエリスと委員長を伴って、車は走り出した。





















 車が走り出してから十何分程か経った頃、とある一軒家の前にて止まった。車から降りた私達は、その全貌を見渡している。ライトアップされたおかげで、夜にも関わらず家の全体像が分かりやすい。



 豪邸とまではいかないが三階建てはありそうな中々の邸宅、しっかりと管理されてる影響か落ち葉一つなく、植えられた植物は青々としている。清潔な印象をを与えるこの家は、何を隠そう私の実家だ。



 三人は何も言わないが既に察しているのだろう。今日は此処で、夜を明かし過ごすと分かっているはずだ。私達は玄関まで歩いていき、中へと入る扉を開ける。



 すると………




「「お姉ちゃーん!!」」



「グヘッ⁉︎ 」




 突如、お腹に突撃されて衝撃がくる。前にもあった光景がまたもや再現された。飛び込んで来たのは二人の少女だ。とてつもない衝撃にお腹を摩って和らげていると、真っ先に意識を取り戻した詩音が心配してくれる。




「だ、大丈夫ですか!」



「大丈夫だから問題ないよ。真夜、真昼、久しぶり………」



「「久しぶりお姉ちゃん!!」」




 詩音に問題ないと返した私は、改めて二人の少女を見る。ショートの黒髪に赤い瞳をした少女と、ロングの金髪に青い瞳をした少女の二人、髪や瞳はそれぞれ違うが似た顔をしていた。つまりこの二人は双子にして、私の妹達だ。それぞれ双子の自己紹介をしようと思い、三人の方へと向き直る。




「皆んな、紹介するよ。私の妹である双子の………」



「"真夜"です!」 「"真昼"です!」




 黒髪の方が"真夜"で、金髪の方が"真昼"髪と瞳が違うので区別がつきやすい。



 仲の良い双子の妹達に近づいた三人は、自己紹介しながら妹達の頭を撫でて可愛がっている。私からすれば自慢の妹である為に、三人の反応は素直に嬉しかった。




「私は詩音と言います。可愛いですね!」



「エリスだ、あたしにも弟妹(ていまい)がいるが可愛いな」




 詩音とエリスは双子の頭を撫でて、可愛いと言い合っている。エリスに弟や妹がいるとは驚いたが、それよりも委員長は、車を鑑賞していた時と同じ表情をしてどこか懐かしそうだ。




「本当に可愛いですね。この双子は、私は弟よりも妹が欲しいと思っていたんです………」



「そうなんだ………」




 なんだか、悲しそうな表情が入り混じった感じがして何も言えない。思った以上に過去に何かあったと分かる。あまり詮索しない方が良いと思い触れずにいると………奥の方から一人の女性が顔を出した。




「あら? 玲夏ちゃん。おかえりなさい」



「ただいま、母さん」




 顔を出したのは私の母親、隣には父親が立って様になっている。相変わらず若々しいカップルと言えなくもない二人は、自己紹介を始めた。




「みなさん、こんばんわ。玲夏ちゃんの母親である"レイン"と言います」



「改めてよろしく! 父親の小鳥遊"真刀"だ。いつも娘が世話になっている」




 両親が名乗ったことで三人は畏まり、同様に自己紹介を行っていく。そのまま留まるわけにはいかず、玄関先にいた全員はリビングへと移動した。



 リビングの卓上には既に夕飯が支度されており、三人の目が釘付けになる。時間が時間なのでお腹が空いてペコペコだった。




「今日は手巻き寿司よ〜!」



「美味しそうですね!」



「あれから色々とやらされて、食欲が沸かないと思ってたけど、こうして見ると食べたくなってきたな…」



「ですね………」




 思わぬサプライズに喜ぶ面々、パーティーに最も適した手巻き寿司が今晩の夕食だった。海苔や酢飯が用意され、よく有る具材の数々が揃っている。中には、オカズとして食べられるハンバーグや豚カツなどの料理が、手巻き寿司に入れられるように小さく一口大にされていた。今晩の食事はとても豪華だ。



 実家に連絡は入れていない。クロミア社に着いたのと同時に、社長である父さんに伝わったのだろう。結果的に私が家に帰って来ると思い、夕食を用意し待っていたのだ。もしも途中で帰ったとしても、何らかの手段を用いて社員の人達に止められたはず。元々帰省するつもりでいたので、そんな事にはならずに済んだ。



 食卓を全員で囲み、決まり文句を言い終え早速手をつける。詩音は、定番であるマグロの赤身や胡瓜きゅうりを酢飯と海苔に巻いて食べていた。エリスも同様に、サーモンや細切りの卵焼きを入れて食べている。各々、好きな食材を中心にして頬張って食べているが………



 ただ一人だけ、いつもと様子が違う。ワイワイと盛り上がり美味しそうに食べて、皆んなが笑顔になっている中で、私が気になったその人物は委員長だった。



 彼女は落ち着いた感じで、どこか(うわ)の空だった。




「委員長、食べてる?」



「はい、食べてますよ。美味しいですね〜」



「それなら良かった」




 先程とは違い、委員長も笑顔溢れる表情で手巻き寿司をパクつき出した。無理をしてまで食事をしている様にはさすがに見えない。そんな彼女の事が気になっていた両親の二人も、私達との会話に口を挟んだ。




「滴ちゃん、って言ったわよね? まだまだあるからいっぱい食べてね」



「そうだぞ、玲夏ちゃんの友達だからな!遠慮はいらない」




 両親の言葉に委員長はこちらを振り向く、何かあるのかと思っていると………




「素敵な家族ですね、小鳥遊さん。此処に来て良かったです。ありがとうございます………」




 委員長は、私にお礼の言葉を言った後に食事に戻る。憑物が落ちた表情で笑って食べる姿は、不安や悩みを払拭したといった感じだった。

 



 



 




 


 



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