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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第3章 交流戦
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探し物



 静まりかえった、物音一つしない図書館に私は来ていた。今は授業中のはずだが、生徒手帳がない為に迷宮には入れない。その代わりに授業自体が免除されて、終わるまでの間は自由行動が許されていたのだ。



 学園の敷地内にある図書館だったが、一般の人達も積極的に使用しているみたいだった。何十冊も借りている人もいれば、静かに読書に勤しんでいる人達もいた。



 私は本棚に入った本を一冊、手に取ってはページを(めく)っていく。だが目当ての情報は一つも出てこない。今までに様々な本を読んできた為か、ある程度の情報は頭に入っていた。




「………やっぱりない」




 クラスメイト達が迷宮に潜っているのを良いことに、空間魔法等の資料を探しに来ていたのだが、どれもこれも見た内容ばかりであった。私が欲っしているのは今までにない情報だ。



 "空間魔法"について、世間の常識的に最も難しい魔法という認識になっている。召喚魔法、転移魔法、収納魔法などを合わせ持った魔法であり、私達が使えるのはごく一部の空間に属するとされる魔法のみだ。



 最高といえる研究素材である為、今もなお研究者たちが取り組む難題と化していた。彼らの中では、空間魔法を習得すること、はたまた解明するのは世界の神秘を紐解く事に他ならないと言われている。未だに分かっていないのはそういう事だろう。



 習得困難とされている所以は、空間に干渉することが出来ないという点が大きい。幾ら魔法や魔力でも干渉出来なければ意味がなく、素手で空を掴むような話しになる。さらに魔力消費の関係上、使うこと自体が不可能とされている程の魔法だった。



 召喚魔法であれば契約を結び、証を刻む事によって始点と終点の相互関係を生み出す。その結果、自身の元に召喚獣を呼び出し使役することが出来た。



 収納魔法は魔導具で実現し、転移自体が短距離であるなら、消費する魔力を抑えて使えた。もしも空間に干渉する事が出来、自由自在に操れるようなら無敵に近い存在になれるのだ。



 とりあえず私は、その場を離れ休憩用のスペースへと移動した。飲み物や食べ物が販売された自販機に囲まれる中で、紙コップに入れられたコーヒーを飲みながら休憩していると、見知った人物がやって来た。




「………玲夏さん」



「ん? 詩音、迷宮攻略は終わったの?」



「はい! 順調に進められました。怪我もすることなく、問題ありませんでした………えっと、玲夏さんは迷宮に潜らなくて良かったんですか?」



「問題ないよ、私の実力はある程度なら知っているでしょ? それに迷宮に入るだけなら、裏ワザみたいなものがあるから、どんな場所かも知っているし………」




 正規の方法であるならば難しいが、それ以外の入り方はごまんとある。冒険者たちの斡旋所、ギルドに頼んで護衛依頼を受けてもらう方法だ。高額な金銭を支払う必要があるが、問題なく入れる理想的な形になる。



 ただしこの方法の場合は、入りたいという理由だけで利用する人はいない。大抵は戦力がない研究者が行う方法であり、それ以外は物好き位の人物であった。



 他にも、強引に入ったりする方法や人の目を盗んで中へと入る方法もある。それと、此れ自体は偶然の産物だが、未発見の迷宮を一から探す方法などが存在した。



 それと後一つ、周りくどい方法になってしまうが、自身の実力をギルドや魔法省に認めてもらうことだ。上位の人物に受け入れてもらったりすることで、手続きを踏まずにすんなりと入れた。



 詩音は前回の事を思い出したのか、私の向かいにある席に座りながら納得している。




「なるほど、確かに玲夏さんなら問題ありませんしね。ところで………図書館に来ていたのは何かの資料探しですか? 手伝いますよ?」



「ありがとう。気持ちだけ受け取っておく」



「そうですか、何かあればすぐに言ってくださいね!」



「うん………」




 私が図書館に来た理由は、突如現れた魔王種を含めた魔物たちの消失と移動した事についてだ。可能性としては空間魔法による現象だが、流石に無理があった。



 召喚魔法でも、大規模な数の魔物を呼び出す事は不可能に近い。一体だけであれば問題ないが、複数体を同時に召喚しようものなら大量の魔力を消費してしまう。その上に、森の中から学園都市まで距離がありすぎた。一般の人どころか、上位の魔法師でさえも、資料内に残っている空間魔法の情報であれば魔力が足りなさ過ぎるのだ。



 此れが魔王種の異能や魔法であるならば納得出来るが、戦闘中に空間魔法に関わるような力は使っていなかった。使用されていたならば、最悪の状況になっていてもおかしくなかったはずだ。それで考えられるのはただ一つ………



 人為的な影響によって発生した場合、つまり魔王種を含めた魔物たちの背後に誰かがいた可能性だった。



 そう考えてみれば辻褄(つじつま)が合ってしまう。魔王種が空間に属する能力を使わなかったのも、本来の生息場所が違っていたのもそうだ。



 だがそんな確証はない。もしもそんな存在がいたとしたら、何らかの目的を持って魔王種を学園都市に(けしか)けたとしか思えないが、今は事件になりそうな事は全くと言っていいほど起こっていない。



 色々な可能性を考え込んでいると、心配しているのか、不安そうな表情をしていた詩音は口を開いた。




「その………大丈夫ですか?」



「あぁ、うん、大丈夫。ちょっと考え事をね!」



「それなら良いんですが。一つだけ聞いてもいいですか? 」



「ん? 良いけど?」




 聞きたいことと言われて考えてみるが、思いつかない。コーヒーを(すす)りながら、詩音の質問を聞く事にした。




「魔王種との戦闘に使った魔法は何ですか? あの、青い炎の魔法、普通じゃないですよね? 」




 深刻な表情をしながら言った、聞きたいことの内容は魔王種を相手に行使した魔法だった。初めてみる者でも、あの魔法が普通と違うと分かるらしい。




「あっ!」



 何かに気がついたのか、詩音はすぐさま両手で口を隠しながら申し訳なさそうにする。




「流石に秘密を聞き出すのはマズイですよね? 今のは忘れて下さい」



「………別に良いよ?」



「えっ⁉︎ 良いんですか⁉︎ 」




 返ってきた答えに、詩音は目を思いっきり見開き驚いている。彼女自身は知られたくない秘密と思い込んでいるみたいだが、私は情報が流出してしまっても問題ないと思っていた。




「私があの時に使ったのは、"複合魔法"………合成魔法とは似て非なる魔法だよ」



「複合魔法? どういう魔法なんですか? 」



「………まぁ、それよりも先に合成魔法の方だけど。どのような魔法か知ってる?」



「えっと、確か、相性の良い魔法同士を合わせる魔法ですよね? 二つ以上の、属性魔法が使える事が条件にもなっていたはずです」




 どのような魔法かは今言った通りだ。合成相性は最も相性の良い魔法同士を組み合わせて、予想以上の威力を生み出す魔法がそれだった。



 属性には様々な相性が存在し、相乗効果を求めた結果の現象であった。魔法は自然を模した形が多い為か、災害に関する合成魔法が数多く存在している。




「合成魔法はその通りだけど、複合魔法は違う。属性自体が持つ性質を、絡め合わせる事がこの魔法の本質」



「えっと?」



「分かりやすく、火属性の燃焼と氷属性の持つ凍結を合わせた魔法って言えばいいかな?」



「あー、なるほど、分かりました!」




 今の説明で詩音は理解したようだ。複合魔法は自然の中に存在しないために、合成魔法よりも組み合わせは数を超える。




「あの、考えてみればみるほど分からないんですが、良かったんですか? 」



「何が?」



「複合魔法の情報を話すことです。私が言うのもなんですが、話しの触りだけでも大変危険な魔法だと分かります。こんなところで話して良かったんですか?」



「………そのことか」




 実際の魔法を見た後であれば、どれだけ危険かも分かる。だが、詩音が懸念するような事は絶対と言える程にない。




「大丈夫、複合魔法は私しか使えないから」







 



 






 

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