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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第2章 魔王襲来
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終局



 魔王種との戦闘、一度でも攻撃を受ければ大ダメージに繋がる事は間違いなかった。さすがに逃げているだけではなくなってきたのか、全ての魔法を無視して突っ込んでくる。私はそのタイミングに合わせ、得意な氷属性の魔法を発動した。




氷欠泉(アイスゲイザー)



「ガァウ⁉︎ 」




 迫る直前に動きを突然止めた魔王種は、その原因を即座に見た。既に脚元は氷漬けにされており、必死に逃げ出そうとするがそれは無駄に終わった。



 徐々に全身を氷に(おお)われて完全に動きを止めた。まだ、魔王種の体内まで氷漬けにされてはいないが、既に戦闘が終わったも同然だ。



 氷の彫刻へと姿を変えた魔王種は、厚い氷の中で時を停められているようだった。先程まで動いていたせいか、今にも動き出しそうな程に迫力がある。何の変化も起こらないので、私は肩の力を抜いて一息()いた。




「疲れた。魔力の方はまだまだ問題ないけど………どうして最後は空を見ていたんだろ?」




 戦闘が終わったので城壁へと戻ることにした。召喚獣を呼び出せれば、()っくの()うに終わっていたが、一度戻したせいで冷却時間(クールタイム)が発生していた。



 その途中に、ふと気になった疑問が脳裏に過ぎる。



 魔王種は何故か、最初の方は逃げ出そうと必死にもがいていたようだが。最後には、氷に閉ざされる瞬間まで全く動じている様子がなかった。



 これが諦めた結果であればまだ良い方だが、妙な胸騒ぎがして考えずにはいられなかった。



 それはそうと先程から、上空では雷鳴がなっている。学園長、祖父による魔法であれば既に魔物は一掃されていたはずだ。なので天候操作(コントロールウェザー)の役目はとっくに終わっているはずだった。




「んっ? 雨?………まさかっ⁉︎ 」




 ポツリと水滴が落ちてきたと思い。何気なく空を見上げていると、一つの可能性に思い至った。



 だがその時、先程よりも強くゴロゴロと雷鳴が鳴り出した。さらに一筋の閃光が走ったと同時に地面へ、氷漬けにされていた魔王種の上へと雷が落ちる。



 私は、突然の落雷による光と音に両手で耳を塞ぎギュッと眼を(つむ)っては衝撃に備える。距離が遠く離れていたとしても、強烈な雷にそうせざるをえなかった。



 落ちた雷、衝撃と爆音に頭の中が混乱している。目の前で起きた事に理解出来なかったが、少しずつ状況を把握することが出来た。



 魔王種の動きを封じていたはずが、雷によって破られてしまった。(もろ)く崩れていく氷はガラガラと音を立てている。その中からゆっくりと這い出てくる魔王種に、私は構え直す。




「まさか………氷に閉ざされる前に、魔法を発動させていたなんて。あの時に空を見上げていたのはこの為か」




 氷に覆われてしまったら何もできないと悟って、(あらかじ)め魔法を発動させていたのだ。何事もなく出て来た魔王種は、一歩一歩進んでくる。動きが鈍いのは、先程の氷属性の魔法により内部まで氷漬けにされた結果だろう。



 今度はこちらの番だと言わんばかりに、魔王種は周囲にバチバチと音を響かせた雷の球を出現させる。それと同時に空からは、いまにも落ちてきそうな雷が待機していた。



 そして無数に展開された雷球が襲ってきた。だが、雷球は瞬きの合間に一瞬にして消えてしまっていった。



 私は空を見上げ、同様に雷雲を消した。今は、魔法を発動する前の空模様へと変化を遂げている。いい天気と言える雲一つない快晴の空に、魔王種は驚きを露わに身体を硬直させていた。




「魔眼を使う時が来るなんて、あまり正体が分からないようにって言われてるけど………仕方ないよね」




 本来の魔眼が持つ能力を行使した結果、発動していた魔法が綺麗さっぱり消えていった。私の魔眼には事象を観測する能力と、それを変える力がある。その結果、魔法は無かった事にされたのだ。



 魔王種は今の現象に警戒するも私を睨み、新たな魔法を発動した。身体から雷が溢れ出ると、それを鎧を着るように纏う。雷纏とでもいうべき魔法を行使し、大地を蹴った。



 遠く離れた距離を一気に詰めた。さすがに危険だと判断したのか、これで最後にするつもりだろう。雷纏による魔法の効果で、速度とともに威力が上がった状態で突進を仕掛けてくる。




「複合魔法・氷炎獄」




 いきなり出現した青い炎に、纏わり付かれた魔王種は無視してまで攻撃をしてきた。だが次の瞬間には、全身に青い炎が周り飲み込まれる。



 魔王種は飲み込まれたまま燃やされている。青い炎は球体状に変化して渦巻いていた。数秒後に消え去った青い炎の中心には、身体を横たえる魔王種らしき黒炭があった。




「もう、これで終わったかな?」




 動く気配がない事を確認した後、これで戦闘は終わったと安堵した。





















「あの魔法は何ですか? ただの青い炎ですか?」




 詩音の発言にリヴィアは黙して答えず。人差し指を顎へと添えて、考えている。そして考えがまとまったのか彼女は口を開いた。




「分かりませんが、あれはただの青い炎ではないと思いますよ? それに………あれだけの魔法を使って魔力量を大幅に削ったと思います」




 二人は、彼女が使っていた魔法を考察するが、答えは出なかった。魔王種を一撃で沈めた青く燃える炎、そのような魔法は今のところ存在していない。



 それどころか魔法省の記録には、あの青く煌く炎は載っていなかった。似たような魔法の中でも完全な青い炎はないのだ。つまり考えられるのはオリジナルと言える独自の魔法………




「私はあの魔法を見た事は有りません。リヴィアさんもですよね?」



「はい、その通りです」



「玲夏さんが、あれだけの魔法を使えるとは思いませんでした。何か聞いていませんか?」



「いえ、全く………ただ一度だけ、質問をした事があります」




 質問という言葉に首を傾げ、返事を待っていた。一体どんな言葉を聞いて、彼女がどう返したのか気になったのだ。




「………ご主人様の生き甲斐を聞いた事があります。その時の答えは………何だと思います?」



「えっ? えっと………もしかして、食べることとか?」



「アハハ………ご主人様らしいですね〜、ですがその時の答えは、魔法の深淵を、真髄を知ることが生き甲斐だと言っていました。だからこそ、魔法学園に入ったと………」




 魔法の事を詳しく知るなら、学園に入る事にも納得できる。だがリヴィアの放った一言に、詩音は驚き目を見開いた。

 



「私はそれを聴いて、嘘だと思いました」



「それはどうしてですか? 魔法学園に入った以上は、大抵の人は魔法の深淵を覗く為に頑張っています」

 


「実際にはそうでしょうね、ご主人様の答えに私は納得出来ませんでした。その時に感じた心は空っぽで、何か求めています。ですが、あれだけの魔法を見せられた事で確信しました」



「確信………」




 その言葉を反芻(はんすう)してみて考える。彼女、リヴィアの放った言葉である確信は、今まで考えた中でようやく分かったのだろう。




「ご主人様は魔法に絶望しています」


 

 

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