廃魔教団
その後は、様々な料理を頼んでは平らげていった。どんな料理も手が込んでいる、唐揚げ、ナポリタン、ホットケーキなどのメニューを一通り食べてみた。料理人がそれ相応の知識や技術を持っていなければ、これらの料理を作ることは出来ないだろう。
すぐ側で私の食事風景を見ていたエリスは、頬を引き攣つらせていた。彼女からしてみれば、私が全て食べるとは思わなかったようだ。
「ご馳走さま、美味しかったよ? エリス」
「………んっ? あっ、あぁ、そりゃ良かったよ。先輩も喜ぶはずだ。………小鳥遊、お前あんだけの量をよく食べる事が出来たな?」
「まあね〜」
気が付くと、詩音が外の風景を眺めていると思っていたが、どうやら違ったようだった。
彼女の視線を辿って行くと、黒いローブを纏ってチラシを配っている人たちがいた。いかにも怪しいと呼べる者達だが、私は見覚えがあった。
「また廃魔教団の奴らか?………」
「………廃魔……教…団、って、玲夏さんを人質にした人達………」
ついこの間のショッピングモールにて、私を含めた人達を捕まえては、身代金を要求した宗教信者の残党たち。
とはいえ彼等は、今すぐに警察から捕まる事はないだろう。なにせ問題どころか、犯罪さえも侵していない人達だ。一人や二人騒いだところで意味はなかった。
「はぁー、全く!チラシ配ろうが問題ないが。辛気臭いんだよなぁ、何て言うか、必死過ぎるんだよ」
エリスの言葉はある意味で的を射ていた。彼等はチラシを配っているだけだが、その際の熱意が別の意味として伝わってきた。
座っている席からは、ガラス越しの為に何を言っているかは分からない。だが、声を出してはチラシを受け取ってもらおうとするのは分かるが、そのあまりの必死さに多くの人達は見ないよう、関わらないようにと近づかずに避けていた。
明らかに変人を避ける、その行為に誰も咎めることは出来ないだろう。自分自身でも出来る限り、近づきたくはない信者たちだった。
「………その、玲夏さんは何か思うところはありますか? あの人達の仲間に捕まっていましたし、言ってやりたい事があるんじゃ?………」
「んっ? いや?無いけど、どうかした?」
「えっ?………本当にですか?」
私は彼等に対して思うところがある訳じゃない。それに犯罪を侵した者たちではない為でもあるが、彼等も一番の被害者であった。
「………あの人たちの中には魔物によって、大切な人が殺されてしまっている場合もあるから。私は何も言えないよ」
「玲夏さん………」
廃魔教団の目的は、この世界から魔力をなくす。または魔物を根絶させることが目的だった。入信している人達の大体は、家族や親しかった者の敵を討とうとする為に魔物やこの世界を憎んでいた。
先程の詩音と同様に彼等を見ていると、十歳ほどに満たない少女と目が合った。私はあの少女を見て驚いてしまった。
「………えっ?、魔力がない?」
「どうかしました?」
「………な、何でもない」
もう一度あの少女がいた場所へと目を向けたが、その少女の姿はどこにもなかった。
驚いた理由は一つだけ、魔力は魔物の生命そのものそして人類にとっても魔力がなければ死んでいるも同然だった。
あの少女の魔力がない事を、色々と考えてみたが答えは出なかった。
それから食事が終わってゆっくりとしていると、端末から着信音が鳴り響いた。どうやら祖父からのメールだったようで、私はその文面を確認して驚いてしまった。
「………エリス。すぐに会計をして!」
「わ、分かった!」
ただごとではないと察したエリスは、すぐさまレジの方へと飛んでいった。そして私は、連れである詩音に謝った。
「詩音。ごめん! 今日は先に帰って」
「えっ⁉︎ まっ、待って下さい玲夏さん」
端末に送られてきた内容は一言だけだった。
『学園都市近くの森で魔王が現れた』
私がまず向かうべき目的地は学園だった。学園長を務める以上は、大抵その場所から動く事はなく。非常事態が起こった際は、学園に集合する決まりになっていた。
「………詩音? 何やってるの、とりあえず帰って?」
「ハァ、ハァ………玲夏さん。一体何があったんですか?」
喫茶店を出てから付いてきた詩音に、私は帰るように促すが効果はなかった。なぜ急いでるのかをしりたいんだろうが、それは無理な相談だった。
本来であれば家にいる方が安全である。だが考えてみると、非常事態な為に学園に入る事になるかもしれなかった。ならば詩音には先程の事を伏せた上で、一緒にいた方が安全であると判断した。
学園まではもうすぐだ。最悪、セイラさんにお願いしてみればどうにかしてくれるだろう。
学園の校門前に誰か人影が見えて近づいていくと、どうやら学園長のようだった。ある程度近づいていたおかげか、あちらの方も気が付いた。
「………すまんのぅ、玲夏ちゃん。いまセイラが車を回しているところじゃ、少し待っておれ」
「ごめん、おじいちゃん。詩音が付いて来ちゃった」
「問題ないぞ、玲夏ちゃんが居れば心配ないじゃろ?」
問題ないとはいえ、さすがに何かあれば守りきれない。今回の件で何があったか聞こうと、口を開くが出来なかった。セイラさんが運転している車が前方からやってきのだ。
魔導車、動力源を魔石から抽出して動かしている車に私たちは乗り込むと、セイラさんはすぐさま目的地へと車を発進させた。




