悪魔の真実
「喜んでいるところ悪いけど、 悪魔の召喚によって契約した際は、なにか、対価が必要になるんじゃ………それに何で魔典が無いのに召喚出来たの? 」
「………先ずは、対価は必要じゃありませんよ? 魔典によって召喚された場合のみ、私と契約を為された訳じゃないので」
「えっ⁉︎ どうして⁉︎」
悪魔を呼び出し召喚する為には、魔典は必要になる触媒だったが、今回の件で例外が出来てしまった。歴史に残っている中で、魔典も無しに召喚はそうとうに無理があった。
魔法陣の効果として、その人物に合った召喚獣がランダムで呼び出され、契約を結ぶ事になっていた。人類からしてみれば悪魔は、最悪の敵になる為に魔典も無しに召喚は出来ない。
「ご安心くださいませ、ご主人様に対価を求める事は致しません。それこそ神に誓って………」
「………」
悪魔の口から神という言葉が出て来た。信じられない、悪魔からすれば神や天使は天敵に当たる存在になるはずだが、すぐにその理由が分かった。
「ご主人様は、天使を創造した存在は神だと知っているなら、悪魔は何者だと思いますか?」
「………悪魔は人類の敵対者じゃないの? 」
考えられるのは一つだけだった。人類に相対しては魂を奪う存在こそが悪魔だと、私だけでなく多くの者たちが思っているはず。もしも違っていたとしたら何者なのか………
「神は自身の使いとして天使を創造しました。そして同様に造られた存在こそが私達、悪魔であります」
「………………」
いきなりの衝撃的な発言に言葉が出なかった。宗教に入信した信者たちが聴けば、間違いなく叩かれる事になるであろう発言だ。
神に敵対する者として悪魔が存在し、人類に災禍を齎らし混乱させる事が、悪魔の本質だと思っていた。
「………魔典を触媒に使用しないで召喚って、出来るの?」
「絶対に有り得ませんね、触媒無しでの召喚は出来ませんよ? それがいい証拠に、私は誓約に引っ掛かってませんから。もしもそうであれば、ご主人様の願いを叶えて、対価を貰えないと困る事になりますから」
それじゃあどうして呼び出せたのか分からない。それよりもリヴィアが言っていた、誓約とは何だろうかすごく気になる。出来る事なら教えて貰いたいと思った私は口を開いた。
「その、誓約って、何? 出来れば教えて貰いたいんだけど? 」
誓約という事なら、何らかの秘密を守らなければならないだろう。神に対してなら絶対に破れないはずだ。もし破ってしまったら大変な事になる、もしかしたら最初から喋れないかもしれなかった。
「問題ないですよ」
「えっ? 良いの?」
「はい、誓約というのは悪魔と天使に課せられた呪縛そのものです。もう少し詳しく話すのであれば、人類に対して私達は手を出せないと、言えばいいでしょうか」
「もしそうなら、街中で暴れる事が………」
「出来ませんね」
リヴィアが言った事が本当なら、分からない事がさらに増えてくる。人類に敵対していた悪魔たちはどうして手を出せたのか、呪縛という名の誓約は何故あるのか、そして神は天使と同様にどんな目的で悪魔を創造したのか。
「魔典によって契約を結ぶ事になったら、願いを叶える事が出来るんだよね?」
「そうですよ」
「つまり、魔典によって召喚されたら………」
「呼び出した人物の願いを叶える為、一部の誓約が解除される事になります」
誓約が解除されたら、人類に対して攻撃出来る様になる。今までの悪魔による事件は、その人の願いを叶えた結果だろう。
そして対価を求めた結果が、その人の人生や生命になるのだ。復讐心に駆られでもしない限り悪魔を召喚なんてしないし、利用しようと思わないはずだ。
「それに悪魔としての本質、使命は人類に対して絶対悪である事が、私達の存在意義です。言ってしまえば人類の悪を裁き、人類の敵を演じる存在が悪魔です」
「………それって」
「それこそが私達の使命、より良い世界を維持する為には、悪魔という敵対者が必要になるんです」
どう考えても悪魔が悪い存在には見えなかったが、今更ながら考えたとしても無意味に終わる。そう言う事であれば天使は人類の味方として、善である事でなければならない。
「あとは人に対して嘘はつけませんね。悪魔は、欺くことはしても、嘘はつけないように誓約で縛られていますから」
「そ、そうなんだ」
「そうですが、私はそれよりもご主人様に興味があります。どうして私を召喚出来たのか、それと魔力量が人の域を越えているという点がだいぶ………」
「ッ⁉︎ 」
最後に放った言葉に驚いた。人は魔力を感じるようになってはいるが、正確な魔力量を感覚的に知ることは出来ない。それこそ私の持つ魔力量でも、他人からは多いかなとしか感じ取れなかった。
リヴィアは私に近づいてきて、ジッと見つめて来た。彼女の燃えるような紅い瞳に惹き込まれる、眼が離せない程に綺麗な瞳だ。
「どうして私を召喚出来たんでしょうかね? この魔力に親近感を覚えますよ」
私はリヴィアのその言葉にしばらくの間、頭の中から忘れる事はなく考えさせられた。




