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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第2章 魔王襲来
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恐怖



「「「………」」」



「………」




 魔生物学が終了した後、私と詩音は学園長室へと足を運んでいた。静寂が満ちた部屋では誰一人喋る事はなく、時間がただ過ぎていくのを待つしかなかった。



 現在のところ、この学園長室にいる面々は私と詩音に部屋の主である学園長、そして秘書のセイラさんの合計四人に加えたもう一人………



 闇のような漆黒のドレスをその身に纏った、美人といえる女性がそこにいた。濃紺の髪色を持っている彼女のスタイルは抜群であると言え、少し露出したドレスで体型がモデルのような身体つきをしていると分かる程だった。多くの女性からしてみれば羨ましい美女だ。



 そんな美女は優雅な脚取りで、学園長室に置かれた品々を鑑定しながら歩いていた。だが、目を惹く彼女が街中を歩いていても、声をかける人はいないだろう。なにせ私たちも未だに声をかけられなかった。



 具体的な理由は一つだけ、彼女は凶悪で恐怖を(もたら)す存在だからだ。頭の側面の部分には禍々しい角があり、腰には蝙蝠(こうもり)の羽に似た翼が生えていた。つまり彼女は悪魔と呼ばれる生き物だった。




「………はぁ、なんて見窄(みすぼ)らしい」



「えっ⁉︎ み、みす………………」




 まさかの彼女から聞いた開口一番の言葉がそれだった。それに対して学園長が何かを言いたげだったが、あまりの言葉に驚き過ぎてなにも言えなくなってしまっていた。



 正直に言って私も予想していなかった。部屋の中を見終わった一言目がそれである、悪魔らしい自由過ぎる振る舞いに私たちはついていけなかった。



 この部屋にある調度品の数々には、それ相応の値段がつけられていたはずだ。私の座っているソファーを始め、花瓶、風景画の描かれた絵、そして食器も相当な値が付きそうな程にお洒落といえる。もしも一つだけ売っても破格の値が付きそうに見えた。



 ただしこれらの品々は、悪魔である彼女からしてみれば見窄らしく、価値がないように見えていてもおかしくなかった。



 それは身に纏った漆黒のドレスにあった。一流の職人が腕によりをかけて作成した衣装に思えた。



 細かい装飾が施されているところを見ると、腕利きの者たちが携わっている事が分かった。それらをまとめてみた結果、彼女は私たち人類がよく知る普通の悪魔とは少し違う事が分かった。



 その後の彼女は、改めて部屋の中を見終わった後に思った以上に物騒な事を言いだした。




「………ご主人様には相応しくない部屋ですね。いっその事、燃やしてしまいましょう!」



「やめなさいよ! 絶対!」




 すぐに否定した私の所に彼女が寄ってくる。怒っているように思えたが、目線の少し下に来る位置に(ひざまず)き、臣下の礼を行なった彼女に私は頭が痛くなった。




「ご主人様。御命令を何なりと」



「………送還」



「えっ?………おっ、お待ち下さ………」




 先程までこの部屋にいた彼女の姿は、今は何処にもなかった。言わずもがな、私の召喚獣として呼び出された存在が彼女だった。召喚魔法の一つである送還によって送り返されたその結果、淡い輝きを残してこの場から消え去った。



 元凶と化していた悪魔、彼女がこの場に居なくても楽観視出来なかった。もう一度、静寂に満ちた部屋で最初に口を開いたのは学園長だった。




「………まぁ、大丈夫じゃろ、あれは」



「そうですね、小鳥遊様に従順なので、問題はないかと思われますよ」



「問題だらけだよ!」




 私は頭を抱えた、悪魔と呼ばれる存在は非常に厄介だ。呼び出した者はその身を滅ぼす事になっている、それだけの存在であれば、召喚しなければ問題はないはずだが。悪魔は呼び出した者の願いを叶える、例えどんな形になろうともだ。



 しかも戦闘力や魔法の扱いについては、最上級に位置する魔物である、魔王種に匹敵する程だ。魔法を触媒なしで手足の様に自由自在に行使する上に、身体能力は高くそう簡単には倒せない存在だ。



 それだけ厄介な存在がもしも街中で暴れたら、怪我人どころか死者も出しかねなかった。下手な対応をしないよう、心がけたが杞憂に終わった。




「街中で暴れられたら最悪じゃったが………問題にはならんと思うぞ?」



「………魔法省とかは? 黙ってないんじゃ」



「いや、それこそ問題ないじゃろ? 魔典(グリモア)でしか呼べない悪魔を呼び出したんじゃ、信じないと思うがのぅ〜」



「学園長の言う通りですね、魔典(グリモア)どころか聖典(セクレト)すら有りませんから。それに魔法省は、その二つの聖遺物を管理下に置いてあります」



「………つまり?」



「魔法省から盗まれたという事になりかねないですね………ついては管理がなっていないと、国民から疑われる可能性も出て来るので調査する対象にはならないかと、もし行なえば、自身の首を締めかねないはずです」




 セイラさんの言う通り、魔法省からして見ればデメリットしかなかった。悪魔が出現したとなれば、魔法省が管理している魔導書が真っ先に疑われるだろう。なにせ悪魔の召喚をするためには魔典(グリモア)は必須の触媒だ。



 盗まれたと分かれば、魔法省の管理体制がなっていない、と言われ見直される事になる。それだけであれば良いが、誰かが問題になるように騒ぎ立てればそれこそ、収拾がつかなくなると思われるはずだ。



 今回の召喚には触媒、魔典(グリモア)は使われていないのに加え、生徒たち全員が証人として見ていた。もしも調査が入れば、何も分からずに終わる結果が予想出来た。




「まぁ、性格を見た限りじゃったが問題はないじゃろ? 街を壊すようにも見えんかったがのぅ? 」




 彼女は学園長室を燃やすと言っていたけど………




「そうですね、物の価値を見る目はしっかりとあると分かりました」




 それって、ロクな品がないと暗にいってますよね?



 とりあえずは、私に関する事は終わった。残っているのは詩音の召喚獣、カーバンクルの処遇なのだが。なぜか先程から、構って欲しそうに頭を(こす)り付けている。本来なら主である詩音に懐くはずだが、フサフサの毛が気持ち良かったのでどうでも良くなった。




「………それで、この子はどうする?」



「カーバンクルの件も内密になりますね、トレヴァー先生が生徒たちの口止めをしているはずです」




 やはり情報規制になったみたいだ。悪魔である彼女の事については黙っていれば問題にはならない。カーバンクルの方は誘拐される可能性があるので、充分に気をつけなければならなかった。




「詩音はまだ、送還の方はまだだったよね? 後で教えてあげる」



「いいんですか? 約束ですよ?」







 






 

 



 

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