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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第2章 魔王襲来
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犠牲



「庭園については見た者が少ないですから、嘘かもしれませんがね?ただその庭園に行った者は………」



「………い、行った者は?」




 委員長の言葉に恐る恐る尋ねる。庭園に行った者はどうなるかを、その答えに私たちは………




「何故か普通に帰ってきてるんですよね〜?」



「………」



「分からない事が幾つかあって、庭園の行き方と帰り方。そして何故か季節が冬なのにも関わらず、春同然の暖かさらしい事なんですよね?」




 その事について考えてしまう。庭園に行くならともかく帰り方が分からないという感じの言葉に、私も分からなくなってしまった。もしかしたら、迷い込んだ人に魔法を使っていると思ったが。精神に干渉する魔法はとんでもなく難しいのでほぼ使えないのだ。



 しかも季節は順繰りに回っているにも関わらず春同然だなんて、魔法でどうにかするには無理だった。魔道具でもそうだが永久には使えないのだ。



 だが考えるだけ無駄だったので思考を止め先生の方を見た。




「ドクゼリ、トリカブト、毒空木がわたしは好きですね〜、あっ!これらは毒で他の植物と似ています。間違っても食べちゃダメですよ!」




 先生の言葉に食べる人がいるのかと思ったが、間違って口にしてしまう場合があった。子供が木の実だと思って食べたりするだけでなく、食用の植物と勘違いして誤食してしまう位にあった。




「あと最近、マンドレイクの花が咲いたんですよ。大変でした〜」



「………マンドレイク?」




 詩音が何故か首を傾げていた。彼女であれば、有名な魔法植物として知っていてもおかしくはないだろう。




「玲夏さん。マンドレイクって?毒草ですか?」



「………あぁ、そっちか。マンドレイクは魔法植物でもあるけど、毒性が強い植物でもあるよ。つまり毒草の一種、魔力も大量に吸って夜な夜な動くらしい」



「そうなんですか」




 よく知られているマンドレイクには毒がある。薬の調合に使われている上に、石化を解除する効果があるらしい。魔力を大量に吸っていた影響か動いたり、引き抜くと悲鳴を上げる魔法植物だ。



 嬉しそうにしている先生を見ると、本当にマンドレイクの育成に成功しているようだ。花をつけるにはそうとうな年月が掛かってしまう植物であると聞いた事がある。



 育つ環境によっては分布する地域の範囲も狭い為に希少価値が高い植物ともされていた。




「そういえばマンドレイクは抜いた事で悲鳴を上げると聞きましたが、あれは本当ですか?」



「嘘、って言いたいところだけど。魔力を吸っているから動くだけじゃなくて悲鳴も上げるよ?」




 云われている噂の中には、乱獲を防ぐために嘘が出回っていたらしい。この世界には魔力があるので、動いて悲鳴も上げる植物に変わっていた。



 すると、また一人の生徒が質問を行なった。




「………えっと、他の趣味はないんですか?」



「ほかに………そうですね、わたしは紫陽花(あじさい)を観賞する事も好きです」




 生徒たちは、先生の言葉に安堵して雰囲気を和ませていた。さすがに毒に関係ない話題になったので良かったと思ったんだろう。




「紫陽花の観賞か〜、うん。いいんじゃないか!」



「ほかに贅沢は言ってられないよな!前にあったニア先生の二の舞にはなりたくないし!」



「あれぇ?紫陽花って確か………」




 最後に声を発した生徒の言葉に雲行きが怪しくなる。とある生徒による疑問の一言でその場にいた生徒全員が顔を向けた。




「えっと、紫陽花って確か毒を持ってたよ? 種類と個体にもよるけど………」



「「「………」」」




 その一人の生徒の言葉に、誰も声を発さなくなってしまった。さらにその上、生徒全員の表情が凍った。確かに紫陽花には毒がある、まさか先生がこれほどのモノ好きとは思わないだろう。



 すると、質問が終わったと判断した先生はある物を取り出した。生徒たちは目を見開き凝視している、私もそれが分からず考えてみるが想像したくなくなった。



 取り出したのは何らかの液体が入ったフラスコだ。コポコポと音を立てて沸騰している。それに加えて青、紫、赤、黄などが混ざった独特な色合い、虹色とも言うべき見た目をしていた。




「………誰か、これ飲んでみませんか?」



「「「ッ⁉︎ 」」」




 先生の一言に絶句してしまう、あれは絶対に飲んではいけない物だと私たち全員は思った。



 もしもあれを飲んでしまえばどうなるのかは、言わないでも分かってしまう。想像しなくても最悪な結果になる事は目に見えていた。




「誰か〜、飲んでみませんか〜?」




 顔を隠すように俯き誰もその声を発さない、分かっているのだ。あの液体の効果や身体にどう影響を及ぼすのか質問すれば、先生はその生徒を標的に定め、必ず飲むように促してくるだろう。



 さすがに死ぬような事にはならないと思っているが………あれ本当に死なないよね?薬品の類いでもあんな色合いは見たことないんだけど!



 私自身も飲みたくはない、なので先生に選ばれないように全力で顔を見ないようにしていた。さすがに痺れを切らしたのか、先生は一人の生徒を名指ししてしまった。




「………それじゃ〜、山下君!」



「………………えっ?小生が?」




 あの謎の液体を飲む事に選ばれたのは山下君だった。先生自身の手によって、生贄が現れた事で私たちは安堵した。正直に選ばれなくて良かったと思っていたのだ。



 彼には悪いが、犠牲になってもらおうと思っていると。山下君もさすがに飲みたくはないのか、こちらを見ては視線で助けてくれと懇願してくる気持ちが伝わってきたが無視した。



 もしかしたら、実際には見た目が悪いだけで飲んでみれば美味しいのではないかと思ってみるが………無理だった。虹色に輝いて綺麗だとしても美味しそうには見えない、さらにそこにマグマ溜まりのような音を響かせているのだ。



 どう考えてみても身体には悪いだろう。




「どうぞ、グイッと!」



「………あ、あの〜これにどのような効果がありますか、教えて下さっても大丈夫でありますか?」



「これ実は飲むと魔力量が上がるんですよ!………………多分」



「多分⁉︎」




 効果が先生の言った通りだとしたら、画期的な発明になったはずだ。この空気でなければ生徒が一人や二人立ち上がり驚いていただろう。



 魔力を上げる方法には幾つかあるが、時間がかかる上に最悪な結果を招けば死に至る。飲むだけで魔力量が増えるのは嬉しい事だが、さすがに山下君でも喜べなかった。



 多分などと最後に聞こえた一言はある意味で余計だった。その時、覚悟を決めたのか山下君はフラスコに口をつけて一気に飲んだ。




「………………うっ、あれ?美味し、い?………」



「………」




 静寂に満ちたその場では、誰も声を発さないどころか山下君はその言葉を最後に黙ってしまった。



 美味しいと言っているにも関わらず様子がおかしかった事が気になったのか、一人の生徒が近づいて確認した。




「………し、死んでる⁉︎」



「「「ッ⁉︎」」」




 すぐに生徒たちは行動に移す、山下君を担架に乗せて保健室に担いで行った。



 その後は回復魔法による治療を行なったみたいだが、それに関係なく山下君は無事に目を覚ましたと聞いた。



 彼が気を失い倒れた原因は、先生が作成した魔法薬による副作用だったみたいだ。



 



「それと魔力量の方も少し上がったみたいですよ!」



「………そ、そうなんだ」















 



 

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