勘違い
翌日、学園に登校し教室にいた私の前に二人の人物がやって来た。もうすでに詩音は、私の隣にいたのでカウントしていない。それじゃあ誰かと言えば、エリスとあと一人………
「………まさか、エリスはともかく委員長まで私の所に来るなんてね、何かあったの?」
目の前にやって来た二人はエリスと委員長である、宝仙滴だった。あまりに意外な珍しい組み合わせだった為に少し驚いてしまった。
エリスの場合は昨日の内に学園を辞めると言い出していたので、考え出した末の結果を私に報告しに来るのは分かっていた。だが委員長が私の所に来るなんて思わなかった。
二人がなぜここに来たのか答えを待っていると、エリスが先に口を開いた。
「………小鳥遊。その、昨日いっていた事なんだが、やっぱりこの学園にいることに決めたんだ。魔法を使いたいんだよ、それがあたしの夢だったから」
「………そっか、それでいいんじゃない?私も学園からエリスが居なくなったら寂しいし、楽しい学園生活が始まったばかりだから」
「あぁ、あたしもだ。第五魔法学園も良いんだが、あっちは魔法に力を入れてないからな!」
昨日、聞いた事だがエリスは魔力量が多い反面、魔法が使えない為に苦労したらしい。魔法が使えなくとも生活するには問題ないが、彼女としては魔法の行使をすることが一つの目標になった。
エリスがこの学園に来たのは、夢を叶える可能性がある場所だから入学したみたいだ。学園を辞めるその際に選ばれたのが第五魔法学園だった。
魔法学園は五つあり、その内の第五は獣人国に居を構えていた。魔法を使えないと言う訳じゃないが、あまり得意じゃない獣人たちだ。
その特徴も相まって対人戦闘、対魔法に特化した学園になっていた。そこでならエリスは人気者になっていただろう。魔法が使えないとしても問題ないし、身体能力はとてつもなく高い。
獣人たちからしてみれば、エリスは憧れの人物そのものだ。森人族で魔法を使えないとしても獣人には関係ない、強さこそが彼らの信条だった。
それに彼女は美少女だ、学園にいる男たちがほっとく訳がなかった。
「それよりもなんで委員長がいるの?」
先程から私は気になっていた。彼女がいる理由が分からない、用があってここに来ている理由があるのだろう。もしかしたら昨日の内に、エリスが委員長と会って話しでもした事は察することが出来た。だがその内容までは分からなかった。
お互いに二人は顔を見合わせて、そして委員長が喋る事にしたのか口を開いた。
「小鳥遊さん。昨日はありがとうございました」
「いや、良いって。昨日も言ってきたでしょ?」
「はい、その通りですが本当に危なかったんです。助かりましたありがとうございます。………それでこれは私と関係ないんですが、一つお願いが」
私はその言葉にますます訳が分からなくなった。私自身、お願いされる立場じゃない事とあと一つ、内容自体が何なのかだ。
「あ〜、その、小鳥遊。昨日お前たちと別れた後にな、滴と会って話したんだ」
「………そうなんです。私自身がエリスさんに誤解させて気に病んでしまったみたいで………」
「その、てっきりあたしは魔法が使えない事を知って脅してきたんだと思ったんだ」
「私はただ、このクラスの委員長として全員を見ていなきゃいけないと思ったんです。私にエリスさんが何か相談をしてくれたらと………魔法について、悩んでた事は私にもありますから」
つまりエリスが思い悩んでいた事は勘違いだった訳だ。その時、今までと違い真剣な表情になった二人は頭を下げてきた。
「小鳥遊!あたしに魔法を教えてくれないか?頼む!」
「小鳥遊さん。私からもお願いします」
「………えっ?」
彼女たちの言葉に私は、ますます訳が分からなくなった。
とある会議室にさまざまな人物たちが集まり席へと座っていた。その者たちの中には、学園の運営を任されている立場の学園長、レイナード・フォン・オーメンが静かに席へと腰掛けているのだった。
その他には、魔法工学を担当するニア先生に魔法演習の天頭先生までもがいる。多くの者たちが声を発さずに席に座って待っていると、突如この会議室に満ちていた静寂を破った人物が現れた。
会議室の扉が開くと同時に出て来たのは、エリー先生だ。全員が視線を向けて、問い質すよりも先に学園長が口を開いた。
「………どうじゃった?何か言っておったか?」
「これはちょっと分かりません。相当酷いと思います」
「ッ⁉︎ まさか⁉︎ 怒っておったか、安心せい。あとは儂等がどうにかする………」
「………いえ、そう言うことではありません。あちらは怒っていませんでしたから………」
学園長は早速聞こうとしたが、返ってきた答えは要領を得なかった。話しの内容は今回の件についてであり、エリー先生は先程まで二人の親に連絡を行なっていた。
その間に会議室に集まった先生たちに今回の詳しい事情を話して、今後の対策等を導き出す為にこの場で話し合いが始まる予定だった。
「二人の親御さんに連絡してきましたが、エリスさんの親御さんは了承してくれました。問題は………」
「「「………」」」
エリー先生が言った事に対して、他の先生方は何も言えなかったが。何かがあったと言う事だけはすぐに分かった。一人で考えているエリー先生の所に、近づく女性がいた。
「………すいません。一体何があったんですか?」
「セイラさん………今回の件で宝仙さんの御実家の方に連絡したんですが。断られ………いえ、違いますね、どうでもいいと言った感じに袖にされてしまいました」
「それは………」
エリー先生に、何があったのか聞いた彼女も同様に考え出した。この学園の生徒である宝仙滴の親がどう思っているかを、大怪我をしそうになった件は別の意味で解決してしまった。
だがそれと同時に、別の問題が浮上してきた事に彼女が考え出した末の答えは一つだった。
学園長の方へと顔を向けると、本人は言われていないにも関わらずに頷いた。了承と受け取ると、彼女はエリー先生に言った。
「エリー先生。宝仙滴さんの件については私がどうにかします。大怪我の事については完了したということで問題ないでしょう………引き続き、エリー先生や他の先生方はあの二人の事を見てあげて下さい」
「「「はい!」」」
その言葉を最後に立ち上がり、会議室を去っていく。残ったのは学園長とセイラの二人だけ、口を閉ざしているのは考え事をしている為だろう。




