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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第2章 魔王襲来
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自主退学



 委員長が僅かな瞬きの間に見た光景は、エリスが戦斧を振り下ろした直後の姿だった。その光景をただ見ている事しか出来ず、微動だにしなかったのだ。



 唯一彼女が出来たことは、必死に目を閉じてその時間が過ぎ去るのを待つ事だけだった。



 だがそのまま振り下ろされた戦斧は、委員長を傷付ける事はもちろん、届く事はなかった。




「………………えっ?」




 いつまで経っても、痛みや衝撃が来ない事に疑問を覚えた彼女は、恐る恐る目を開いて状況を確認した。



 その時彼女の目に映っていたのは、戦斧が今まさに顔に迫る直前に止められていたという事だ。



 そして振り下ろした戦斧を受け止めた人物は………




「た、小鳥遊さん………」




 巨大な戦斧は、彼女の持つ蒼い槍によって受け止められていた。



 戦斧を振り下ろした人物であるエリスは、目を見開き驚愕した表情だった。誰でもいきなり割って入られたら驚いてしまうだろう。



 その後、自分自身が行なってしまったことが徐々に分かってきたのか。もう少しのところで委員長を傷付け、大怪我をさせてしまうとあらためて理解したようだ。



 エリスはそのまま持っていた戦斧を落とした。その途端に鈍く重い音が辺りに響いて、反応していない全員の意識を覚ます結果となった。




「………だ、大丈夫ですか⁉︎ どこか怪我は⁉︎」



「………それよりもエリスさんが!」




 すぐ近くにいたエリー先生が、委員長の元にすぐさま駆けつけて無事かどうかを聞いているが。それに対し、委員長は自分のことを後回しにエリスのもとに駆けつけようとするが止められた。



 何故か委員長が、自分の事を後回しに彼女の元へ行こうとしたのは………



 現在のエリスは、誰が観ても衝撃を受ける程に酷い状態だった。両手で頭を抱えて(うずくま)っている、さらにその表情はどんよりと暗く、絶望しているといった雰囲気を醸し出していた。



 エリスを心配した委員長だが、既に二人の先生が彼女の元に駆けつけ様子を見ていたのだ。事態を早く抑える為にエリー先生は言った。

 



「今日の授業は終了します」
















「………大丈夫ですかね?エリスさん」



「………………」




 詩音がポツリと呟いた言葉に、私は(こた)えられなかった。何もせずにジッとしていた私は、考え事をしていた為に何も反応出来なかったのだ。



 職員室に続く廊下で、私たちはとある人物を待っている。待つ事、約数分ほどで現れたのはエリスだった。



 私たちはエリスに近づくと、気付いた彼女は顔を上げた。




「………帰らなかったのか?お前ら………」



「大丈夫ですか?エリスさん」



「おう、心配してくれてありがとな!」



「………ちょっと良い、エリス」




 少し訝しむ彼女だったが、私たちに何も聞かずについて来てくれた。その場から移動した私たちは、学園にある中庭へとやって来た。



 設置されたベンチに腰掛け座っていると、自販機で飲み物を買いに行っていた詩音が戻って来た。




「どうぞ玲夏さん。………エリスさんも!」



「ありがとう、詩音」



「………あぁ、すまん」




 缶に入った飲み物を、詩音から受け取った私は早速とばかりにフタを開けて口をつけた。エリスは俯いたままで缶を両手で持っている、飲む気分ではないのだろう。



 そして黙ったまま、どのように切りだそうか迷っていると、エリスは唐突に話し出した。




「あたし、学園辞めようと思ってるんだが………」



「「………えっ?」」




 唐突に話し出したと思ったら、とんでもない事を言い出した。エリスが学園を辞める理由はない、なにせ今回の件で彼女に落度はなかった。




「どうゆう事ですか⁉︎ エリスさんが辞める理由は無いはずです。………まさか学園長や先生たちが?」



「いや、あたしがそうしようと思ってるんだ。先生たちは関係ない………」




 委員長は保健室に、エリスは職員室へと連れて行かれたが。委員長は怪我をしている可能性があった為、エリスの場合は不安定だった為だ。




「………それに先生たちは優しかったよ。手持ちの菓子をくれたし、話し相手にもなってくれた。………それよりエリー先生が辞めさせられるかもしれない」




 エリスが職員室に連れて行かれたのは、酷い状態だったからだろう。その状態で一人にする事は出来ないと判断したニア先生と天頭先生は、職員室へと連れて行った。



 目を離したら何をするか分からなかった。だからこそ、他の先生方がいる場所が最適だった。


 それよりも、彼女が言った通り今回の件で問題があった人物というよりは、問題にされそうな人がいた。



 その人物というのは………エリー先生だ。



 模擬戦を行なう前に、しっかりとエリスと委員長の二人に確認を行なっていた。それ自体に何ら問題はない、あるとすればそれ以外の人物だった。



 つまり、大怪我をしそうだった委員長である。宝仙滴の両親が、殴り込みに来てもおかしくなかった。



 魔法学園は、生徒たちに魔法を教えると同時に魔物の対処方法や対人戦闘などを、教える為の場でもあった。



 だからこそ演習場には、刃が潰されていたとはいえ戦斧などの武器がある。生徒たちが危険な武器に慣れるように、そして魔物などの相手にその武器をどのように使うかを教える為でもあった。



 生徒たちの多くは怪我をするかもしれないと、ある程度は承知していた。なにせ、親が魔物に殺された者たちも数多くこの世界にいたからだ。それを知らない生徒はいないし、親も自分の子がこの学園に入った事で覚悟はしているはずだ。



 それでも何かあれば、親が怒鳴り込んできてしまう事があった。エリー先生が辞めさせられるのは、まだ決まった事じゃない最悪の想定のはずだ。

 



「エリス………エリー先生の事は大丈夫。おじいちゃ、学園長がその事を解決してくれるはず。魔法が切れたことが早くわかっていたら、回避出来たはずだし委員長は怪我をしていないから………」



「あぁ、小鳥遊。ありがとな励ましてくれて、けど………学園を辞める理由は別にあるんだ」

 



 エリスが言った事とは別に、学園を辞める理由は委員長を大怪我させてしまうかもしれなかった事を含めてだろう。だが、私が思った辞める理由はもう一つあった。




「魔法が使えない」



「ッ⁉︎ 」




 エリスは驚きの表情で私を見ていた。彼女からしてみれば、隠していた秘密を暴かれた様なものだ。図星だと言わんばかりの表情だが、理由としては弱かった。



 授業が始まる前に、委員長から何か言われた事がボーっとしていた原因だと私は思っていた。魔法を使えないと言う事であれば、彼女がそのように考えて導き出したと納得出来る。委員長も同様に魔力が多いからだ。



 魔力量がとてつもない程あるとしても、ただ単純に魔法が使えないという事は無かった。



 魔道具の耐久や制御さえ出来れば問題ない、私が行なっていた、魔力の制御をしていれば魔道具が壊れる事は無かった。それに魔力に耐えられる魔道具を使えば、ほぼ自由に魔法が使えた。




「………魔法が使えない?………えっと、どうゆう事ですか玲夏さん?」



「魔力量が多いから………と、言いたいところだけどエリス。違うんでしょ?」



「あたしは昔から魔道具を使えば壊れるんだ。耐久の問題じゃない、それに理由は分かってない………というより、小鳥遊はどうして魔力量が多いと知っているんだ。話したか?」



「………魔眼」



「なるほどそれでか、よく分かった」




 聞かれてしまった事に私は一言だけ答えた。バレてしまっても問題なかったし、私の周りから離れる事は当たり前だったが、二人は納得しているだけだった。



 その後私たちは色々な事を話し合った。

 


 

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