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転生少女は愛されている  作者: 海雪
第2章 魔王襲来
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戦斧



 開始の合図と同時に動き出した二人、エリスは戦斧の重さを感じさせない動きで、接近戦に持ち込もうとするがそうはならなかった。




「身体強化、五感強化、各種耐性」




 委員長は自身に付与魔法をかけていく、肉体、五感、あらゆる耐性に関する魔法を重ね掛けしていった。



 その際の効果として、彼女の身体を淡い光が包み込んでいる。魔法が発動し、効果が現れた証拠が先程の光であった。



 付与魔法は、重ね掛けが出来る数少ない魔法だ。複数の魔法効果をその身に宿す事が出来ると言われており、任意の対象にも、自由に掛ける事が出来る使い勝手の良い魔法であった。



 だが、長時間に渡る使用は出来ないとされていた。重ね掛けした分の魔力を消費してしまう為に、よくて二つ程しか魔法を重ね掛けしない事が多かった。



 それでも委員長が付与魔法の重ね掛けをしたのは、魔力量に相当な自信があるからだろう。そうでなければ、後先考えずに模擬戦を行なっているということだ。




「はあぁぁぁ!」




 戦斧を構えたエリスは、委員長に接近したところで振り下ろしたが………




「っ⁉︎ 」



「………」




 委員長は戦斧を躱していたのだ。何事もなく半身の状態で戦斧のすぐ側に立っている。



 その事に気付いたエリスは、すぐさま追撃を加えていくがことごとく躱されていった。



 委員長も、最小限の動きでエリスの攻撃を見切っていた。相手のことをしっかりと見ては、次の攻撃を予測して彼女なりに対処していってる。



 生半可な戦闘になりがちな模擬戦、滅多に見る事が出来ない攻防に生徒たちは目を釘付けにされていた。




「すごいですねエリスさんに委員長は、一年生としてのレベルで言うなら、最高位に到達していますよ!」




 詩音の言う通りだ。エリスの細腕では、巨大な戦斧を自由自在に操るようには見えないであろう。縦、横、斜めなど臨機応変に攻撃を仕掛けている彼女に魅入ってしまった。



 そして委員長の方も相当な胆力だ。紙一重の差で躱しては距離をうまく調整している、時折魔法を発動しては攻撃を仕掛けていたのだ。




「チッ!………ちょこまかと」



「………ハァ………ハァ………ふぅ」




 エリスは舌打ちをして苛立ち混じりに顔を歪めた。



 体力が乏しい委員長は、息を吐き出して呼吸を繰り返していた。



 両者にはそれぞれ疲労が出てきたせいか、現在は膠着こうちゃく状態となっている。



 二人の動きが止まった事で、周りで観戦している生徒たちは黙り込んで成り行きを見守っている。




岩連弾(ロックバレット)



「フッ!」




 突如、委員長が魔法を発動し無数の拳大の岩が生成されては、エリスに対して向かっていく。が………彼女は一振りで全てを薙ぎ払った。



 これは一年生同士の模擬戦ではなかった。ニ、三年生の間で行われる、本格的な対人戦とも言えた。



 実際に周りの生徒たちはともかく、先生方の目は違った。もしも何かがあれば、すぐに割って入る事が出来るように、自身が所有する魔道具にそっと手をかけている。



 それだけ二人が行なっていたのは、高度な対人戦闘と言えた。




「二人がここまで出来るとは思いませんでしたよ」



「私もだよ、遠距離支援タイプの委員長が圧倒的に不利だと思っていたから」



「ですね、エリスさんも相当な身体能力でしたよ。戦斧を軽々と持った時は驚きました!」




 私と同様に身体能力が高いエリス、筋力が常人レベルを軽く超えているのはまだ分かる方だ。



 だが身体能力が一番高いのは獣人という種族だ。対抗するだけならば魔法を使えば簡単に対処出来てしまう。



 森人族エルフの場合は、筋力が低いとされているが。エリスは違った、彼女は戦斧を軽々と持っている上に、それだけで素の身体能力が高いとよく分かった。



 そして委員長もぶっ飛んでいた。相手の動きを見切った上での最小限の動きで躱す様にするのは相当に難しいとされていた。



 いくら魔法を使っていたとしても、エリスの攻撃を躱し対処するには常人レベルであればとっくに倒されているはずだ。



 剣を何気なく振る速度で、それも戦斧という一振りが一撃同然の破壊力を持って迫って来る。魔法による各種耐性によって斬撃、殴打に対抗出来ても当たったら相当に痛い事は想像に難くなかった。

 



「たしか委員長の持つ魔導書って、扱いが難しいのでは?私はそのように聞いたんですけど?」



「間違ってはないよ、実際に魔導書は数が少ないから。そう簡単に入手出来る訳じゃないし、扱う為には内容も記憶してないと使えない」




 詩音の疑問に私はそう答えた。魔導書を持っているのは珍しい、大金を払えば手に入れられない事もないがこれはそういった事ではなかった。



 魔導書は、魔法を記録するための媒体にもなり得る魔道具であった。様々な魔法が本に記録されており、魔法自体を覚えていなくても問題なく、練習をする必要もない上で魔法が使える魔道具だ。



 しかも人が数十種以上の魔法を覚えても、魔導書は百以上の魔法を覚えてなくとも使える魔道具でもあった。なにせ魔法を記録してあるのだ、使えない訳がなかった。



 だが魔導書は扱いが難しい、魔法を行使するにはいくつかの条件が必要だった。



 一つ目は言わずもがな魔力だ。どの魔道具にもそれは必要であり、魔導書も例外ではなかった。



 もう一つは魔法が記載されたページを開く事。簡単な動作に見えるが、百以上のページがある魔導書を戦闘しながら開くには厳しかった。



 委員長はエリスの動きを見つつ迎撃用の魔法を発動していく。魔導書は身体の一部だと言わんばかりに使いこなしていた。



 一枚一枚の内容を覚えて、記憶して無ければ出来ない事だった。そう言った意味であれば彼女も相当な規格外だ。



 魔導書の作成には筆者師と呼ばれる、技術と知識を持った人しか作成は出来ない。珍しい素材と組み合わせる事で作成する品であるが、大抵は失敗に終わっていた。



 筆者師が生涯を掛けても、作成出来た魔導書は数が少なく、素材と時間を捨ててようやく出来たのが魔導書だった。



 世界中に存在する魔導書は、ほとんど魔法省が管理している。魔導書を開いて見ただけで呪われる物もなかにはあった為だ。



 委員長が持つ魔導書はその中でも比較的に安全な物だった。



 委員長は魔導書を開いて魔法を発動していく、それに対しエリスは戦斧を用いて打ち落としていた。



 だがそんな時に問題が起こった。




「痛っ⁉︎」





 ドサッと音を立て前のめりに倒れ込む委員長、魔法が切れた事によって身体の制御が出来なくなったのだろう。



 魔導書を倒れた際に、衝撃で投げ飛ばしてしまった。それだけであればまだ良かった。




「………魔法が………しまっ⁉︎」




 委員長が気付いたその時、ちょうど戦斧を振り下ろそうとしたエリスがいた。



 そして止まる事がないまま彼女に………



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