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MIB 1st contact  作者: 光輝
■第2話 西の魔女編 (4P)
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4.コットンキャンディ・ユニコーン

「ウギャーッ!!」

エレナの素っ頓狂な悲鳴に、ゴハンは大慌てでトイレから飛び出した。

リビングでは、耳まで真っ赤にしたエレナが、両手を顔にへたりこんでいた。そばでバスタオルを腰に巻いただけのパンが、お手上げに両手を広げてみせる。どうやら風呂上りのパンとかちあったようだ。

「着替えを取りに出ただけだ」とパン。

ゴハンは呆れに顎で物をいった。いいからとっとと風呂場に戻れと。


「エレナちゃん……エッレナちゃ~ん」

ゴハンの声に、エレナは恐々顔をあげた。もう半裸のパンは脱衣場に戻ったようだ。しゃがんだゴハンが覗き込むように、エレナと目線を合わせる。

「ごめんごめん! パンの奴、あまり気がまわらなくてさあ。俺チャンがビシッ! と言ってきかせたから安心して」

そう明るくウィンクし、ゴハンがエレナの頭を撫でる。


エレナがちょっとうめいて鼻をすすった。すすって、涙目に首を振った。物音に振り返ったら、半裸のパンがいたのだ。初めて男性の裸をみたエレナは、脳みそが爆発したかと思った。湧き上がるように思い出し、いっそう顔が熱くなる。

「……び、びびびっくりした……びっくりした……ッ」


なんとも純情なエレナにゴハンが苦笑ひとつ。

「お。恥ずかしがってる~! 俺も脱いじゃおっかな? 腹踊り見せちゃうぜ」

場を和ませるようおどけてみせるも、エレナは赤い顔でじろりと睨み返す。

「……ゴハン、そんなことしたらお尻けっとばして、外にほっぽり出すわよ」

「温度差ー! えっそこはパンみたいにドキドキしちゃってよ~! 俺チャンさみしいッ!」


ちょうどその時だった。エレナの携帯が着信に揺れる。耳を当てたエレナの顔に花が咲いた。

「ミシェル! ……うん、大丈夫よ。……でへへ、バレたか。うん、サボッちゃった。……うん、ゆっくりできたわ」

にこやかに頷いたエレナはまばたきひとつ。「えっ下に? すぐ行く! 待っててね」

言うなり通話をきって、大慌てで玄関で靴を履き始める。

「なになに? どったの?」とゴハン。

エレナは靴を履きもって、肩越しに言った。

「親友! 今ロビーにいるんだって、家に来たらバレちゃうから、ロビーで会ってくるっ」

玄関を飛び出したエレナはものの5秒で戻ってきた。

「ラエティーシャさんからもらったアロマや苗を分けてあげよっと!」

言い終わる前に紙袋をつかんで、また出て行った。


エレナの小さな足音遠く、ゴハンがぽつりとつぶやいた。

「普通の女の子じゃん。どうしてイルミナの一人娘が、豪邸とはいえこんな一般居住区に住んでるんだか……」

その声を合図に、パンが脱衣場から出た。乙に済まし、咳払いひとつ。

「世間的には、エレナはイルミナの親戚筋という事になっているようだ。どうも臭うな」


ゴハンは余裕な笑みを返した。

「でも、いい子じゃん?」軽く言って、棚のユニコーンのぬいぐるみを手に取る。

「見ろよこれ~。今はやりのコットンキャンディ・ユニコーンのヌイグルミだぜ。甘い匂いがするやつ」

ゴハンはコットンキャンディ・ユニコーンを振ってみせた。小さな鈴の音に合わせ、甘い砂糖菓子の匂いがプンプンと自己主張する。

パンがふと指をさした。

「そのヌイグルミ、裏側が写真立てになって……ん?」

「へ?裏側?」

ゴハンが目を凝らすパンにまばたきひとつ。手元のコットンキャンディ・ユニコーンを見る。その瞬間、ゴハンとパンは同時に声をあげた。

「そいつは……!」「おいおいマジで?なんでこいつが映ってんの!」

息をのむような間があった。見合って、ゴハンが噛み合わせの悪い顔をする。

「……どうも臭うに完全同意。ホンット、ヤな予感」

パンは真顔で大きく頷いた。

「ああ。お前の言う通り、裏があるようだな。……裏側だけに」

うまいこと言ったつもりのパンに、ゴハンがちょっとだけ笑いをもらす。

「突発的な寒いギャグやめてくんない?」

……・……

ほんの10分ほどだろうか。親友ミシェルの手料理をさげたエレナがご機嫌に戻ってきた。

「休んだから親友が来てくれたの。もしかして寝坊したでしょ、だって! バレちゃった」

言いもって、はたとした。

ゴハンとパンが、コットンキャンディ・ユニコーンを手に取り合っていたのだ。なんともいえない表情で。

「……何? そのぬいぐるみが欲しいの?」とやや怪訝にエレナ。


パンがゴハンの足を踏む。ゴハンが我に返ったかのように、頭をかいた。歯切れ悪い様子まま、エレナの紙袋に指をさす。

「ぁー……もしかしてそれ、アップルパイ?」

それにエレナが目を丸くした。「どうしてわかったの?」

とっさにパンがゴハンを肘で小突き、「リンゴとシナモンの香りがするからな」


エレナはさっきの赤面パニックはどこへやら、鼻歌まじりのご機嫌で紙袋をキッチンに置いた。

「でしょ? おいしいのよー、ミシェル特製アップルパイ。皆で食べましょ」

黄金色のリンゴが輝くアップルパイは、まるで金縁の琥珀のように美しい。エレナはアップルパイを切り分けつつ、隣で紅茶を淹れるパンをちらと見上げた。端正な横顔の綺麗なラインに思わず目が奪われる。

パンがふと視線に気付き、ティーポットにティーコジーをかぶせつつ呟いた。

「……さっきはすまなかった」


エレナは驚いたように首を横に振った。一瞬とはいえ、パンのしなやかで逞しい筋肉が目に焼き付いていた。こんなハンサムな人の体を見てしまったんだと、改めて赤くなる。

「私こそ、いきなり脱衣場を開けてごめんね」

見合って、ちょっと笑いあう。エレナはどきどきが止まらなかった。

  ★

「いつもあんな仕事を?」

穏やかなティータイムはMIBへの質問タイムとなっていた。陽気に答えるゴハンと、時折つっこみを入れるパンと笑い合う。こんなに賑やかな夜は初めてだった。

「ねえ、もっと色んな話を教えて!」


目を輝かせるエレナにMIBが笑みを返す。楽しい時間は、あっというまに過ぎていったのだった。

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