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MIB 1st contact  作者: 光輝
■第9話 真犯人編 (4P)
36/42

1.サカなんたら

しめやかな雨音が朝を告げ、レースのカーテンがそよ風に揺れる。

やわらかい朝日に、黒金は溶けるように目を覚ました。


見知らぬ天井遠く、シーリングファンがゆったりと回っている。黒金はぼんやりファンを見ていた。どうも地獄ではなさそうだ、と。


「おはよーさん」

ひょこっと顔を覗かせたのはゴハンだった。黒金は眉をひそめ、上半身を起こす。

ベッドのように心地いソファに、いかにも上級階級でございのだだっ広いリビング。黒金はあれからすっかり寝落ちしていたことを悟った。


ドヤ顔のゴハンが、両手を後頭部に足を組む。

「オヤスミの間、ちょっと調べさせてもらったよん。フリーランスの殺し屋、黒金くん。元神父なんだって? なんで殺し屋なんてやってんの」


黒金はテーブルにあった自分のグラサンをはめ、あくびをひとつ噛み殺す。

「……オレは神を信じぬ者を、愛をもって導くだけだ」


それにゴハンがおどけて大げさに肩をすくめてみせた。

「へー! 神さんとやらに会ったことないけどさ、今度ラーメン食おうぜって言っといてよ」


黒金はそんなゴハンを流すようにあたりを見る。

「それよりも京はどこだ、慰謝料を請求してやる」

「きょー? 誰」

きょとんとするゴハンに、黒金は怪訝にまばたき一つ。


見合う2人の沈黙を割るは、寝室のドアを開けたエレナだった。エレナはトンカチや麺棒など詰まった鞄を降ろして、ふと黒金を見る。

「あっおはよー! 黒金くん、体調はもう大丈夫?」


黒金は、エレナを完全に無視した。怪訝に眉をひそめ、ゴハンに軽く手を広げてみせる。

「誰って……陰陽師のガキだ。オレと一緒に潜ってたろうが」と。

ゴハンはバカでも見るように、やや呆れて首を振った。「ま~だ寝ぼけてんの? そんな奴いないよ、お前だけだったろ」


白昼夢から覚めたような感覚に、黒金は気付いた。

どこからともなく内に入り、さも仲間のようにふるまう京の術が解けたのだと。


エレナは黒金の朝食をテーブルに置いて、呆れに声をかけた。

「やだゴハンったら、何言ってるの? いたじゃん、今回の件も幽霊屋敷のお礼だもん。……ほら、……ええと、名前ド忘れしちゃった」


「さかい京」と黒金。エレナは手のひらに拳を落とした。

「ああ、それ! 境きょう! ド忘れしてた、どうして忘れてたんだろ?」

その様子に今度はゴハンが驚いた。食いつくように屈んで、大きく首をかしげる。

「えっほんとにいた? 2人して担いでない?」


エレナはまるで夢を思い出すかのように記憶を巡らせた。しかし考えれば考えるほど、油を塗った鉄棒を掴むがごとく記憶が飛んでいくようだった。

考えもってスマホを開く。確か画像フォルダに〔さかいきょう〕がたまたま写った画像があったはずだと。

しかし、思い当たる画像はなかった。数少ない写真の中、〔サカイキョー〕はどこにも写っていなかった。

「……いや、そもそも、サカなんたらって、一体なんだっけ?」とエレナ。

ゴハンも黒金も首を傾げた。


エレナも首を傾げつつ、パンが作った朝食を一口。

黒金は食後のコーヒーを傾けつつ、ふとエレナの頭の先からつま先まで見た。ご機嫌なエレナは太ももあらわで、体のラインがよく出る寝巻姿だ。

「……君はいつもそんな恰好してんのか?」


エレナははたとして、軽く両腕を上げて笑んで見せた。

「うん。可愛いでしょー、コットンキャンディユニコーンの新作ルームウェア! 歌姫アンヴェガと同じ色なの」


黒金は全く興味なさげに、ついと顔をそらす。

「婦女子がみだりに肌を露出すんな」

エレナは内心、なにがみだりかわからなかった。コットンキャンディユニコーンはTVや学園でも流行ってるからだ。釈然とはしなかったが、素直に従うことにした。

「えー……わかった、着替えてくる」


エレナが自室に消えたとたん、ゴハンがヤンキーのように黒金に絡む。

「おいおい元神父さーん! 何してくれちゃってんの~? 俺たちの日々の癒しを奪わないでくれる?」

黒金はドス低い声で「天に召されたいか、ド変態め」とだけ告げて、コーヒーを飲み干したのだった。


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