episode:82
夜になり、父様とライド兄様、そして引き籠ってると思っていた、レイク兄様が一緒に帰って来た。
「ルイフおめでとう。本当は様付けがいるんだろうな。家にいる間だけは弟として接しさせてくれ」
「おめでとうルイフ。久しぶりだね」
「ライド兄様、僕も兄として接して頂ける方が嬉しいです。レイク兄様お久しぶりです。外に出られているの珍しいですね」
「レイクには、内政面で手伝って貰うことにしたんだよ」
「よく、レイク兄様が良いと言いましたね」
「ルイフ、それには理由があってな、レイクのやつ学園で仲良くなった子が出来たらしいが、その子が言ったらしいんだ。ちゃんと働いて安定している人と将来は居たいと。それで相談して来たからレイクは、頭がいいから父様に頼んで領地経営を学びつつ内政面を手伝って貰うことにしたんだよ」
「レイク兄様にもついに春が…」
「僕も…ちょっと頑張ってみようと思ってね。でも引き籠ってた頃よりも充実しているよ」
レイク兄様は良い方向に進んだようだ。
好きな子がどんな子か気になるが、あまり詮索するのも良くないだろう。
「ルイフ、すまないが、お祝いは町の広場でいいか?ネッパとパナップのやつがみんなに話したらしくてな、既に宴会準備が済んで皆集まってるようなんだ」
「それだけじゃない。父様が伯爵になったと喜んで言いふらしたせいで収穫祭なみの盛り上がりになってるぞ」
まじか…ネッパとパナップについては僕の責任もあるが…
収穫祭並みになっているとは。
「みんな、そう言う事なんだけどいいかな?」
「楽しそう」
「構わないわ」
「早く行こーよ。楽しみだね」
みんな乗り気で良かった。
いきなり旦那になる人の実家に来て、町総出でお祝いが開催されたら僕なら躊躇すると思う…
町の中央にある広場に着くと既にお祭りムードで沢山の人で賑わっていた。僕達が着くと道が開けられ中央の壇上に上げられてしまった。
みんなの視線が僕達に集中する。
「えっと…みんな久しぶりです。ここにいるのが僕の婚約者達です」
ルイフ様おめでとうー
美人な嫁貰いやがって羨ましいなー
色々な声が聞こえてくる。
何を話したらいいんだろう…突然なのと見知った町の人の前で婚約や伯爵位を貰った事を話すのは照れくさい。
「後もう一つ…報告がありまして、伯爵位を国王様から承ったので、これからはルイフ・シャルムと名乗ります。これからもよろしくお願いします」
おおおおおおおお
おめでとうー
マルコ様を軽く追い抜いてったな。
いい領主にルイフ様ならなれる。
嬉しい歓声が続く。
「今日は沢山料理を王都から持って来たので、みんなで食べましょう」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
今までで一番の歓声が聞こえた。
やっぱり食なのか…食が一番なのか。
まあ、ここでの暮らしをしてたら仕方ないよね。
僕は屋敷のダイニングに父様や母様達が出た後に大量の料理を置いて来ている。
今頃トマとミラ、アカ、アオがこっちに運んできているだろう。
「凄い人気者だね。ルイフ君」
「小さな町だからね。僕が凄く小さい頃からみんな知ってるから」
「私は、王女だから…本当に心から思ってくれる人はほとんどいなかった」
「わかるわ。私も皇女だったから…みんな私を利用しようとする者ばかりで誰が本当かわからなかったわ」
「私は…聖堂の奥に閉じ込められていたから…」
「ほらほら、みんな暗い話は無しで。楽しもう」
各自美味しいご飯を食べに行ったようだ。
町の人は、レイの事を王女とは知らないし、セイラの事を皇女とも知らない。
二人共ただ楽しそうに、町の人と話しながら食事を楽しんでいる。
僕の街…こんな身近な家族みたいな存在で居られるかわからないけど。父様の作ったこの町のように、みんなが思いやれる街を作りたい。街の規模はかなり違う、僕が知らない人も多くなると思う。
それでも父様のようにみんなが心から笑っていられる街を作ろう…
父様の背中が改めて大きく感じた瞬間だった。
「ルイフ」
父様が突然話しかけてきた。
「父様、どうしました?」
「俺はな、経済なんてよくわからないし、そんな良い暮らしをみんなにさせてあげることは出来ていないと思う。だけど、お前も領主になるなら民の気持ちを考えられる領主になって欲しいと思ってる。参考になるような事を俺は言えないし、お前なら俺よりきっと良い街を作るんだろうな、と思う。頑張れよ」
「父様…そんな事ないです。こんなに温かい町は他にありません。領主と言う立場になって改めて父様の凄さが身にしみました」
「そう言って貰えると嬉しいよ。お前は伯爵になる。俺は父だが、外に出ればお前は伯爵、俺は男爵だ。地位が上のお前が俺に遠慮するのはおかしい事になる。わかるな?」
「はい、父様わかっております」
父様…なんて外では言えない。
マルコ殿とか、マルコ男爵とか…言えば良いのかな。
こんな大きな背中を前にして呼べるか不安だ。
でも、そんな僕の事をわかっていてわざわざ言ってくれた父様に感謝だ。
その後父様に、開拓の話をした。
「父様、開拓が進んでいないように見えるのですが、僕が少し開拓をしても良いでしょうか?外壁も木では何かあった時不安なので、石の壁を作ろうと思っています」
「開拓するのは人手もいる、それに森には魔物もいる。中々進まないのは今の暮らしでいいと思う者も多いから…だな。自分の領地をこれから発展させなければいけないのだろ?俺達の事は気にするな」
「いえ、父様達…そして町のみんなに恩返しがしたいのです。もっと沢山食べ、そして、安全に暮らして欲しいと思っています。ポンプも既にパモスさんに頼んで増産して貰っています。少しずつ住みやすい町になっていくでしょう。そしたら必ずこの町では手狭になってしまいます」
「そうだな…助かるよ。頼めるか?だが…そんな時間がかかる事している余裕があるのかお前に」
「大丈夫です。今日中に終わらせるので」
「ふむ…なぜだろうか。ルイフ、お前が言うとなんでも本当に出来そうな気がするから不思議だ。何も聞かない、感謝する」
僕が産まれる前から進んでいない開拓。
それを一晩ですると言うのだ、普通ならおかしいと思う。
でも父様は、それを信じ、何も追求しないでくれた。
これが親の愛情なのだろうか?
前世で感じた事のない思いが僕の心臓を収縮させる。
涙をグッと堪えるが、少しずつ溢れてくる。
僕は父様と分かれ一人先に屋敷へと戻る。
僕は自分の部屋に戻ると、堪えるのを辞めた。
不安も沢山あった。前世の記憶を持ったまま転生し、新しい家族が出来た。
前世では親の愛情を理解する前に両親は亡くなった。
ずっと一人だった。
新しい家族は優しく僕を迎え入れてくれた。
記憶のせいで少し周りとは違った子供だったと思う。
でも何も言わずに愛してくれた。
父様の言葉で、今まで抑えてきた感情が溢れ出したのだ。
僕は…サイレントの魔法をかけ、大声で泣いた。
少しして気持ちが落ち着き、何かが吹っ切れたのかとても気持ちが軽くなった。周りとの違い、親への秘密。僕は結構気にしていたんだな…。今まで気付かなかった。
部屋の外に出ると、嫁達が待っていた。
「どうしたの?みんな」
「ルイフが、泣きそうな顔してた…」
「ルイフ君、辛そうだったから」
「気になってみんなで見にきたの」
「ルイフ様が出てきたら迎えてあげようと思って待ってたの」
「ありがとう、みんな」
宴会はまだまだ続く。
大人達は収穫祭同様朝まで飲むようだ。
食事は好評で沢山持って行ったが、流石にみんなで分けると多くはない。取り合いになっていたらしい。
明日からはまた、王都と街の往復だ。
頑張ろう。いつか家族に隠す必要がなくなるまで…




