97話 メシアの武器は?
雑貨屋の次は服屋に行き、私は悩みに悩んでパジャマとルームウェアをペアで購入した。 お金は二年前のものが残っていたから、なんとかなった。
パジャマは肌触りがよく、寝心地も最高だと言われているらしい。
触れてみると、確かにやわらかい。いつまでも触っていたくなる生地だ。
絹をふんだんに使い、疲労回復の魔術まで付与されているという。
女性用はワンピース型で、柄はお揃い。
ルームウェアは黒。
これなら寮内を歩き回ったとしても、多分暖かい目で見守られるだけだろう。
恥ずかしいけれど、
ルシアちゃんは日用品同様に買い込んだ結果、両手いっぱいの荷物になっていた。
どこか満足そうな笑みを浮かべている。
私より服のセンスがよく、どれも大人っぽい。
今度コーディネートしてもらおう。
「……あの、私。武器屋に行きたいです」
撫子さんは、はっきりと言った。
戦うメシアになるのだから、武器は必要だ。
「了解。だったらウォーカー家御用達のお店に行きましょう? 代金は国費だから、好きなものを選びなさい」
事情を知るマミア様は反対することなく、そう言って進む方向を変えた。
メシアに関わるものは、すべて国費。
――なるほど、そういうことか。
「……これもなんか違う」
眉間にしわを寄せながら呟き、試着したメリケンサックを外す。
すっかり戦士の顔になっていた。
初めて入った武器屋は、想像と違って高級宝石店のような雰囲気だった。
私たちは応接室に通され、撫子さんの要望どおりメリケンサックが多数用意される。すべて一級品だという。
それでも撫子さんは、どれもしっくり来ないらしい。
「撫子ちゃん、やっぱりオーダーメイドにする?」
「はい。その方がベストだと思います」
「ですが、オーダーメイドは一ヶ月ほどかかるんですよね? ……そんなに待てない……」
困り果てる店員さんに、マミア様が助け舟を出す。
しかし撫子さんは首を横に振り、拒否した。
その切実さに、誰もが息を呑む。
「そうだったわね。なら店長に伝説シリーズを用意するよう伝えなさい」
「か、かしこまりました! 少々お待ちください!!」
空気が変わる。
マミア様の一言で、店員さんは血相を変えて応接室を飛び出していった。
「え、いくらなんでもそこまでは……」
さすがの撫子さんも目を見開き、動揺する。
伝説シリーズ。
名前は少し気になるけれど、おそらく最強クラスの武器なんだろう。
そんなものが店にあるなんて驚きだ。
――是非、見てみたい。
他人事だからこそ、そう思える。
…………。
キュアちゃんは、魔族の秘宝。
私、伝説よりすごいのを持っていました。
……はっ?
「穂香、どうしたの?」
はっとして立ち上がると、隣のルシアちゃんが首をかしげる。
「私、先に帰ります。キュアちゃんが迎えに来ちゃう」
三キロ以上離れると探しに来るんだった。
町中で魔法少女ステッキが歩いていたら、さすがに騒ぎになる。
「それなら大丈夫よ。なんでもある時を境に、穂香ちゃんを恋しがったそうよ。だからリチャードがここまで連れてくると言っていたわ」
「……キュアちゃん」
さらっと言うけれど、たぶんひと悶着あったんだろう。
みんなに申し訳ないのと同時に、キュアちゃんにも悪いことをしたと思う。
今回は何も考えずにお留守番させた私に非がある。
「武器なんだから、伸縮魔術を使ったら?」
「そんなの出来るの?」
「そりゃぁ、出来るでしょ」
当然のように呟くルシアちゃんに、思わず聞き返すとあっさり返された。
確かにキュアちゃんは武器だ。
試してみる価値はありそう。
「え、誰?」
今度は撫子さんが立ち上がり、きょろきょろと辺りを見回す。
「撫子ちゃん、どうしたの?」
「誰かに呼ばれている気がするんです……来る」
曖昧な言い方だったが、それだけは確信しているようだった。
その直後、足音もなく扉が開く。
現れたのは――




