第98話 閑話 冒険者等級の気になるところ。
まだ旅の途中のお話。
「うーん……?」
ペンギン、何とかがんばって腕組み中。そして考え中。
それはロザリーさんの冒険者であるプレートを目の前にして。
そこには白銀の▼。
「黄金、白銀……んで、黒鉄……」
気になるのですなー。
「どうしたジュネ?」
私が唸っていたらロザリーさんに気にされてしまった。そりゃ自分の持物に唸られていたら気になるよね。
ここはちょっと大きな街の、その一角にある冒険者ギルドおすすめの宿屋。冒険者ギルド提携だから冒険者には割引あるらしい。そういうの大事でありがたいよね。
なので久しぶりに屋根でベッドでお風呂付きの夜です!
獣王国を目指しながらの旅の途中な私たち。
正しくは獣王国にいるという竜人さんに会いたい迷子ドラゴンな私を、白銀冒険者のロザリーさんが拾って保護して連れて行ってくれているところ。
ありがたやー。
もう、ロザリーさんを毎日拝んじゃうね。
そしてそのロザリーさんなのだが、「白銀」というなかなかすごいランクな冒険者であられるのだ。
この大陸の冒険者の等級は。
黄金。
白銀。
黒鉄。
青銅。
と、あるのだと前にロザリーさんに教えてもらっていた。
その下に「色無」というプレート――身分証――に何も付いていなくて危険な依頼を受けることができないのがあったりとか。「見習い」というプレートの発行のないのもあったりとか。
今テーブルにあるロザリーさんの白銀色に輝く鉱石の横には「▼」のマークも。
青銅から白銀まで▲◆▼て、上級中級下級と、そのなかでも等級が別けられている。
ロザリーさんは「下級白銀冒険者」というわけだ。
けれども「白銀」と「黒鉄」の間にはとんでもない壁があり、下級でもロザリーさんはとてもすごい冒険者だと、彼女のプレートを確認する冒険者ギルドの受付さんや街の門番たちの反応で、私もそろ解ってきたよ。
ちなみに「黄金」には上中下もない。そんなレベルにある冒険者は大陸に数人しかいないらしいので。「黄金」はもはや勇者レベルだそうで……。
しかしそうなら「白銀」のすごさもわかりみです。
でも私が唸っているのは今日はそこじゃなくて。
ロザリーさんがお風呂入ってたから、プレートは外して机に置いてあったので。ちなみに私も洗ってもらったり。お風呂大好き日本人だもの。
今日はお風呂に他の人がいないタイミングで良かった。じゃなかったら「あの人なんでぬいぐるみ洗ってるんだろう」て目でロザリーさんが見られてしまうので……うん。
今宵のふかふか度は当社比増しです。
ちなみに私のお供のガロンとゼノンは、街の向こうにある森に。先回りして明日合流の予定。やっぱり魔物だから街の中より森の方が良いのかしら。子猿のゼノンが心配だけれども、ガロンが一緒なら安心かな。
何かあれば不思議な糸電話で連絡くれることになっているし。
そして私たちは街で足りなくなった食料や調味料などを買い足しつつ、今日のお宿に泊まるわけで。部屋にはいるまではリュックの中に隠れるのも、はい、慣れました。
ぬいぐるみは宿代かかりません! かかりませんったら! ね? ペット持ち込みじゃありません!
……内緒だよ。
それはともかく。
私はロザリーさんにお聞きしたこの等級が気になっていたのよね。
黄金。
白銀。
黒鉄。
「……それで青銅」
なんかこう、ね?
それで首傾げていたらお風呂上がりのロザリーさんにも首を傾げられちゃったところ。
「いやあの……ですね、なんか、こう順番がこれで良いのかなぁ、て……」
自分でも、尋ねてよいのかともそもそ考えながら。だって私の考えがこの世界に合ってない可能性の方が高いし。
だって、どう考えても「ここ」地球じゃないしね。
こんなペンギンなドラゴンがいるんだから。
「順番?」
私の疑問にロザリーさんも話を聞く姿勢になってくれた。
ここまで来たら気になること聞いちゃえ!
「あのですね、何で金銀「銅」じゃなくて金銀「鉄」なのかなぁ、って……」
これが気になってたの。
歴史でも、黄金の時代からきて青銅の時代になって――鉄の時代、そんなふうになったりしてるじゃない? あとオリンピックのメダルの方が馴染みかな?
でも冒険者等級は「金銀鉄銅」なんだもん。
けれども。
「なんだ、そんなことか」
あっさりとロザリーさんの肩から力が抜けて。
私がまた何か難しい事を考えているのかと心配してくれたらしいのだけど、とうの冒険者のロザリーさんには「そんなこと」だったらしい。
そして教えてくれた。
「昔……確か三十年くらいまえに等級が替わったんだ。あ、今の四つになったのはもっと前だったかな?」
「もっと前?」
「そう、なんだったかな、七つの……」
「……あ!」
歴史神話ヲタ、それわかりました!
「金銀鉄銅に錫や水銀ってやつじゃないですか?」
「あ、そうそう。それだ! よく知っていたなジュネ!」
ふっふっふっ、ヲタの知識は幅広いのですよ。
……まあ、興味をもったやつだけにだけど。
それは七金属。
錬金術とかの本を読んだら出てくるよ。
金は太陽、銀は月、そんなふうに天体に結びつけたりもするらしい。水銀が水星だったかな。
歴史や神話が、そしてファンタジーものが大好きだった私はもちろんその手の本も読み耽っていましたとも。
そして今世でロザリーさんに感心されるのでした。前世の私も本望だろう。その無駄知識。
「私が冒険者になったときにはもうこの四つのシステムだったからあんまり詳しくはないのだが、その七等級だった時代があるし、確かまだ使っているところもあるな」
七等級かあ。
金銀銅鉄錫な五金属にはならなかったんだ、と……ちょっとまたヲタしつつ。
「でも、わかりにくいと不評になったらしい」
あらら。
聞けば、とくに田舎から出てきたばかりの新人さんとか、等級の順番がわからなくて等級外の難しい依頼を受けちゃったりとか。
あららら、大事故だ。
「それで一度、ジュネが言ったような「金銀銅鉄」な順番になったんだ」
あら、銅と鉄の順番が?
首を傾げているとロザリーさんが荷物の中から赤い鉱石を取り出してきた。十円玉くらいの。
「でも、これが開発されたから「黒鉄」で「青銅」の順番になったんだ」
「これ、なんです?」
その赤い鉱石。
ちょっと茶色みがあって、そこまで透き通っていない。明るめのカーネリアンが近いかな?
「これ、魔物避けなんだ」
ぺひょ?
魔物――はい、私……。
「いやぁ、ドラゴンも魔物……魔物なのか?」
赤い石をツンツンつつく私にロザリーさんも首を傾げてしまう。今日は首の運動いっぱい。
そして何故この石で等級の順番が入れ替わったかというと。
「この石は衝撃を与えたら、魔物が嫌がる音と光を出すんだ」
なるほど。
ロザリーさんも何かあったときのために一応購入して、腰のポーチに入れているわけだが。
「この石より魔物避けになるジュネがいるから、最近すっかり忘れていた」
はい、生きた魔物避けです! それくらいしかお役に立ててないけど!
あ、あと冷蔵庫ね……。
「この石だが……プレートについている石、わかるか?」
「ロザリーさんのは銀色の石ですね」
「そう、私のはいざとなればそれで金貨三十枚くらい引き換えにできる石なんだけど」
それはそれですごいな。
「青銅のはこの魔除け石が埋め込まれているんだ」
なぁるほど。
だんだんわかってきました。
「それくらいのサイズだと三分間くらいの間、起動するらしい」
そうやってその三分間のうちに体勢を整えたり、逃げたりするわけか。
「そして一度使用したら赤いこの色が、薄い青い色に変わってしまうそうだ。使用済みな証しだな」
それで――青銅。
いや本当になるほどだ。
新品の青銅は赤いけど、錆びたりしたら青くなるもんな。
さっき石を見た時、十円玉と私が思ったのはサイズもあるけど、これ、新品の十円玉みがあるからかも。
それで「錫」がなかったわけだ。あれ「あおがね」になるものね。わかりやすくしたかったのにまたわかりにくくなっちゃうからだ。
……ふと。そういうの、こういう知識……って……。
「それでそういう助けが必要なのはまだまだ駆け出しな冒険者だろう?」
確かに。
「こういう塊はそれなりに値段もするのだが、プレートにつける分は……まあ、やっぱりそれなりにするんだけど。青銅のプレートのは……まあ、ギルドからの手助けだな」
冒険者が減ったら困るのもあるからと。
「もちろん、使った場合は交換にいくらか貰うらしい。冒険者割引あるけどな」
「なるほど……」
それで青銅が一番下になったわけだ。
見習いの上、色無しはまだしも色付きからは危険な魔物の討伐依頼も入ったりするそうだから。
いざとなればプレートについている小さな石を歯で噛んだりして衝撃を与える使い方をするんだって。噛む力は強いから、それくらいの衝撃がいるんだって。確かにうっかり何かの拍子に町中で鳴ったりしたら大変だもんね。
「あと、赤い色は黒よりわかりやすいから、受付の間違いも減ったってあったかなぁ……」
思わぬ副効果。
「中にはこの石を使うためにわざと等級を上がらないものもいるらしい」
まあ、お守りだよね。
ロザリーさんにしてみたら等級を上げた方がいろいろな依頼が受けられるのに、とあるみたい。それもあるよねぇ。
冒険者もいろいろなんだね。
でも、うん。
赤くて三分間かぁ……。
「……なんだかカラータイマーみたい」
とっても有名な特撮ですよ。
いや、あちらは青から赤なんだけど。
赤い輝きと音が危険を知らせるのかぁ。
私がそんなことをつぶやいたら。
「よく知ってたな」
またロザリーさんに驚かれながら褒められた。
「ぺ?」
何をて、また首を傾げる私に。
「それ、カラータイマーて呼ばれてる」
冒険者の青銅のプレートにつけられた赤い小石。
それはカラータイマーと。
なんでもこれを発明したひとが、「カラータイマーじゃん」て言ったらしい。
それって……それってさ……。
さっきふと感じたの、やっぱり間違ってなかったのかも。
この世界、生まれ変わり、私の他にもいるんじゃない!?
――と、いうわけで。
冒険者等級とか、そういう仕組み考えるの大好きです。
そしてちょっと今後のために大事な設定。
…黄金等級が12人しかいないなんてそんなまさかははは。




