第97話 RPGじゃなくてシミュレーションゲームだった!?
何かが繋がる感覚。それは一つの糸のようで、途中で三つに別れるような。
彼女らの性質でそうなったのかも。
ハーピーの三姉妹は私の影に額をつけた。
ハーピーさんの姉たちも私の下僕になりたいと。いやまだお供であって欲しい。下僕は、うん、なんかやっぱりヤダ。
思い出だせば一番はじめに影にって言ったのハーピーさんだったなぁ。
だけれどもばたばたしてしまい、彼女の順番が、っていうかそういうことする間もなくあの岩場から脱出になってしまったから。だから彼女とは糸は繋がっていないし、はぐれちゃったら合流もできなかったんだっけ。
ハーピーさんたちは上から。
長女ネージュ。
次女リューヌ。
三女フルール。
そういうお名前を、なんと私が名付けさせていただいた。
ハーピーとかの種は三つ子ないしは双子で産まれて、その固まりで一つな感覚があるそうで。個としての名前がなかった。でもそれでも群れで困らないらしい。
その辺りは人間の私にはわかりにくいけれど、ドラゴンの私はなんとなく解る。いや、本当に不思議で説明に難しいのだけど。感覚的なのなので、本当に……。
でもそれだとロザリーさんや、人間の部分の私が困るから名前をつけさせていただいた。
なかなかに良い名前をつけられたと思う。
……かつて名付けに何時間も悩んだゲームの数々の経験ありよ。主人公とかデフォルトネームがあるのってありがたいよね。レトロゲームとか……むしろ最新ゲームほど、名付けやキャラクター設定に時間かかるよねぇ……。
そうしてハーピーさんたちも私の影に繋がって加護もうごいたのか。ロザリーさんとも案の定、言葉が。
「うむ、ロザリーと申す。縁あってそなたらの主のドラゴンと共にある。人間だがよろしく」
ロザリーさんの素敵なところは相手が魔物だとしても、嫌悪しないでこうして自己紹介してくださるところだと思う。
ハーピーさんたちも個としての名前が嬉しいのか、自己紹介してくれた。
「ネージュです。妹がお世話になりました」
「リューヌです。もはや会えぬと……」
「姉さまぁ……あ、フルールです!」
やっぱりどことなくお姉さんのハーピーたちの方が「お姉さん」て雰囲気。私たちの知ってるハーピーさんは末っ子なんだよね。
良く見たらネージュが一番真っ白で、フルールがちょっと羽先に赤があるっぽいのが個体差かしら。それで名前もつけさせていたたきました。
ぴぃぴぃとハーピーさんたちは嬉しそうに歌ってる。
いや、本当にハーピーさんが無事にお姉さんに合流できて良かったなぁ。心配してたんだよね。
ガロンとゼノンとあの夜に一緒に逃げ出して。
その三人とようやくまた。
そこにロザリーさんとハーピーさんのお姉さんたちと合計七人かぁ。私も魔物だからガロンたちも「匹」て何でか思わない……不思議。
でもちょっと大所帯になったけど、ヒョウカさん泊めてくれるかしら。
今朝まではそんな予定だったのだけど。
いろいろありすぎた一日だったなぁ。
――そんな一日は、まだまだ終わっていなかった。
「……ぺ?」
私は私に頭を下げる獣王国の主だった種族の長や顔役のひとたちに。
きょとんと、首を傾げていた。
彼らは別に私に、そう魔物たちのように影に額ずいているわけじゃあなくて。
話合いに私たちも来てくれないかと呼ばれて。
そりゃあ当事者だから話をあれこれ尋ねられるのは仕方ないよねと、覚悟して腹くくってた私たちだけれども。
私は「ドラゴン」であるとまた説明や自己紹介からかな、なんて考えてもいた。またオーラ全開かしら、なんて。
そんなことを、まだのんびり考えていた私は。
「……ぺ?」
「……うん?」
私を持つロザリーさんもきょとんとしていた。
そんな私たちに獣王国の皆さまは言う。
「どうぞ我らが王に!」
どういう話し合いしたのと、後方腕組みな竜人さんに襟首掴んで私こそがお話し聞きたいです!
何で!?
けれども獣人たちの性質を考えたら、少しだけ……少ーしだけ、納得もできるような。
その説明をしてくれたのはこの場にいた黒婉の長だという黒猫の獣人さん。
そう、ランエイさんたちの叔父さんだそうで。
彼が先ほどランエイさんとベニユキさんをひしっと抱きしめていたのをこっそりと。亡きお姉さんの形見な彼らを、叔父さんはずいぶんと心配していた。ランエイさんは思い余って叔父さんにも相談しないで弟連れて逃げていたから。
まあ、獣王になるのは一族総出の悲願なのもあるから、長である叔父さんには反対されると思っちゃうのもね……。
あとから改めて、私たちもずいぶんと感謝されました。
私たちに、とくにロザリーさんに会えなかったらランエイさんはあのまま旅立ちしたばかりにしてマティの実の、この国に蔓延る奇病で亡くなっていたのかもしれなかったのだから。そうなると「白」で陽の光に弱くて蔵の中育ちの世間知らずなベニユキさんもどうなっていたか。
本当にタキさんの小狡い計画だ。
……で。
その小狡い計画を防いだのは。
ただのマティの実の食べすぎであるという解決策をみつけたのは誰か。
そして「白」は呪いでもなんでもないと。
「それをこの国にもたらしてくださった……しかも、竜――ドラゴン!」
ははーっ、と皆さまが平伏してしまう。
ちょっと待ってー!?
「しかも全盛期の獣王様に匹敵、いえもしや獣王様よりもお強かった……」
それは同じく長として席についていたシュンレイさん。彼女は一瞬でもロザリーさんと闘っていたから実力ご存知だもの。だから頷かないでヒョウカさん!? ついでにおっさん!!
「そ、そう獣王様と戦ったのはロザリーさんだし……」
私は思わず、私をご自分の胸のあたりで持っているロザリーさんを首を回してみたけど!
「いやぁ、私は人間だから。人間が獣王には無理無理、きっと反発起きましょう。それにほら、私はドラゴンのお供であり。ならば私の手柄はドラゴンのものであるということで」
貴方、お供じゃないでしょー!?
でも後ろで私のお供の魔物たちがうなずいてる。さすが良く解ってらっしゃるとガロンが小さく唸り、ゼノンやハーピー三姉妹がキラキラと尊敬の目でロザリーさん見てる。先ほどの中庭でずいぶんと打ち解けたね。それはとてもとっても良いことなんだけどもね!?
「白銀の冒険者どのもこのようにドラゴンを推してらっしゃる。つまりは人間たちにもこのようにドラゴンが王であることを受け入れていただけるのでは?」
何言ってるのおっさん!? ゲンヤさんの言葉に、獣人の皆さんも「おお、確かに」て頷いちゃった……。
長であるシュンレイさんの後ろに控えているけど、ゲンヤさんも当事者だし、彼自身が獣王国ではなかなかな立場だそうだからこの場にいるのでしょうけれども。
そうして私を盾に逃げるロザリーさん。いやあとから「何かあったらランエイどのみたいに連れて逃げ出てやるつもりだったから」て言われたけどぉ……ロザリーさんなら、きっと嘘じゃなかったでしょうけどぉ……。
ランエイさんの一族やシュンレイさんの一族が、そしてヒョウカさんの教え子たちの皆さんが。
私を次の「獣王」にと。
話し合いでそうなったらしく。
ランエイさんたちやゲンヤさんたちの話を聞いて、彼らは獣王の死を知って。
獣王の最期には、皆さま涙した。
獣王コウランはとても良い王だったから。
その分――最期に狂ったのを……狂わせたのを許せない。
けれどそれを防ぎ、しかも生贄とされ死ぬはずだった幼子を助け。
獣王の最期を――その間違いを止めることができた白銀冒険者を連れてきた。
それだけでも獣王国の皆の感謝は――畏敬の念は私に。
――ドラゴンに。
「あ、あの、ほら、私……獣じゃなくて竜! ドラゴンですから!」
もふもふふわふわですけども!
皆さんも「あ、そうだ」て顔を見合わせていたんだけど。
そこにまたヒョウカさんがいらんことを言いやがった。
「ならば今日より――竜王国に!」
この眼鏡狂信者ー!?
「なるほど、新しい国と……病平癒に、そう一新するのも良いかもしれぬ」
「建国記念日は今日か? それとも改めて決めるか?」
「今日だとすると獣王の命日にもなってしまうな……」
「ならば占にて良き日を選ぼう」
「そうよな、今日この場にこれなかった長たちにも話さねば」
「おお、ならば国の紋なども変えなければであるな」
……え、竜王国、受け入れ早くない?
現在、絶賛――何故か私を次の王にな空気である。
獣人たちの性質。
獣とは強く賢く――そして美しいものに惹かれる。
ドラゴンの威圧に敵う獣人がいるはずがなく。
そしてマティの実の真実や長年厭われた白い子の、その間違いや正しい対処ももたらされた。
そして美し――もふもふで愛らしい。それも、ありということで。
そうしてこの国は「獣王国」から「竜王国」となった。
え、これって。
私……RPGじゃなくてシミュレーションゲームだったのぉ……!?
そうだったんだよペンドラちゃん。
これにて第一部!
「ペンドラと白銀の冒険者編」といったところかな。
次より「竜王国始動編」、また今後ともよろしくお願いします!
新しく始められるまで、拙作の他の話や短編なども読んで楽しんで頂けたら幸いです。




