中央委員会 4
「え?」
「あ、…いや、ご、ごめん」
ばつが悪そうに金田さんが俺の裾を離す。
「…どうかした?」
俺が問いかけるも、金田さんは黙ったまま俯く。
彼女が考えていることは分からない。ただ、その雰囲気から推測できのは、俺になにか話したいことがあるのではないか?ということ。
であれば、俺が取る行動は決まっている。
「金田さん、この後暇だったりする?」
「…え?」
伏せていた顔を金田さんがようやく上げる。
その顔はとても不安げだ。
「せっかくだから、帰りにどっか寄っていかない?」
ということで、今俺と金田さんは駅前にあるゲーセンにいる。
何故ここかというと、とにかく遊べればと思ったからだ。
そこで俺は金田さんの別の一面を目撃する。
「金田さん…ゲーム上手いんだね」
そう。
今俺達がしているのは対面式の格闘ゲーム。なんと俺は完膚なきまでにフルボッコにされていた。
「そうかな? ありがと」
顔は見えないが、金田さんの嬉しそうな声が聞こえてくる。
そして、また俺のキャラが見事に宙に舞い、画面にKOの文字が踊る。
「やったぁ!」
彼女の後ろにいるギャラリーからも拍手があがる。
金田さんは笑顔でそれに応えていた。
ゲーセンを出ての帰り道。
俺と金田さんは並んで並木道を歩く。
そして、金田さんが一言。
「ここ…だよね」
「ん?」
「あたしが、不良に絡まれて、それを柏君に助けてもらった所」
「ああ。たしかにそうだね…」
つい今朝起きた出来事なのに、もう何日も前のような錯覚だ。
それほどまでに今日は中身の濃い一日だった。
沢山の人に会った。
それだけなのに、この充実感はなんなのだろう。
「…あたしね」
金田さんが足元の小石をコンッと蹴る。
小石は転がって側溝の穴に消えていった。
「中学では問題児で、周りによく迷惑かけてた」
「…………」
「親にも先生にもいっぱい怒られて、それに逆ギレして。…そしたら、あたしの周りには誰もいなくなっちゃった」
たった一人だけは……
と小さく呟く。
今日一日彼女と一緒にいて思ったのは、ごく普通の女の子だってことだ。
ムカつけば怒るし、嬉しければ笑うし、恥ずかしそうに照れたりテンパったり、ヤキモチ妬いたり、楽しそうにはしゃいだり……
過去に何があったか、それは分からないが、それはあくまで過去であり、今俺の目の前にいる彼女こそが、俺にとっての現実だ。
「大丈夫」
だから、俺はこう諭すのだ。
「金田さんは、充分魅力的な女の子だよ」
「…!」
「ねぇ、よかったら俺と友達になってよ」
「…え」
「ダメかい?」
「ううん、ダメじゃないけど……いいの? 柏君が思ってるような子じゃないよ?」
「だから、なんだってのさ?」
俺は金田さんを見据えて言う。
「少なくても俺には問題ない」
ニッと笑いかける。
唖然としていた金田さんだが、やがて吹っ切れたような、観念したような顔をした。
「…初めてかも。こんな変な人に会うのは」
「変とは失礼だな!」
お互い笑いあう。
「…ふふっ、これからもヨロシクね“晶”」
「…こちらこそ、“茜”」
また二人笑いあう。
いつまでも、お互いに。
これで第1章は終わりです。
何話か閑話を挟んで新章になります。




