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彼と彼女たち  作者:
第1章
32/37

中央委員会 4

「え?」

「あ、…いや、ご、ごめん」


 ばつが悪そうに金田さんが俺の裾を離す。


「…どうかした?」

 俺が問いかけるも、金田さんは黙ったまま俯く。


 彼女が考えていることは分からない。ただ、その雰囲気から推測できのは、俺になにか話したいことがあるのではないか?ということ。

 であれば、俺が取る行動は決まっている。


「金田さん、この後暇だったりする?」

「…え?」


 伏せていた顔を金田さんがようやく上げる。

 その顔はとても不安げだ。


「せっかくだから、帰りにどっか寄っていかない?」







 ということで、今俺と金田さんは駅前にあるゲーセンにいる。

 何故ここかというと、とにかく遊べればと思ったからだ。


 そこで俺は金田さんの別の一面を目撃する。



「金田さん…ゲーム上手いんだね」


 そう。

 今俺達がしているのは対面式の格闘ゲーム。なんと俺は完膚なきまでにフルボッコにされていた。


「そうかな? ありがと」


 顔は見えないが、金田さんの嬉しそうな声が聞こえてくる。

 そして、また俺のキャラが見事に宙に舞い、画面にKOの文字が踊る。


「やったぁ!」


 彼女の後ろにいるギャラリーからも拍手があがる。

 金田さんは笑顔でそれに応えていた。





 ゲーセンを出ての帰り道。

 俺と金田さんは並んで並木道を歩く。


 そして、金田さんが一言。


「ここ…だよね」

「ん?」

「あたしが、不良に絡まれて、それを柏君に助けてもらった所」

「ああ。たしかにそうだね…」


 つい今朝起きた出来事なのに、もう何日も前のような錯覚だ。

 それほどまでに今日は中身の濃い一日だった。


 沢山の人に会った。

 それだけなのに、この充実感はなんなのだろう。



「…あたしね」


 金田さんが足元の小石をコンッと蹴る。

 小石は転がって側溝の穴に消えていった。


「中学では問題児で、周りによく迷惑かけてた」

「…………」

「親にも先生にもいっぱい怒られて、それに逆ギレして。…そしたら、あたしの周りには誰もいなくなっちゃった」


 たった一人だけは……

 と小さく呟く。



 今日一日彼女と一緒にいて思ったのは、ごく普通の女の子だってことだ。

 ムカつけば怒るし、嬉しければ笑うし、恥ずかしそうに照れたりテンパったり、ヤキモチ妬いたり、楽しそうにはしゃいだり……


 過去に何があったか、それは分からないが、それはあくまで過去であり、今俺の目の前にいる彼女こそが、俺にとっての現実だ。





「大丈夫」


 だから、俺はこう諭すのだ。


「金田さんは、充分魅力的な女の子だよ」

「…!」

「ねぇ、よかったら俺と友達になってよ」

「…え」

「ダメかい?」

「ううん、ダメじゃないけど……いいの? 柏君が思ってるような子じゃないよ?」


「だから、なんだってのさ?」


 俺は金田さんを見据えて言う。


「少なくても俺には問題ない」


 ニッと笑いかける。

 唖然としていた金田さんだが、やがて吹っ切れたような、観念したような顔をした。


「…初めてかも。こんな変な人に会うのは」

「変とは失礼だな!」


 お互い笑いあう。



「…ふふっ、これからもヨロシクね“晶”」

「…こちらこそ、“茜”」



 また二人笑いあう。

 いつまでも、お互いに。









これで第1章は終わりです。

何話か閑話を挟んで新章になります。

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