茜と過ごす昼休み 3
中庭にやって来た。
ここは入試の合格発表の会場になった所だ。そして、少し離れた場所にある大木とベンチ。
―――どうしても思い出してしまう。倉林千鶴という娘を。
“あの日”以来全く会っていない。今彼女がどうしているのかは分からないが、この前メールを送ったら、『元気にやってます!』と返ってきたので大丈夫だろう。
今彼女は学校を休学している。元気にはしているが何をしているか分からない。どこにいるのかさえも俺は分かっていない。
そして、
彼女への回答も、うやむやのまま……………
「―――柏君っ!」
……………………
「―――柏君ってばっ‼」
「おおっ!」
すぐ間近に金田さんの顔があり仰け反ってしまう。
どうやら、ベンチに座ってかなり放心していたようだ。
「ボーッとしちゃって、どうしたの?」
心配そうに俺を窺ってくれる。
「あはは…ゴメンゴメン。ちょっと色々と思い出しちゃってさ…」
「…色々って?」
「この中庭って入試の合格発表やってたでしょ? あの時の事を思い出してたんだ」
「あぁ……」
金田さんも何か思うことがあるのだろうか、意味ありげな表情をする。
そして、俺の顔を見て尋ねてくる。
「柏君はさ、何でここの学校を受けたの?」
「俺? うーん、そうだな…」
前も質問されたな。そういえば。
真剣に考えると、何故なのだろう?
二人の姉ちゃんがいるから?
確かに合っているかもしれない。だけど、何故姉と同じ学校にしたのか。
中学の時、お前の学力では無理と言われながらも、必死に勉強したのは何故なのか。
理由は簡単だ。
「……意地…なのかもな」
そうなのだ。
幼少時から何かと比べられた。
何でもできる愛姉ちゃん。
器量がよく、頭もいい栞姉ちゃん。
そして、妹の唯までもが、俺にとってはライバルだった。
その中で、どうにかして自分の存在意義を見いだそうとして来た。
だから、姉ちゃん達と同じ学校に行き、自分も同じ立場にいたいと思った。
今、俺らを変に比べようとは誰もしないが、己の中にある変な意地が俺を駆り立てるのかもしれない。
「そういう金田さんは?」
「あたし? あたしは特に理由はないかなぁ。中学の時の友達に朝霞に行こうって誘われて受けたら合格しちゃった感じだから」
ハハハと笑う金田さん。
俺みたいに深く考えてはいなそうだが、少し羨ましいな…
逆に俺が考えすぎかもしれない。姉ちゃん達に言ったら『馬鹿?』って言われそうだ。特に栞姉ちゃんに。
何となく空を見上げる。
気持ちが軽くなるようなスカイブルーの空だ。
「柏君?」
「ん?」
視線を彼女に戻す。
「柏君って、付き合っている人、いるの?」




