最初の席替えから始まる恋 5
「ほらー静かにしろ! 特に沢お前だ!」
「ひゃい‼ すみません…」
氷室先生に怒鳴られたじろく沢さん。
…あと、先生なんで俺を睨むんすかね?
「…ったく」
氷室先生が大きく溜め息をつく。
沢さんを見やると、『ゴメンね』と両手を合わせて謝っていたので、俺はつい失笑してしまった。
「…気にするな」
という念を込めて笑顔で返す。
後ろから、『モテモテねぇ』と聞こえたが、敢えて聞こえない振りをした。
「…さて。次はクラスの委員長と副委員長の選定だが……、これはもう決まっている」
教室内が動揺の声で包まれる。氷室先生はそれを制するように続けた。
「委員長は柏!お前だ」
「へ?」
つい素頓狂な声を出してしまう。ええ? なんで?
「お前は遅刻したからな。しかも初日にだ。それ相応の罰を与えねばなるまい。しかし、内申の点数を下げるわけにもいかん。だから、お前には学級委員長をやってもらうことにした」
えー、なんですかその当てづけのような理由。
そんな理由で決められてもこっちとしては迷惑なんだが。
ただ、遅刻したのはこちらに非があるので言い返せない。ぐぐ……
「それにお前は人気があるようだしな? お前が委員長をやるのに反対するものもいないだろ」
そしてニヤリとする。
うわぁ最低だこの人。本当に血も涙もないよ。
「さて、委員長は柏に決まりっと……」
氷室先生が帳簿に何やら書き込んでいる。うぅ…俺の人権は無視か?
「次に副委員長だが、これは金田!お前に決まりな!」
「え?え、え、ええっ!? あ、あたしですか!?」
金田と呼ばれた女子――俺の左隣の女子が立ち上がる。
……そっか。彼女は金田というらしい。
「そうだぞ、遅刻2号。お前にも罰をくれてやる。しっかり委員長をサポートするんたぞ」
「…………」
黙り混んでしまう金田さん。そりゃそうだろ、理由が理不尽すぎる。
だが、最終的に拒否権はないなので、押し切られる形で副委員長に決まってしまった。
「……いいなぁ」
沢さんがボソリと呟く。一体何がいいというのだろうか?
「…では、LHRを終わる。もう、このまま帰ってもらって構わないが、チャイムが鳴るまでは教室を出ないこと。以上だ」
氷室先生の一声によりまた騒がしくなる室内。
いいのか?他のクラスの迷惑になるんじゃないのか?
そんなのお構いなしというように、みんながみんな談義に花を咲かせている。
「委員長!副委員長!ちょっとこっちに来てくれないか?」
氷室先生に呼ばれる。
金田さんと二人で教卓まで向かうと、氷室先生が俺らを手招きした。
「午後から各クラスの委員長と副委員長が集まって会議がある。お前らには悪いが、その会議に出席してもらいたい」
「はぁ…。まぁ構いませんけど」
「金田も大丈夫か?」
「はい」
「そうかそうか、すまんな」
そう言って俺たちに一枚ずつプリントを渡してくる。その紙には、
『第一回 中央委員会議題要項』
と書かれていた。
「時間は午後の一時に、大会議室だから、今度は遅れるなよ?」
「わ、分かってますよ」
根に持ってるのかな、さすがに。
「じゃあ、頼んだぞ」
と言って、氷室先生は教室を出ていった。
残された俺と金田さん。
うーん、ここはこれから学級委員として仕事していくのだから、自己紹介くらいはしとかないとな。
色々順番がおかしい気はするが、気にしないでおこう。
「…あ、あの」
金田さんが俺に話しかける。
俺は視線を彼女へと持っていった。




