最初の席替えから始まる恋 4
私は千葉真澄。
私はその朝、凄い光景を目撃した。
「…何やら揉め事のようね」
野次馬精神に火が付いた私は、人混みを掻き分け騒ぎの中心へ。
でも、あまりゆっくりもできない。あと5分でバスが出てしまう。そのバスに乗り遅れれば遅刻確定。入学初日から遅刻というヘマは絶対避けてはいけない。
私は注目される側ではなく、常に注目する側に立たないと…
相手が光なら、私は影になる。
私のジャーナリズムの原点だ。
愛用している高性能デジカメをそっと胸ポケットから取り出す。
シャッターチャンスは見逃さない!
…てあれ? あれってウチの生徒よね?
なんか不良に絡まれてるっぽいけど…
でも、驚くのはそれだけじゃなかった。
「あ! あれって柏君!?」
そう、あの有名人柏晶がいたのだ。しかも、不良一人をあっという間に倒しちゃってる。
そしてもう一人の不良は……あ~尻尾巻いて逃げちゃった。
これはどういうことだ? 多分あの子を助けるのに柏君は不良に立ち向かったんだろうけど、私の情報には彼が喧嘩に強いってのは入ってなかった。
謎が多い人物だけど、これはスクープじゃない?
――――ふふふ。面白くなってきた!
彼には、私がまだ知り得ない多くの秘密を持っているようね。そこが魅力的。
まぁ、柏美女姉妹の弟、しかもイケメンとくればそれだけで充分話のネタにはなるけど。
最後に、彼の勇姿をカメラに収めて、私は現場を後にする。
そして、彼と直接対話して分かったことがある。
彼は人を惹き付ける魅力がある。オーラも感じる。これはきっと先天的なものだ。彼自身もそれに気づいていない。
彼の優しさや気遣い、心配り。それに強さと誠実さは、きっと彼を取り巻く環境に大いに働き掛けるだろう。
その時どんなドラマが生まれるのか? 私は楽しみでしょうがない。
どうやら、美空も柏君にすっかりハマっちゃったみたいだし。
まだ、気持ちに確証が持てないようだけどそれも時間の問題ね。
それに、彼の隣の女子……朝柏君に助けてもらった子だよね? 彼女もしきりに柏君を気にしてるみたい。一見怖そうなイメージだけど、恋は女も変えちゃうのかな……
他の女子も少なからず遠からずってところみたいだし、なんか凄い予感。
私は……
私は…傍観者でいなくてはいけない。
あくまでも中立。
誰にも分からないように、スマホから画像を開く。朝、デジカメで撮った写真を転送したものだ。
それは、凛々しく勇まさしい、正に男の姿。
――――カッコ良すぎよ…
生まれてきそうな感情をそっと胸にしまう。
流されてはいけない。私だけは。
でも、我慢って大変だなぁ……
私と彼の出会い。
私は嬉しくも、ちょっと複雑な思いで彼を見ていた。




