最初の席替えから始まる恋 3
沢美空は朝からテンションが上がりまくりだった。
独自の情報網を持つ幼なじみの千葉真澄から飛びきりの情報を手にしていたからだ。
「どうやら私たちと同じクラスに、あの柏美女姉妹の弟君がいるみたいね」
「え? マジで!?」
まだ未発表のクラスの名簿を何故真澄が知り得ているのか、それは果てしなく謎だが、敢えて美空は追及しない。それよりも気になるのは柏晶のことだからだ。
……真澄なら、ある程度のことは知っているかも。
「ねぇ、真澄は柏君の事…どこまで知ってるの?」
美空は言って、ちょっとしまった。と思った。この言い方じゃいかにも自分が柏晶のことが気になってます、と明白にしているようなものだからだ。
だが、真澄は別に気にすることなく、自分のメモ帳を取り出してペラペラとめくり出す。
…本当は勘づいてるかもね。美空はそう思った。
「え~と……、柏晶、柏家長男。上の姉に生徒会長の愛先輩と学園トップモデルと謳われる栞先輩がいる。これは知ってるよね?」
「うん」
「妹が一人いるようだけど割愛するわね。…それで柏君本人のことなんだけど、まず中学の時の成績は良くなかったみたいね」
「え…そうなの?」
「ただ、2学期末より成績が急上昇。その時には学年トップ位までになってる。彼は天才というより秀才タイプのようね」
「…なるほど」
姉二人は天才肌で、その弟も少なからずその素質はあるということだ。これは、本当に楽しみになってきた。
「美空…ずいぶん楽しそうじゃない?」
「え? 分かる?」
「そりゃ、それだけニコニコしてりゃ誰だって分かるわよ」
「ありゃ~」
――――しまったなぁ。そりゃあ今一番ホットな人物と同じクラスになるんだから、テンション上がるのもしょうがないけど。会う前からこれじゃあね……
まるで、有名人を間近に感じられる高揚感ともいうのだろうか。こんなにワクワクするのは。
…ん? でも、よく見れば真澄だって……
「…真澄だっていつもより楽しそうじゃん?」
そう。こんなに目をキラキラさせる真澄を見るのはずいぶん久しぶりなのだ。
すると、真澄は舌をちろっと出して屈託なく笑った。
「えへ、バレた?」
「うん。バレバレ」
直後二人で笑いあった。結局二人してテンションは上がりまくりなのだ。
「柏君ってどういう人なのかな?」
「そうね…。でも、きっと素敵な男の子だと思うよ?」
――――真澄の言うことは、やはり正しかった。
席替えで美空は晶の右隣をゲットした。これだけでも超嬉しいのに、早速彼と話することができたのだ。
晶は、やはりというか、容姿も申し分なかった。というか、充分イケメンである。あの姉たちにあってこの弟である。
真澄にいつものようにからかわれじゃれあっている様子を、優しく笑顔で見てくれていた晶を横目で見て美空は確信した。
そして、自然と彼に惹かれていく。
それをまだ恋と呼ぶには早計かもしれない。まだ彼は憧れの人だからだ。
だからこそ、彼をもっと知りたい。と美空は思った。
……そうだ。今度真澄と二人で遊びに誘ってみようかな?
美空は確かにそこにある未来に心馳せながら、晶を見つめていた。




