入学 2
栞姉ちゃんの部屋は俺の部屋の右となりにある。
ちなみに、愛姉ちゃんや唯、親父の書斎とかも二階に全て収まっている。そう考えれば俺の家ってかなりの広さなんだな。
栞姉ちゃんの部屋の前。ノックをしてみるが、案の定反応はない。
しょうがないので、勝手にあがらせてもらうことにした。
栞姉ちゃんの部屋は、壁こそ建築当時の色を基調にしているが、カーテンやフロアマットはライトグリーンを使用していて、爽やかなイメージを醸し出している。
…そういや、栞姉ちゃんは緑が好きだったな。
栞姉ちゃんは、これも新緑色の布団にくるまって寝ていた。
布団を首まで被り、安らかに寝ている栞姉ちゃん。その寝顔は弩級の可愛さである。
本当に黙っていれば、愛姉ちゃんをも凌ぐ美人顔なのに。
栞姉ちゃんは性格に難がある。他人には冷酷だ。身内の俺たちこそそこまで酷くないが、やはりたまに言葉にトゲを感じるときがある。
そんな彼女だから、当然敵が多い。
特に女子からは陰湿な苛めを過去に受けたこともある。
だが、俺は分かっている。
栞姉ちゃんは誰よりも人一倍繊細な心の持ち主だ。だから、自分の弱いところを見せまいと気を張っているのだ。
本当は優しい人なんだけど。なかなか素直になれないんだよね……困った人だ。
「……むにゅ…………」
栞姉ちゃんが寝返りを打つ。
…おっと。さっさと起こさないとな。
「ほら、栞姉ちゃん! 朝だよ、起きなよ」
ユサユサ。
「……む~、……ゃぁ……」
栞姉ちゃんがちょっと横にスライドする。
「ダメだよ! 今日から学校なんだから! もう、愛姉ちゃんは学校に行ったよ? 起きないと遅刻だよ!」
ユサユサ!
「……みゅ~…ねむぃ………あと……5分…」
ゴロン。
「ダーメ! ほらほら、起きなさいって!」
ユッサユッサ!
「……あとぉ……5時間…そしたら、起きる……」
何故伸びる!?
あ~、埒が明かん!
「馬鹿言っとらんで起きんか!」
ユサユサユサ!
ゴロン!
――ドスン‼
………………
――――落ちた。
あまりに体を揺らしすぎて、ベッドから振り落としちゃったよ。
しかも頭からいっちゃったなぁ…
「……栞姉ちゃん大丈夫…?」
「う~…いったぁ~~!」
頭を抑えようやく起き出す栞姉ちゃん。
髪の毛爆発してますよ?
「……寝起きサイアク……」
「早く起きないからだよ」
「…あれ? 何でアンタここにいるの?」
ようやく俺を認識したようだ。
「愛姉ちゃんに頼まれたの。ほらほら、朝飯は出来てるから早く支度してよね」
「………むぅ」
栞姉ちゃんは目を擦りながらむくりと立ち上がる。
そして、そのままパジャマの上着に手を入れて……
や! 脱ぎ出した!?
「な、な、な、なにしてんのアンタは!?」
「何って…着替える?」
「弟の前で脱ぐか普通!?」
「……着替えろって言ったの…そっちじゃん」
「時と場合を考えんかい!?」
パジャマの隙間から綺麗な腰のラインが覗く。
……相変わらずウェスト細い…………って!
「……うー、…………ぽいっ」
そして上半身裸に‼
嗚呼、寝るときはブラジャーはしない主義なんですね…
…………って、ぎゃあああ! このど阿呆ー‼
「……お兄ちゃん!いつまで栞お姉ちゃん起こすのに時間掛かってるの!?」
ガチャ
「…あ」
「…あ」
「……むにゅう…」
「…唯。落ち着いて、心を穏やかにして、お兄ちゃんの話をよく………ぶはっ‼」
何故ここに地球儀が!
アメリカが顔にヒットだぜ。
「変態ッッ‼」
唯が走り去っていく。待て、お兄ちゃんは冤罪だ!無実だよ!
しかし、唯に俺の心の叫びは届かなかった。
栞姉ちゃんはまた寝てるし。
いっそ置いて行ってやるか。
はぁ…




