表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第1話 起動。

 ――耳の奥で、音がした。


 金属が呼吸するような、低い振動。


 「……っ、なんだよこれ」


 カイは膝をついたまま、瓦礫の中で息を荒げていた。


 視界の端で、青白い光が脈打っている。


 あの“壊れたはずの兵器”。


 リンクスーツ。


     ◆


 背後では、まだ足音が続いていた。


 一定で、冷たいリズム。


 アストロ帝国の追撃部隊。


 黒い装甲が、この街そのものを“狩場”に変えている。


 レオの声が遠い。


 「カイ……逃げろって言ってんだろ!!」


 「逃げる場所なんて、もうねぇよ……!」


 その言葉を吐いた瞬間、


 目の前のリンクスーツが――動いた。


     ◆


 カチ。 何かが噛み合う音。


 それは機械音じゃない。


 “神経”が繋がる音だった。


 《神経接続プロトコル:起動》

 

 《適合確認》


 《リンク開始》


 「は……?」


 視界が一気に歪む。


 世界が“上書き”される感覚。


 カイの腕が、勝手に動いた。


 いや……正確には――


 “何かがカイの体を使っている”。


 「やめろ……っ!」


 叫んでも止まらない。


 リンクスーツの外装が、瓦礫の中から引き剥がされるように起き上がる。


 青白い光が全身を走る。


     ◆


 その瞬間だった。


 敵リンクスーツが射撃態勢に入る。


 ――ガンッ!!


 弾丸が空気を裂く。


 だが。


 当たらない。


 “当たる未来そのもの”がズレている。


 カイの身体は、理解していなかった。


 なのに避けていた。


 「……嘘だろ」


 レオの声が震える。


 「お前……それ動かしてんのか……!?」


 カイは答えられなかった。


 ただ一つ分かるのは、


 この力は“人間の延長じゃない”ということ。


     ◆


 敵が距離を詰める。


 一瞬で。


 黒い装甲が目の前に現れる。


 殺意だけの圧力。


 その瞬間――


 カイの中で、何かが“切れた”。


 「……うるせぇ」


 低い声だった。


 自分の声じゃないみたいだった。


 リンクスーツの腕が動く。


 ただの一撃。


 それだけで、敵の装甲が“沈んだ”。


 遅れて爆音。


 地面が割れ、廃墟は消し飛んだ。


     ◆


 静寂。


 風だけが残る。


 カイは荒い呼吸のまま立っていた。


 手が震えている。


 いや――“身体全体”が震えている。


 「……俺、今、何を」


 言いかけて、気づく。


 倒れている敵の向こうで、


 まだ“別の足音”が近づいていることに。


 そしてその瞬間、


 リンクスーツの中で、機械音が鳴った


 《追加適合者確認》


 《戦闘モード継続》


 カイは息を呑む。


 この力は――


 まだ、終わっていない。


      ◆


 もう一機。


 黒い装甲が、瓦礫の煙の向こうから現れる。


 赤い単眼が、静かにこちらを捉えていた。


 《対象脅威度上昇》


 《戦闘行動を再構築》


 機械音声。


 敵のリンクスーツが、姿勢を低くする。


 次の瞬間。


 ――消えた。


 「カイ!!」


 レオの叫び。


 反応するより先に、衝撃が来た。


 轟音。


 視界が揺れる。


 カイの身体は吹き飛び、崩れた壁を何枚も突き破った。


 肺から空気が消える。


 「が……ッ!!」


 痛い。


 なのに。


 動ける。


 普通なら死んでる。


 リンクスーツが衝撃を吸収していた。


     ◆


 敵がゆっくり歩いてくる。


 処刑みたいな足取りだった。


 「対象確認」


 「未登録機体を確認」


 「回収対象へ変更」


 スピーカー越しの声。


 感情がない。


 人間を見ている声じゃない。


 「……カイ、逃げろ」


 レオが血を吐きながら立ち上がる。


 震える手で鉄パイプを握っていた。


 勝てるわけがない。


 それでも前に出る。


 「レオ、やめ――」


 瞬間。


 敵が動いた。


 速すぎる。


 見えない。


 レオが殺される。


 そう思った瞬間。


 カイの視界が“加速”した。


     ◆


 世界が、止まって見えた。


 瓦礫の落下。


 火花。


 敵装甲の駆動。


 全部が見える。


 頭に直接、情報が流れ込んでくる。


 《強制同期率上昇》


 《戦闘補助開始》


 知らないはずの動きが、身体に浮かぶ。


 カイは踏み込んだ。


 地面が砕ける。


 敵の懐へ。


 そして――


 拳を叩き込む。


 爆音。


 黒い装甲が、横殴りに吹き飛んだ。


 車両を巻き込みながら激突し、火花を撒き散らす。


 「……え」


 レオが呆然と呟く。


 カイ自身も、何をしたのか分かっていなかった。


     ◆


 静寂。


 煙の中で、


 敵リンクスーツがゆっくりと崩れ落ちる。


 動かない。


 完全停止。


 カイはその場で膝をついた。


 呼吸が荒い。


 頭が焼けるみたいに痛い。


 視界も滲む。


 すると。


 リンクスーツの内側で、機械音声が静かに響いた。


 《適合者コード確認》


 《識別開始》


 《……コード:KAI》


 その瞬間。


 カイの背筋に、冷たいものが走った。


 ――なぜ、俺の名前を知っている?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ