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私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第4章:神々の不味い聖域――「完璧」を焼き尽くす、死と再生のスペシャリテ

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第51話:神域晩餐会、開宴。エリアナ、白銀の皿に『死』を盛り付ける

「……おーっほっほっほ! 随分と派手な照明ですこと。これでは、食材の繊細な色が飛んでしまいますわよ?」


 神域大図書館の静寂から一転、私の目の前に広がったのは、眩いばかりの「光の円形闘技場」でした。

 宙に浮く無数の水晶のテーブル。そこに座すのは、天界を司る数千の神々。

 彼らは一様に、退屈を極めた瞳で私を見下ろしていました。……まるで、これから行われるのが、処刑か、あるいは退屈な余興であると決めつけているかのように。


「……エリアナ。緊張しているか?」


 隣に立つゼフィロス様が、私の肩を力強く抱き寄せました。

 彼の右腕から漏れ出す「虚無」の波動が、会場を満たす神聖な光を侵食し、私たちの周囲にだけ、深い夜のような静寂を創り出しています。


「陛下。……私をどなただと思って? ……あんなに美味しそうな『お客様』を前にして、緊張などしていられませんわ」


 私が扇で口元を隠し、不敵に笑ったその時。

 会場の中心、黄金の調理台に、十二枚の翼を翻してヴィクトリア様が降臨しました。

 彼女が手にする『神のスパイス入れ』からは、地上のあらゆる生命力を吸い取って精製されたような、暴力的なまでの黄金の輝きが溢れ出しています。


『さあ、始めましょうか。……エリアナ・ヴェスタ。地上の「味」という名のゴミを、私がこの完璧な調律で、神域の燃料へと浄化してあげるわ!』


 ヴィクトリア様が指を鳴らした瞬間、彼女の前の鍋から、空を裂くような芳醇な香りが放たれました。

 それは、嗅ぐだけで思考が止まり、ただ彼女を崇めたくなるような、麻薬的で完璧な「美の極致」。

 神々が次々と立ち上がり、恍惚とした表情でその香りを吸い込み始めます。


『第一皿目――「永遠の静止」。……食べて、エリアナ。貴女のその騒がしい命が、いかに醜いかを知るがいいわ!』


 給仕役の天使たちが、私の前にクリスタルの皿を運びました。

 そこに載っているのは、一滴の揺らぎもない、完璧な透明度のゼリー。

 

 一口含んだ瞬間。

 私の舌から感覚が消え、心臓の鼓動が「不必要」だと告げられたような、冷たい虚無が全身を駆け抜けました。

 ……確かに、美味しい。完璧に計算され、不純物がない。

 けれど、それは「食べている自分」さえも消し去ろうとする、傲慢な拒絶の味。


「……おーっほっほ! まあ、なんて退屈。……陛下、これ、まるでお葬式の後の片付けのような味がいたしますわ」


「フン。……食う価値もないな。……エリアナ、お前の『毒』を奴らに教えてやれ」


 ゼフィロス様が不敵な笑みを浮かべ、私の木ベラへとその右手を重ねました。

 初代聖女リヴィア様が遺した禁断のレシピ。

 

 私は、天界の食材『超新星の残滓』を、ゼフィロス様の『虚無』という名の火で、一気に焼き上げました。

 

 ジュゥゥゥッ!!

 

 ヴィクトリア様の完璧な香りを引き裂くように、焦げた魔力と、血を吐くような強烈な「生命の叫び」が、会場全体を揺るがしました。

 

「見ていなさい、神々よ。……貴方たちが忘れてしまった、『終わり』があるからこそ輝く、究極の瞬間を! ――絶望の骨格、再生のスープ(メメント・モリ・コンソメ)!!」


 私が木ベラを振るうと、真っ黒な闇に包まれた、血のように紅いスープが神々のテーブルへと放たれました。

 

 そのスープの中央には、ゼフィロス様の虚無を凝縮して作られた、一欠片の「黒い骨」が沈んでいます。

 

『な……っ!? 料理に「死」を盛り付けるだなんて、正気なの!?』


 ヴィクトリア様が絶叫しました。

 けれど、最も位の高い神の一人が、恐る恐るそのスープを一口運んだ瞬間――。

 

 会場のすべての光が、一瞬だけ消えました。

 

「……ああ……。……私は……今……死にたいほどに、美味しい……」


 スープを飲んだ神が、顔を真っ青にしてその場に倒れ込みました。

 呼吸が止まり、魔力が霧散する。……まるで、魂そのものが「死」という絶望に真っ逆さまに落ちていったかのように。

 

 どよめきが走ります。

 「毒を盛ったのか!?」「皇妃が神を殺したぞ!」

 騎士たちが剣を抜き、天使たちが錫杖を構える中、私は倒れた神を見つめて、静かに扇を広げました。


「おーっほっほっほ! 慌てないでくださいまし。……今、その絶望の底で、彼は『本当の生』を、煮込み始めているところですわ」


 刹那。

 倒れていた神の身体から、かつてないほどの、黄金の木ベラさえも凌駕するような「爆発的な光」が溢れ出しました。

 

 それは、ヴィクトリア様が与える「静止した光」ではなく、

 死を予感した魂が、生に執着し、限界を超えて輝きを放つ、生命の爆発。


「……美味い。……今まで食べてきたものが、すべて砂に思えるほどだ……。……お代わりを……お代わりを、この私に!!」


 死の淵から蘇った神が、狂ったように叫び、私の木ベラに縋り付こうとしました。

 

 完璧な神域が、エリアナの「死」を隠し味にした一皿によって、かつてない狂乱へと叩き落とされたのでした。

最後まで読んでくださって、ありがとうございますわ!


神域晩餐会、一皿目から「神を仮死状態に陥らせる」だなんて……。

おーっほっほっほ! まさに「絶望の先の美味」、エリアナ様にしか許されない神殺しのレシピですわね!

ヴィクトリア様の「永遠の静止」を、一瞬で「生命の爆発」に変えてしまう快感、

わたくしも書いていて最高に高揚いたしましたわ。


でも、陛下。

エリアナ様の「死のスープ」の骨格になったのが、ご自分の魔力だと知って、

少しだけ誇らしげに、そして独占欲たっぷりに笑う姿……。

もう、この二人が並ぶと、天界さえもただの厨房に見えてしまいますわ。


次回、第52話。

「ヴィクトリアの逆襲:魂を焦がす神のメインディッシュ」。

負けを認めない女神が、ついに禁断の「地上の記憶」を食材として投入!?

エリアナ様の木ベラが、愛する人々の記憶を守るために立ち上がりますわよ!


続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、エリアナ様の次なる盛り付けを応援してくださいませね!

あなたの応援が、神々の魂を呼び戻す「最高のスパイス」になるのですから!

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