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私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第4章:神々の不味い聖域――「完璧」を焼き尽くす、死と再生のスペシャリテ

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第49話:禁断の神域食材:ゼフィロスの闇をキャラメリゼにする方法

「……陛下。そんなに怖い顔で私の木ベラを睨まないでくださいまし。火加減が狂ってしまいますわ」


 天界に用意された賓客用の離宮。

 庭園に咲き乱れる「光の果実」を前に、私は木ベラを構えて苦笑しました。隣に立つゼフィロス様からは、いまだに宮殿での嫉妬を引きずっているのか、周囲の空気を物理的に削り取るほどの「虚無」が漏れ出しています。


「……あのような、お前を『食いたい』などとのたまう女狐に、料理を出す必要などない。今すぐこの天界ごと、虚無の底へ叩き落としてやりたいのだが」


「おーっほっほっほ! それでは私の名が廃りますわ。……陛下、貴方のその溢れんばかりの『情熱(ころ意)』。……少し、私の隠し味として分けていただけないかしら?」


 私はゼフィロス様の漆黒の右腕に、自分の手をそっと重ねました。

 触れた瞬間、肌を焼くような虚無の波動が伝わってきますが、私はそれを祝福の光で優しく包み込み、強引に「熱」へと変換しました。


「エリアナ……。私の闇は、全てを消し去る毒だぞ。お前の料理まで無に帰してしまう」


「いいえ。……陛下の『無』は、不純物を一切許さない、究極の『強火』ですわ。……これこそが、あのヴィクトリア様の完璧すぎるスパイスを打ち破る、唯一の火種になりますの」


 私は、天界の最高級食材『凍てついた超新星の核』を、水晶の鍋に放り込みました。

 地上の火では解けることすらない、絶対零度の食材。

 私は黄金の木ベラを掲げ、そこにゼフィロス様の右腕から引き出した「漆黒の虚無」を、糸を紡ぐようにして絡め取りました。


「おーっほっほ! さあ、見ていなさい。……陛下の闇を、甘く、香ばしく、絶望するほど美味しく煮詰めて差し上げますわ! ――虚無の焦がしノワール・キャラメリゼ!!」


 木ベラを鍋に突き立て、かき混ぜると同時に、黄金と漆黒の魔力が火花を散らしました。

 

 シュゥゥゥッ!! という、空間そのものが蒸発する凄まじい音が響きます。

 陛下の「消滅させる力」が、超新星の核が持つ「爆発的なエネルギー」と衝突し、私の「祝福」がその反動を全て「味の深み」へと押し込めていく――。


 鍋の中から、ドロリとした漆黒の液体が溢れ出しました。

 それは光を吸い込むほど黒いのに、どこか宝石のような艶を持ち、鼻腔を突くのは、魂を蕩かすような、あまりにも濃厚で甘美な「焦がした魔力の香り」。


「……信じられん。……私の、この呪われた力が……これほどまでに、芳醇な香りを放つというのか」


 ゼフィロス様が、その漆黒の蜜を信じられないものを見るような目で見つめました。

 私はその蜜を木ベラの先で掬い、彼の唇へと運びました。


「召し上がれ、陛下。……貴方が私を愛するあまりに世界を壊したくなるその衝動を、最高級のスイーツに仕立てましたわ」


 彼がそれを一口含んだ瞬間。

 周囲の空気が、彼の歓喜に呼応して震えました。

 

「……ああ。……お前の手にかかれば、地獄もまた至福の食卓になるのだな。……エリアナ、やはりお前は、誰の手にも渡さん。神が望もうと、私が許さん」


 ゼフィロス様が荒々しく私の腰を抱き寄せ、その唇を重ねてきました。

 虚無の蜜の味がする、深く、重い口づけ。

 二人の魔力が、この調理を通じて、これまで以上に濃密に溶け合い、神域の理を内側から食い破るような巨大なうねりとなって膨れ上がっていきます。


 しかし。

 その高揚感の最中。私の手に握られた黄金の木ベラが、これまでにないほど激しく熱を持ち始めました。


(……え? この感覚は……)


 脳内に、私のものではない、けれど酷く聞き馴染みのある「高笑い」が響きました。

 

『――あら、随分と面白い火の使い方をすること。……でも、そんな甘いソースだけじゃ、あの女のスパイスは倒せないわよ?』


 その声は、離宮のさらに奥。天界の記録を司る『神域大図書館』の深淵から響いてきたようでした。

 

「……エリアナ、どうした」


「……いえ。……陛下、どうやら、私の木ベラ(相棒)の『ご先祖様』が、少しばかりお喋りがしたくなったようですわ」


 私は、木ベラが指し示す暗闇の先を見つめました。

 神々の晩餐会まで、あと二日。

 エリアナは、自らの祝福のルーツ――初代の木ベラの持ち主が遺した「禁断のレシピ」に触れるため、天界の闇へと一歩を踏み出すのでした。

最後まで読んでくださって、ありがとうございますわ!


陛下の「虚無の魔力」をキャラメリゼにしてしまうエリアナ様……!

おーっほっほっほ! 絶望の力を「焦がした魔力の香り」に変えるだなんて、

まさに愛の錬金術師ですわね。

陛下の「毒味」の後の甘い抱擁、わたくし、胸が焼けてしまいそうですわ!


でも、最後に聞こえてきた謎の声。

木ベラのご先祖様……!?

どうやらエリアナ様の持つ祝福には、天界の神々も知らない「真の歴史」が隠されているようですわ。


次回、第50話。

「神域大図書館の亡霊:初代美食聖女が教える『神を黙らせる隠し味』」。

ついに明かされる木ベラの秘密!

そして、決戦に向けたエリアナ様の「最後の一振り」が完成しますわよ!


続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、エリアナ様のルーツ探しを応援してくださいませね!

あなたの応援が、図書館の闇を照らす「最高の隠し味」になるのですから!

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