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私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第4章:神々の不味い聖域――「完璧」を焼き尽くす、死と再生のスペシャリテ

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第48話:陛下、神様相手に嫉妬して世界を壊さないでくださいまし!

「……まあ。そんなに瞳を輝かせて私を見つめて、何かの『隠し味』でも探していらっしゃいますの?」


 私は黄金の木ベラを軽く払い、十二枚の黄金の翼を持つ女神――ヴィクトリア様を真っ向から見据えました。

 彼女の瞳は、美食家が最高級の肉を品定めするような、不気味な熱を帯びていました。その白く細い指先が、私の頬に触れようと伸びてきた、その時です。


「――失せろ。その指がお前に必要ないなら、私が今すぐ根元から虚無に変えてやろう」


 ズォォォン!! という、空間が悲鳴を上げるような音と共に、ゼフィロス様の漆黒の腕が私の前に割り込みました。

 彼の右腕から溢れ出す『神殺し』の魔力が、水晶の宮殿の床に深い亀裂を走らせます。天界の清浄な空気が、彼の怒りによって赤黒く焼け焦げていく。


「あら、怖いわね。地上の皇帝陛下は、これほどまでに独占欲がお強いのかしら?」


 ヴィクトリア様は、陛下の殺気を受けても動じることなく、鈴を転がすような声で笑いました。


「無理もないわ。……エリアナ、貴女の魂は、この天界にあるどんな宝玉よりも美味しそうな輝きを放っているもの。その木ベラ、その祝福、そして貴女の『愛』という名のスパイス……。ああ、私のスパイス入れに貴女を閉じ込めて、永遠に抽出していたいくらいだわ!」


「おーっほっほっほ! ミラベル様といい、ヴィクトリア様といい、神域の方は随分と『略奪』がお好きなようですわね。ですが残念。私は陛下専用の専属料理人。貴女のような、お口の寂しい神様に差し上げるメニューはございませんわ」


 私は扇を広げ、ヴィクトリア様の鼻先でパサリと閉じました。

 すると、彼女は手に持っていた宝石付きのスパイス入れを、弄ぶように回しました。


「なら、試してみる? 私の『神のスパイス』と、貴女の『地上の愛』。……どちらが神々の乾いた喉を潤せるか」


 彼女がスパイス入れの蓋を僅かに開けた瞬間、宮殿内に暴力的なまでの「輝き」が充満しました。

 それは香りではなく、概念。

 嗅ぐだけで全ての苦しみが消え、思考が停止するような、抗いがたい『強制的な幸福』の波動。

 ひれ伏していた神々が、よだれを垂らし、恍惚とした表情で彼女に縋り付こうと手を伸ばします。


「これが、神域を支配する絶対の調律よ。……これさえあれば、貴女が作ったような『雑味のある喜び』なんて、誰も見向きもしなくなるわ」


 私はその輝きを正面から浴びながら、ふふ、と喉の奥で笑いました。


「……陛下、少し塩を貸してくださる?」


「塩? ああ、私の右腕の中に蓄えてある、星の塵を精製したやつか」


 ゼフィロス様が右手をかざすと、漆黒の空間から、ただの白い粒が数粒、私の手のひらに落ちました。

 私はそれを、ヴィクトリア様の「絶対のスパイス」が放つ光の中へ、無造作に投げ込みました。


 ――パチッ。


 小さな、火花のような音がしました。

 直後、宮殿を支配していた完璧な光が、まるでガラスが割れるように粉々に砕け散りました。

 恍惚としていた神々がハッと我に返り、自分の浅ましい姿に顔を赤らめます。


「な……!? 私の神糧に、何を混ぜたの!?」


「おーっほっほっほ! ただの『お塩』ですわよ。……ヴィクトリア様、貴女のスパイスは完璧すぎて、まるで『終わり』が見えているスープのようですわ。……お塩が一つまみあるだけで、その完璧さは脆くも崩れ去る。……変化を拒む味に、未来なんてございませんのよ?」


 ヴィクトリア様の顔から、笑みが消えました。

 十二枚の黄金の翼が激しく羽ばたき、天界の空が、彼女の怒りに呼応して黄金の炎に包まれました。


「……面白いわ、人間。……その高慢な口、二度とお料理を語れないように縫い合わせてあげる」


 彼女は空座へと舞い戻り、天界全土に響き渡る声で宣告しました。


「集いなさい、飢えた神々よ! 三日後、この宮殿にて『神域晩餐会ゴッド・フィースト』を開催するわ! ……エリアナ・ヴェスタ。貴女が負けたら、貴女の魂を私のスープの出汁だしにする。……いいわね?」


「ええ、受けて立ちますわ。……ただし、私が勝ったら、貴女のその『スパイス入れ』を、私の厨房の予備の塩入れにさせてもらいますわよ!」


 宣戦布告。

 宮殿を後にする私たちの背後では、ゼフィロス様の魔力が、嫉妬と怒りで天界の柱を数本へし折っていました。


「エリアナ……。やはり天界ごと消した方が早いのではないか。……あの女、お前を『食べたい』と言ったぞ」


「おーっほっほ! 陛下、大丈夫ですわ。……私の味を知ったら、あの方、自分こそが『食べられる側』だったことに気づくはずですから!」


 神々の晩餐会。

 エリアナの木ベラが、ついに神々の理を根底から書き換えるための、究極の調理を開始しようとしていたのです。

最後まで読んでくださって、ありがとうございますわ!


女神ヴィクトリア様の「強制的な幸福のスパイス」を、ただのお塩で粉砕するエリアナ様……。

おーっほっほっほ! 「完璧すぎて未来がない」だなんて、

まさに美食皇妃にしか言えない最高の毒舌ですわね!

ゼフィロス様の「嫉妬で天界の柱を折る」暴走っぷりも、

愛の重さが物理法則を超えていて素敵でしたわ。


でも、ついに決まってしまった「神域晩餐会」。

負ければ魂を出汁にされるという、究極のデスマッチ!

エリアナ様は、神様たちの肥えた舌をどう黙らせるつもりかしら?


次回、第49話。

「禁断の神域食材:ゼフィロスの闇をキャラメリゼにする方法」。

えっ、陛下の魔力を隠し味に!?

二人の愛が混ざり合う、前代未聞の調理シーンが始まりますわよ!


続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、エリアナ様の新しいレシピに星を添えてくださいませね!

あなたの応援が、女神を黙らせる「至高の隠し味」になるのですから!

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