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私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第3章:美食皇妃の戴冠――世界から「満足」が消えても、私の食卓は不滅です

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第44話:世界を喰らうミラベル。エリアナ、究極の『空腹』を調理する

「……あははは! あははははは! 美味しい、もっと頂戴エリアナ! 貴女の熱も、その男の闇も、全部私の喉に流し込んであげる!!」


 それはもう、人の形を保ってはいませんでした。

 『神の心臓』から溢れ出した黄金の蜜を全身に纏ったミラベル様は、地下迷宮の天井を突き破り、数十メートルもの巨大な「半透明の器」へと変貌していました。

 

 彼女の身体は、宇宙を切り取ったような虚無の空洞。

 周囲の瓦礫、空気、そして光までもが、彼女の開いた巨大な「口」へと吸い込まれていきます。ガストロノミアの街が、彼女の呼吸ひとつで砂に還り、その魂を吸い取られていく。


「……陛下、見てご覧なさい。あの方はもう、お客様ですらありませんわ」


 私は、ゼフィロス様の漆黒の剣が作る防壁の中で、黄金の木ベラを強く握り締めました。

 

「おーっほっほっほ! ミラベル様。……食べても食べても満たされないのは、貴女に『感謝』という隠し味が足りないからですわ。……そんなに食べたいなら、私の祝福を、胃袋が破れるまで詰め込んで差し上げますわよ!」


「エリアナ、準備はいいか。……私の虚無を、お前のための『火』として全て焚べよう。……この世界から飢えを消し去る、最後の一皿を焼き上げろ」


 ゼフィロス様が私の背後から右腕を伸ばし、漆黒の剣を私の木ベラへと重ねました。

 

 闇の虚無が、私の黄金の光と溶け合い、見たこともないほど濃密な「白銀の魔力」へと昇華されます。

 それは、全てを消し去る力と、全てを生み出す力が一つになった、創世の輝き。


「セリーナさん、ハンスさん! 国民の皆様に伝えなさい! ……今から、この国始まって以来の、最大級の『お代わり』が始まりますわよ!」


 私は空高く舞い上がりました。

 巨大なミラベル様を見下ろしながら、木ベラを大釜をかき混ぜるように大きく旋回させます。


「消えない飢餓を、永遠の満腹に。……奪うだけの口を、謳歌する舌に。……飲み込みなさい、私の魂を込めた『最後の隠し味』を! ――全界の至福晩餐コスミック・グランド・メニュー!!」


 木ベラの先から、白銀の濁流が放たれました。

 

 それは魔力の奔流などではありません。

 かつてエリアナが振る舞ったスープの温もり、パンの香ばしさ、肉料理の力強さ……この世界に存在するあらゆる「美味しい」という概念が凝縮された、文字通りの『満足の塊』。


「……ぁ、……あが、あああああ!? なに、これ……重い、重すぎる……っ!?」


 ミラベル様の虚無の身体が、白銀の輝きで瞬く間に満たされていきました。

 どれだけ飲み込んでも消えなかった彼女の「空腹」が、エリアナの圧倒的な『満足』によって、内側から強引に押し広げられていきます。


「おーっほっほっほ! まだお代わりはありますわよ? ……素材の旨味を、魂の髄まで味わい尽くしなさいな!」


 私が木ベラを振り下ろすたびに、さらなる満足の波動がミラベル様を撃ち抜きました。

 

 透明だった彼女の身体が、琥珀色に、そして黄金色に輝き、ついにはその「器」の限界を超えました。

 彼女の瞳に、恐怖ではない、初めての「味」に対する驚愕が宿ります。


「……あ、……甘い……。……温かくて……、もう、……何も、欲しくない……」


 ドォォォォォォン!!

 

 ミラベル様の巨躯が、内側から溢れ出した『満足の光』によって爆散しました。

 

 その光は地下から噴き出し、ガストロノミアの街を、そして海を越えて世界中へと広がっていきました。

 砂の味しかしなくなっていた食料に、瞬時に瑞々しい味が戻り。

 絶望していた人々の舌に、生きる喜びという名の熱が宿る。

 

 世界から「概念的な飢え」が消滅した瞬間でした。


 崩壊した地下迷宮の跡地。

 黄金の粉雪が舞う中、私はゼフィロス様の腕に抱かれ、静かに地面に降りました。

 目の前には、力を使い果たし、泥にまみれて座り込むミラベル様の姿がありました。

 

 彼女はもう、化け物ではありません。

 ただの、お腹がいっぱいになって眠たげな、小さな少女の姿に戻っていました。


「……負け、たわ。……エリアナ……。……貴女の料理、……不味いって、言いたかったのに……。……美味しすぎて……涙が、止まらないの……」


「おーっほっほっほ! 当然ですわ。……私の料理を残して生き残れるほど、世界は甘くありませんもの」


 私は、ぐったりとした彼女に、そっと自慢のハンカチを投げ渡しました。


 空を見上げれば、ガストロノミアの純白の空が割れ、帝国の艦隊が、そして世界中の国々からの使節団が、この「奇跡」を目撃して集まってくるのが見えました。

 

 陛下が私の額に優しく口づけをし、その低い声で囁きました。

 

「……終わったな。……いや、始まるのか。……エリアナ、見てみろ。……世界が、お前を呼んでいる」


 瓦礫の中から立ち上がったガストロノミアの民たちが、そして駆けつけた他国の使者たちが、一斉に私の前で膝をつきました。

 

 それは、一国の令嬢に対する礼ではありません。

 世界を飢えから救った、唯一無二の「美食の女神」に対する、最大級の臣従。

 

 エリアナ・ヴェスタ。

 追放された不運の令嬢の物語は、今、全人類が跪く『美食皇妃』の戴冠式へと、その黄金の扉を開いたのでした。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございますわ!


「無限の満足」で敵を爆散させるエリアナ様……!

おーっほっほっほ! 食べきれないほどの至福を喉に詰め込まれるなんて、

料理人としてこれ以上の「ざまぁ」はありませんわね!

ミラベル様の「もう何も欲しくない」という台詞、最高の敗北宣言でしたわ。


そして、ついに世界から飢えが消え、エリアナ様が「美食皇妃」として望まれる瞬間に……。

陛下が彼女を見つめる誇らしげな眼差し、わたくしまで胸が熱くなってしまいましたわ!


次回、第3章・第2部、最終話。

「全人類が跪く戴冠式:エリアナ、世界最高の『おもてなし』を宣言する」。

ついに訪れる、最高に華やかで、最高に甘美な戴冠式。

エリアナ様が世界の頂点で何を語り、陛下とどんな「誓いのキス」を交わすのか……。


これまでの物語の集大成、どうぞその目で見届けてくださいませ!

続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、エリアナ様の戴冠に花を添えてくださいませね!

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