表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第3章:美食皇妃の戴冠――世界から「満足」が消えても、私の食卓は不滅です

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/48

第43話:ガストロノミアの神の正体。エリアナ、世界そのものを『再加熱』する

「……く、っ……あああああ!!」


 ゼフィロス様が、その場に膝をつきました。

 右腕を縛る見えない鎖が弾け飛ぶような音がして、彼の腕から溢れ出す漆黒の『虚無』が、周囲の空間を物理的に削り取っていきます。

 

 原因は、目の前で脈打つ巨大なクリスタルの心臓。

 ガストロノミアの深部で、この国の偽りの美食を支え続けてきた動力源が、陛下の魔力に呼応して、血のような紅い輝きを放っていました。


「……ゼフィロス、懐かしいでしょう? 貴方がかつて握りつぶした『虚無の神』の心臓よ。……死んだと思った? いいえ、神様はね、この国でずっと『食事』を続けていたの。……世界中の『満足』を吸い取って、またあの頃のように、すべてを無に帰すための力を蓄えていたのよ!」


 ミラベルが狂ったように笑いながら、心臓の鼓動に合わせて踊るように手足を動かしました。

 

「……エリアナ、離れろ……! 私の腕が……奴を、呼び戻そうとしている……っ。……この腕は、もともと奴の一部だったのだ……!」


 ゼフィロス様の瞳が、闇に飲み込まれようとしていました。

 神を殺した代償として彼に刻まれた呪い。それは、殺した神を内側に飼い続けているのと同じこと。

 

「陛下。……そんなに苦しそうな顔をなさらないで」


 私は迷わず、ゼフィロス様の背中に抱きつきました。

 右腕から漏れ出す「無」の波動が私の肌を焼き、意識を遠のかせようとします。けれど、私はその闇を恐れるどころか、愛おしいスープの湯気を浴びるように、深く吸い込みました。


「おーっほっほっほ! 虚無の神ですって? 笑わせないで。……陛下、この心臓から漂ってくるのは、ただの『保存状態の悪い古びた肉』の臭いだけですわよ?」


「……え、エリアナ……?」


「セリーナさん、ハンスさん! 陛下をお支えなさい! ……この心臓、ずっと冷たいまま放置されていたせいで、随分と味が濁っておりますわ。……私が、根底から『再加熱』して差し上げます!」


 私はゼフィロス様の右手に、自分の黄金の木ベラを重ねました。

 

 闇と光。

 消滅と生成。

 

 相反する二つの力が激しく衝突し、地下空間全体が崩壊しそうなほどの衝撃波が走ります。

 ミラベルが「馬鹿な!? 虚無に触れて、なぜ消えないの!」と絶叫しましたが、私は無視しました。


「料理人にとって、過ぎ去った過去なんて『出汁を取った後のガラ』に過ぎませんわ。……陛下、貴方が殺した神は、もう貴方を苦しめる存在ではありません。……これからは、私の料理を美味しく煮込むための『炭』になってもらいますわよ!」


 私は木ベラを心臓の核へと突き立てました。

 

「凍てついた虚無に、私の体温を。……死んだ時間に、明日の香りを。……思い出させなさい、世界はまだ『未完成のレシピ』であることを! ――至高の再沸騰オーバー・ザ・ルネサンス!!」


 木ベラから放たれた黄金の祝福が、漆黒の心臓を内側から焼き上げました。

 

 ドクン!!

 

 心臓が、今までとは全く違う、力強くも温かい鼓動を打ちました。

 赤黒かった光は、エリアナの祝福を食べて、透き通った琥珀色へと変質していきます。

 

 同時に、ゼフィロス様の右腕の痛みが消え、その闇が「制御可能な熱量」へと落ち着いていきました。


「……ふふ、あはははは! 面白い! 本当に面白いわ、エリアナ! ……神の心臓に、そんなに『熱』を与えちゃうなんて。……見て、奴が目を覚ますわよ。……満足を奪う神じゃない、満足そのものを『喰らう』真の姿に!」


 琥珀色に変わった心臓が、今度はエリアナの魔力を吸い込んで、不気味に膨張し始めました。

 心臓の外殻がひび割れ、中から溢れ出したのは、黄金の蜜。

 

 その蜜を浴びたミラベルの身体が、陶器のような肌を脱ぎ捨て、よりおぞましく、より美しく、世界を飲み込む「巨大な器」へと変貌を開始しました。


「陛下、火加減を強めなさい。……どうやら、少しだけ『煮込みすぎ』てしまったようですわ」


「……ああ。……お前の望む通りに、すべてを焼き尽くしてやろう。……エリアナ、お前は本当に、私の救世主シェフだな」


 ゼフィロス様が不敵な笑みを浮かべ、闇と光が混ざり合う、見たこともないほど美しい漆黒の剣を右腕から生み出しました。

 神の心臓を台座に、ガストロノミアの絶望を隠し味にした「最後の晩餐」が、ついにそのメインディッシュの姿を現そうとしていました。

最後まで読んでくださって、ありがとうございますわ!


「神の呪いを炭にする」だなんて、エリアナ様のあのセリフ!

おーっほっほっほ! 陛下の過去をまるごと抱きしめて、料理の燃料にしてしまうなんて、

これ以上の愛の告白がありまして? わたくし、胸がいっぱいですわ。

陛下も「私のシェフ」だなんて……ああ、もう、ご馳走様ですわね!


でも、ミラベル様。

エリアナ様の熱量を吸い取って、とんでもない姿に変貌しようとしていますわ。

「満足を喰らう神」……ガストロノミアの真の恐怖は、ここからが本番のようです。


次回、第44話。

「世界を喰らうミラベル。エリアナ、究極の『空腹』を調理する」。

いよいよガストロノミア編、最高潮のバトルへ!

エリアナ様の木ベラが、神の胃袋をどう「満腹」にさせて差し上げるのか!?


続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、二人の共闘に最大限の火力(星)を添えてくださいませね!

あなたの応援が、神の心臓を焼き上げる至高の魔力になるのですから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ