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私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第3章:美食皇妃の戴冠――世界から「満足」が消えても、私の食卓は不滅です

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第36話:海の向こうから届いた、飢えた神々への招待状

皆様、大変長らくお待たせいたしましたわ!

エリアナ様と陛下の物語、ついに「新章」の幕開けです!


一度完結を迎えたことで、わたくしもじっくりとエリアナ様の「次なるメニュー」を練り上げることができましたわ。

王国を飛び出し、舞台はいよいよ全大陸、そして海の向こうの美食帝国へ……。

今まで以上に「おーっほっほ!」と笑い飛ばす、最高に高慢で華麗な無双劇をお約束いたします!

黄金の粉雪が舞ったあの日から、帝国はかつてない平和と豊穣を享受していました。

 ですが、本当の地獄というものは、満腹の絶頂にこそ忍び寄るものですわ。


「……陛下、あれをご覧になって。あんなに美しい船が、まるで幽霊のように彷徨っておりますわよ」


 帝都の誇る大港。

 新しく就任した「美食皇妃」としての初公務――新造船の進水式に臨んでいた私は、水平線の向こうから現れた異様な影に、持っていた扇を止めました。


 それは、白銀と宝石で飾られた、見たこともないほど豪華な三胴船でした。

 帆には「西の果て」にあるとされる伝説の美食大国――『ガストロノミア聖教国』の紋章。

 けれど、その船からは生命の気配が一切なく、ただ不気味なほどの静寂と、鼻を突く「焦げ付いた鉄」の臭いだけが風に乗って届いていました。


「……エリアナ、私の後ろにいろ。……この船、中身が『から』だ」


 ゼフィロス様が私の腰を引き寄せ、右手の包帯を軽く緩めました。

 彼の「虚無」の魔力が、船全体を包む不吉な黒い霧を察知して、激しく拍動しています。


 接岸したその船の甲板へ、帝国の騎士たちが慎重に足を踏み入れました。

 直後、ベテランの騎士たちが一斉に顔を背け、中にはその場に崩れ落ちる者さえいました。


「報告を! 一体何があったのですの!?」


「は……っ、……信じられません! 船内には、山のような金貨と、最高級の保存食が……肉も、ワインも、腐らずに山ほど積まれています! なのに……っ!」


 騎士が震える指で指し示した先。

 そこには、豪華な晩餐会の席についたまま動かなくなった、数百人の乗員たちの姿がありました。

 彼らは皆、目の前に並んだ贅沢な料理を一切口にした形跡がなく――自らの指を噛み切り、壁を食いちぎろうとしたまま、凄まじい形相で「餓死」していたのです。


「食べ物が目の前にあるのに、飢え死に……? おーっほっほっほ! 冗談にしては、あまりにも悪趣味ですわね」


 私は木ベラを手に、甲板へと降りました。

 ゼフィロス様が「ならん」と止めるのを、「料理人として、この『味付け』の正体を見極めなくてはなりませんわ」と笑顔で振り切り、一人の遺体に歩み寄りました。


 その遺体の口元から、一筋の「黒い煙」がゆらりと立ち上りました。

 あの日、王国の瓦礫から消えていった、あの不吉な残滓。


『……エリアナ……。……お前の「祝福」は、まだ足りない……』


 煙が、人の形を成して囁きました。

 それはジュリアンの声でも、フィオナの声でもありません。もっと古く、もっと根源的な、世界そのものの「飢餓」が形を得たような、おぞましい響き。


『海の向こうでは……神々が、本当の「味」を知りたがっている。……お前の肉を、お前の祝福を、最上のスパイスとして捧げに来い。……さもなくば、この世界から「満足」という概念をすべて喰らい尽くしてやろう……』


 シュゥゥゥ……と、煙が船内の食料に触れた瞬間。

 山積みの肉も、黄金のワインも、一瞬にして「砂」へと変わり果てました。

 それは魔法による腐敗ではありません。……この世界の理から「食の喜び」という情報だけを抜き取ったような、究極の絶望。


「……おーっほっほっほ! 面白いことを仰いますわね、名もなき飽食の怪物さん」


 私は木ベラを一振りし、黄金の光でその煙を散らしました。

 

「私の料理を『スパイス』にするですって? ……いいえ、貴方たちのその空虚な胃袋に、私が完膚なきまでの『満腹ぜつぼう』を詰め込んで差し上げますわ!」


 ゼフィロス様が私の隣に立ち、その漆黒の右腕で船のメインマストを握りつぶしました。

 彼の瞳には、私を連れ去ろうとする新勢力への、苛烈な破壊衝動が渦巻いています。


「……決まりだな、エリアナ。……ハエどもが、世界規模の皿を持って集まってきたようだ。……すべてを砕き、お前のための『薪』にしてやろう」


 王国という小さな鍋の争いは終わりました。

 ここからは、世界という巨大な食卓を、エリアナの祝福で塗り替える、最も贅沢で苛烈な『美食大戦』の開幕。

 海の向こうから届いたのは、死の臭いがする、神々への招待状だったのです。

再開1話目、いかがでしたかしら?

「食べ物があるのに餓死する」……なんて不吉な、けれどエリアナ様の木ベラがうずく最高の事件ですわね!


これからエリアナ様がどのように世界を「調理」していくのか……。

その続きを綴るためのエネルギーは、ひとえに皆様の声援にかかっておりますの!


「再開待ってた!」「もっと読みたい!」と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、彼女の新しい門出を応援してくださいませ。

皆様の熱意が、エリアナ様の木ベラにさらなる『黄金の焼き色』を宿すのですから!

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