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私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第2章:復讐は黄金の焼き加減で――腐敗した王国を焼き尽くす断罪のフルコース

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第33話:エリアナの逆襲:呪いのディナーを、祝福のデザートに

「……ドクン、ドクン、と。まあ、なんて不快な鼓動かしら」


 周囲を見渡せば、そこにはもはや大理石の床も、高くそびえる柱もありません。

 視界のすべてを覆い尽くしているのは、赤黒く脈打つ肉壁と、そこから滴り落ちる粘り気のある漆黒の粘液。天井からは巨大な血管が鍾乳石のように垂れ下がり、私とゼフィロス様を、じわじわと溶解させようとする熱気が部屋を満たしていました。


 私たちは今、ジュリアン様……いいえ、魔王の種を飲み込み、この城そのものと化した『巨大な胃袋』の中にいました。


『あははは! エリアナ、どうだい? 私の体温は。お前の祝福、お前の魂、すべてが私の血肉に溶けていく……。これこそが最高の愛、最高の晩餐だろう!?』


 壁のあちこちに浮かび上がったジュリアン様の「瞳」が一斉にこちらを向き、歓喜に歪んだ声が空間を震わせます。

 足元から溢れ出した漆黒の泥が、私のドレスの裾を侵食しようと這い寄ってきました。


「エリアナ、私の背後にいろ。……この肉壁ごと、虚無で抉り取ってやる」


 ゼフィロス様が右手の包帯を完全に解き放ち、渦巻く闇を解放しようとしました。

 けれど、私はそっと彼の右手に自分の手を重ね、制しました。


「お待ちなさい、陛下。……ただ壊すだけでは、せっかくの『素材』が台無しになってしまいますわ。……おーっほっほっほ! ジュリアン殿下。私を『メインディッシュ』に選んだこと、後悔させて差し上げますわよ」


「……エリアナ?」


「陛下。……この場所、よく見てくださいまし。……壁は熱を持ち、循環は滞り、酸っぱい悪臭が充満している……。これではまるで、手入れの行き届いていない『不衛生なオーブン』ではありませんか」


 私は腰のベルトから、あの黄金の木ベラを抜き放ちました。

 木ベラは、かつてないほど激しく、料理人としての憤りに燃えるような輝きを放っています。


「料理人にとって、内側に入り込んだということは……『火加減を自由に操れる』ということと同義ですのよ!」


 私は木ベラを天高く掲げ、その先から『祝福』の光を噴水のように溢れ出させました。


「セリーナさん、ハンスさん! 陛下をお守りなさい! ……今からこの地獄の底を、私好みの『極上のキッチン』にリフォームいたしますわよ!」


 私が木ベラを一振りすると、足元に迫っていた漆黒の泥が、黄金の光に触れた瞬間にシュワシュワと音を立てて泡立ち始めました。

 腐敗の悪臭が、一瞬にして、甘酸っぱい「木苺のソース」のような香りに書き換えられていきます。


「な……っ、何を……!? 私の消化液が、変わっていく……!?」


 ジュリアン様の悲鳴。

 私は構わず、脈打つ肉壁に直接、黄金の光を帯びた木ベラを叩きつけました。


「まずは、この澱んだ血の巡りから整えて差し上げますわ! ……焦げ付いた執念を、爽やかな酸味に! 汚れた欲望を、芳醇なスパイスに! ――聖なる裏ごし(ピュリファイ・シフター)!!」


 木ベラから放たれた衝撃波が、ジュリアンの「肉体」である城壁を波打たせました。

 ドクン!! と、城全体が激しく痙攣します。

 黒ずんでいた血管が、内側から黄金の光を流し込まれ、強制的に「浄化」の熱で焼き上げられていく。


「あがっ、あああああ!! 熱い、熱いぞエリアナ! 何を……何を流し込んでいる! 私の闇が、私の力が……、勝手に『美味しく』作り替えられていく……っ!!」


「おーっほっほっほ! 当然ですわ。……貴方の内側には、フィオナが残した『出汁』がたっぷり詰まっておりますもの。……私の祝福という火を通せば、それは極上の『呪いのムース』に仕上がりますわよ!」


 絶望の場所であったはずの胃袋が、今や巨大な調理器具へと変貌していました。

 ゼフィロス様が、私のあまりにも型破りな「攻撃」を呆れたように見つめ、やがて不敵な笑みを漏らしました。


「……フン。敵を『料理』するとは聞いていたが、まさか内側から煮込むとはな。……エリアナ、火力が足りないなら私の闇を貸そう。……徹底的に、美しく焼き上げてやれ」


「ええ、陛下! ……さあ、ジュリアン殿下。仕上げに、貴方のその歪んだ『未練』を隠し味として煮詰めて差し上げますわ。……完食(消滅)するまで、スプーンを止めることは許しませんわよ!」


 黄金の炎が肉壁を焼き、腐った泥が極上のソースへと変わる。

 悲鳴を上げる怪物の中で、エリアナはかつてないほど気高く、そして残酷なまでに美しい「支配者」として、木ベラを振るい続けるのでした。


 しかし、内側からの浄化に追い詰められたジュリアン様が、最後の理性をかなぐり捨て、不気味な呪詛を吐き散らしました。


「……認めない。……まだ、私の腹は空いているんだ……。エリアナ……、お前の火が私を焼くなら……、この国の民、数万の命を『薪』にして、お前の祝福ごと飲み込んでやる……!!」


 王都全体が、不吉な紅い光に包まれました。

 ジュリアン様は、自分の苦しみを紛らわせるため、この地に捕らわれた民すべての魂を「燃料」として消費し、さらなる暴走を開始しようとしていたのです。

最後まで読んでくださって、ありがとうございますわ!


「不衛生なオーブン」ですって! おーっほっほっほ!

敵の胎内にいながら、清掃とリフォームを始めてしまうエリアナ様……。

この圧倒的な「プロの余裕」に、わたくしまで背筋が伸びる思いですわ。

ジュリアン殿下の「美味しく浄化される」という屈辱、たまりませんわね!


でも、殿下。

民の命を「薪」にするだなんて、どこまで腐れば気が済むのかしら!

そんな卑劣な火種、エリアナ様の祝福で一瞬にして「消火」して差し上げなくては。


次回、第34話。

「王国の崩壊は、一口のタルトから始まった」。

いよいよ、王国そのものの理を終わらせる、最後の一撃。

エリアナ様の木ベラが、王国の歴史という名の「重すぎる鍋」をひっくり返しますわよ!


続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、エリアナ様の火加減を応援してくださいませね!

あなたの応援が、王国の闇を焼き尽くす最強の燃料になるのですから!

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