#92
「あのぅ~~~一つ聞きたいんですけど……私達の本来の“敵”―――って、侵略軍なのデスヨネ?」
「間違いなくそうですけど。」
「じゃ、この状況ナニサ―――うちのヘレナ(達)と、ヴァーミリオン様達、一触触発ジャナイ。」
「ホントに……どうしてこうなったのでしょうね?」
“後発組”であるシェラザード達が、“先発組”であるヴァーミリオン達より後れて到着した時。
どうした事か、自分と“血の誓約”を交わした者ヘレナ達と、ヴァーミリオン達が、互いに闘志を漲ぎらせながら対峙しようとしていたのです。
けれどこれは決して望まれない状況でもあった為に、ヘレナ(達)の“我が主”である者が……
「は~~~い、集合~~~! ちょっと全員こっちに集まって~~~!」
「何やねん―――ええ処で……水差すな~~ちゅうの。」
「こいつは“ワシ”らのメンツに関わる問題でもあるのだ、例え“我が主”とて易々と聞くわけには参らん!」
「と~~は言ってもねえ~~☆ “誓約”しちゃってる手前、言う事聞かない―――てな訳にもいかないしい~~☆」
「……余と、してはだな―――」
「はぁ~~い、静かに―――黙れや、そこ。 あのさあ……“今”、大事な局面ときっての、判ってるよねえ?」
「「「「――――……。」」」」
[返事しろや―――ゴル゛ァ゛!](エルフ語)
「―――ったくぅ……あんた達4人はさておくとしてもさあ、“主”人格であるヘレナ様やあんたは、どうして止めに入ってくれなかったの……」
「ん~~~? まあ―――言ったら面倒くさいしぃ?w」
「“オレ”は、一応止めはしましたよ―――“一応”は……ね。」
「あんのさあ~~私達味方同士なんだよ? み・か・た! 面子がどうの―――と、言ってる場合ばやいじゃないんだよ? 判ってるわよねえ??」
「「「「――――……。」」」」
[返事しろや―――ゴル゛ァ゛!](エルフ語/2回目w)
「判ってるわよねえ? 二度はもう言わんぞ―――」
味方同士で争い合っている理由を聞き、さすがに呆れ返るシェラザード。
それと共に争い合っていた理由の根幹も、彼女自身を長年苦しませ悩ませてきた“身中の蟲”と同じであった為に、つい怒りに身を震わせてしまったようです。
そう言う事もあり、『ハイ、では撤収』―――と、言う事となり……あとは……
「(……。)言いたい事は山ほどあるんですけど―――少しは大人になりましょう、ヴァーミリオン様。」
「(……)はい―――」
いや……と言うより、久々に見ましたね、ニルヴァーナが叱られる光景。
昔はよくよく、向こう見ずなで猪みたいに突出ばかりしていた彼女を、よくローリエが窘めていましたが……
今のこの光景―――あの時と何一つとして変わっていない……
そう言えば王女様は、ローリエの子孫に当たるのでした、似ていて当然なのでしょうね……。
鬼人の英雄として名を馳せた者が、エルフの女性に叱られ、悄気ている……。
それは、事情の知らない者が目にしたら、ちょっとした珍事ではありました。
しかしながら、かつてヴァーミリオンのPTに籍を置いていた一人の女性エルフの事を想うと、韋駄天の内には懐かしさばかりが漂うばかりだったのです。
#92;反転攻勢の開始
* * * * * * * * * * *
それはそれとして―――ですが……
「愈々―――ですね、魔王様。」
「うむ、では始めてくれたまえ、竜吉公主。」
「はっ―――では、参ります!」
≪結跏趺坐≫
「これ―――は? 今、何をしたのですか……竜吉公主様。」
「『聖霊』に伝わる、古の秘技の一つ―――と、聞いている。」
「天使ウリエル様……」
≪結跏趺坐≫―――“地”の熾天使であるウリエルからの説明から判る通り、この“術法”は『聖霊』に古くから伝わる秘技の一つであるとされてきた。
その役割は、主として防衛のために張り巡らされる“結界法”の一つであり、『八卦陣』と呼ばれる強固で知られる結界陣を幾重にも張る事により、本来ならば侵入しやすい場所が、相手にとっての悪い場所……いわゆる『鬼門』と通じさせる事によって陣内に入り込んできた敵を誘い込みながら討ち滅ぼすと言う効果を齎せる。
そして―――ここからが反転攻勢の機会とばかりに、反撃は開始され……
「へっ―――さっきはしまんねえとこ見せたが、ここらで汚名返上させてもらうぜ!」
≪天崩連撃≫
「せめてもの露払い―――成し得ましょう!」
≪一閃:間引≫
「私も―――駆けましょう、戦場を!」
≪影殺:天道≫
未だ以て衰えを感じさせぬ、英雄達の一撃―――
『清廉の騎士リリア』は、自己が保有するスキル『晄剣』により、自己が修めた奥伎によって縦横無尽に敵を薙ぎ払い。
『神威ホホヅキ』も、相手の死角から幾つもの閃撃を見舞うものを。
また『韋駄天ノエル』は、自らが修めた忍の伎を駆使し、幾つもの分身によって血道を切り拓いたのです。
そして……やはり忘れてはならないのは、この3人を束ねていた、鬼人の英雄……
その、常勝無敗を誇った“焔”のスキルが……またも解放される―――
「フフフ―――皆、気張ってくれているようだな。 これで私も、出遅れるわけにはいかなくなったようだ。 さあ―――見せてくれよう、我が武を、存分に!」
≪マーヴェラス・ストライク;フェニックス・ペネトレイター≫
極限まで溜め込み、解放された“焔”の権能は、一つの大火球を形成し。
そこから次第に、ある伝説上の生物を象りました。
大空を翔るに足る、大きな翼―――
大空を舞った時、優美に流れる飾り尾羽―――
その本来としては聖なる獣として崇められながらも、一度猛禽としての本性に覚醒めた時、その身に纏ろわせた焔と共に襲い掛かる……
その名も『フェニックス』―――今、緋鮮の覇王の権能により産み出された一羽の猛禽は、侵略軍の本陣から湧き続けてくる敵兵の悉くを……無情にも―――冷酷にも―――慈悲なくその焔の内に沈めたのです。
とは言え、これでも魔界側の反撃の第一波。
更なる“波”は、用意されていたのです。
「それでは、私達もヴァーミリオン様達に続くと致しましょう~」(ムヒ☆)
〖その尾は天の星の1/3を掃き寄せ それらを地に投げ落とした〗――〖龍は子を産もうとしている女の前に立ち〗――〖産まれたなら その子を喰い尽そうと 構えていた〗
〖律式灰燼羅號彗掃滅壊衝波〗
『黒キ魔女』であるササラは、その当初からこう言われていました。
天使族ではない―――獣人族なのに、『天使言語術』が使える、“唯一”の存在だと……。
しかし、これまでにも行使する素振りを見せなかったのに、今回ばかりは黒キ魔女の面目躍如と言わんばかりに、紡がれた『天使言語術』。
“戒律”の意味を含めるその言語形態により、失われた敵の兵の数は知れず……。
けれども、またそれによって、更に前線は押し上げられたのです。
つづく




