表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/103

#77

『魔界随一の頭脳』と讃えられる【昂魔】は『悪魔族』の“長”ジィルガによって、自分達が知る由もなかった『裏の歴史』と言うものは明らかとされました。




あの【闇の衣】の成り立ち……って、そう言う事だったんだ―――

私は、何も知らないで魔王様の事を批判しようとしていた……

けれどヴァーミリオン様は、そうした事を知っていたから、魔王様を批判しようとしていた私を(かば)ってくれた……

でもどうして、その事を話してくれなかったんだろう……

話してくれていれば、私も誤解せずにすんでいたのに……




しかし、“それ”は無理というもの―――

それと言うのも、“そもそもの原因”と言うのが、ヴァーミリオンを含める“当事者達”も判っていなかった―――

そしてそれは、ササラでさえも―――

その“原因”を掴んでいたのは、ジィルガと―――カルブンクリスのみ……



そして、“今”―――





「さて、それでは今一つ、知れずにいた『もう一つの真実』について話してやろう。」


「知れずにいた……『もう一つの真実』?」




元々ルベリウスは、『賢王』と称されるほどの有能な魔王であった。   

しかし、(ナレ)らも知れているように、彼の者は突如として狂い始めた―――『豹変』してしまったのだ。   

どうしてだと思うね?




その事は、よく聞く噂でもあり―――また、『緋鮮の記憶(あのお話し)』の導入部でも語られてはいた事でした。

しかしながら……その“原因(どうしてか)”は、語られずのままにいた―――?



一体なぜ…………



けれど、その真実こそが、不都合の塊だったら―――?




既に(ナレ)らも知ってのように、ラプラスの魔の侵攻は常にしてあったのだ。

だがそれは、庶民レベルでは知れぬ事実……

逆を返せば、庶民達に無用な心配の計らいなきよう、取られた手段。

“王”だの“貴族”だの“(おさ)”だのと、祭り上げられている者達が最優先にしなければならぬ事。

無論、ルベリウスも武勇にかけては申し分なかった―――

なにしろ、あやつを政権の座に推したのは、他ならぬワレなのだからな……




そう―――シェラザード達が、かつて相手としたオピニンクスなる“超”獣……『ラプラスの魔』と定義づけられた者達は、自分達が生まれる以前にも頻繁に魔界に襲来()ていたようなのです。

それを、最優先で撃退し、民衆に無用な心配をかけさせないようにしてきた者達こそ、『王族』であったり、『貴族』であったり、『派閥の長』だった……


それだけでも、かなりな衝撃だったのですが、まだ更には―――





「ルベリウスは―――狂ったのでも、()してや豹変したのでもない……。  あやつは……敗れてしまったのだ―――   魔界の王が、たった一人の『ラプラスの魔』と言う災厄に……」





そう―――……歴史上では、“暴虐の魔王”とされたルベリウスは、自然とそうなったわけではなく……

何者にも屈してしまう事は赦されない―――その魔界の王が、たった一人のラプラスの魔……に、敗れてしまったと言う事実。


そう……魔王ルベリウスは、その()を【夜の世界を統べし女王】と言われた【ニュクス】なる存在の前に屈し、(あまね)く洗脳を(ほどこ)されてしまった……





「そ―――そんな……!」


「受け入れ(がた)いであろうが、それが真実と言うものだ。」




だがルベリウスも最初の内には抵抗をしたものだった……

しかしニュクスは洗脳を定着させる為、しばらくはルベリウスを裏で操る事としたのだ。

その異変を、いち早く察した【聖霊】の女媧により、適切な手段は取り計らわれたものだったが……逆に目を着けられてしまってな。

ニュクス操るルベリウスが保有せし『魔王軍』により、【聖霊】は叩かれてしまった……

だが、密命を帯びた竜吉公主により、ニュクスとルベリウスを引きはがす事に成功をし、しかる後に封を施したと言うが……竜吉公主も無事では済まなかったことも、ワレの知る処だったのだ。




少しずつながら見えてきた……創られた話しではない―――本当にあった真実(こと)……


【昂魔】の出身であり、『魔人族』出身でもあったルベリウス……で、あったがゆえに、同族を討つ事を躊躇(ためら)った【昂魔】の各種属でしたが。

“長”であるジィルガの計らいにより、かつての弟子であったカルブンクリスに、こういう事態に陥った内情を総て打ち明け、そしてカルブンクリスにより、英雄達は集められた……


そして【神人】の『天使族』や、【聖霊】の『神仙族』からの扶助(たす)けを借り、ようやく内なる災厄の芽は摘み取られた……


もし、最後の切り札である、英雄達がルベリウスを討ち鎮めてくれなければ、愈々以て(いよいよもって)最悪の事態となり、やがては『魔界占拠』を画策した者の思うがままとなっていた……


けれど“現在”そうなっていない―――と言う事は、最悪の事態()()()避けられていた……と思うしか(ほか)はなかったのです。





#77;烈情の炎





そしてここで―――皆様方には気付いておかれただろうか?

このジィルガからの真実の語り部により、この場に集まっていたのは計5名……

ただこの(なか)で、これまでただの一言も発さなかった―――いや……発“せ”なかった者が、一名ほどいたことを……



そう……“彼”は発()なかった―――


()なかったのではなく、発()なかった―――



なぜ……?



それは――――――



内に抱える、“烈情”という名の『炎』を―――抑えることに精一杯……だったから。




〈出せぇぇ……いますぐこの私を解放しろ―――!!〉


〈お……おい、落ち着け―――落ち着け……って!〉


〈これが落ち着いてなどいられるか―――!! 早く……早くせねば、間に合わなくなる!!〉


〈な……何を言っているんだ―――おい!〉




“彼女”には、どことなく判っていた―――

この魔界の、何処(いずこ)かの場所で、“何”が起こっているのかを……


“それ”は、遥けき過去より紡がれていた“絆”だったからか……

人族の『都城』で……元々はその種属であり、その身体を張って護り通してきた者達―――でさえも、熱さが咽喉元を過ぎれば忘れてしまうものか……

その“強さ”が故に、化け物扱いを受け、煙たがられた……


なのに、今回の“ファフニール”の件では、身に受けた迫害を反故にしてまで、危機に駆けつけてきた……

本来ならば、『清廉の騎士』一人でも凶悪な竜の相手は出来たものでしたが、現場で何があったか―――は、最早説明不要……


もう……過去の英雄には、味方など一人としていない―――

護っている対象からも妨害を受け、ラプラスの魔からは容赦のない攻撃を受け、身も……心も……満身創痍―――




なぜ私らが、こんな目に遭わなけりゃならない―――

けど……当然か―――

私もかつては……弱者であるこいつらを食い物にしてきた―――




『傭兵』とは、雇い主から依頼された件を“金銭”で解決をする職業―――

依頼物件を、金銭を主体とする“報酬”によってこなす―――と言う点に於いては、冒険者とそう変わりはありませんでしたが。


冒険者と大きく違う点……


それは、金銭によって―――『誘拐』『拉致』『殺人』『強奪』『戦争の肩代わり』を行う……

こんな後ろめたい内容は、冒険者が請け負う“依頼(クエスト)”にはありませんでしたが。

かつてリリアは、そうした事で生計を立てていた……

それが、何がきっかけだったか―――

いや……そこは、最早言うべくもない……


彼女自身の運命―――【ニルヴァーナ】と出会ってしまったから……


自分よりも強者を相手とする事こそ、“武人”の本懐―――とでも言う様に、リリアの内でも“何か”変わりつつあった……


そして―――だからこそ、自らの進むべき道が視えてきたからこそ、傭兵稼業から足を洗い、ついで待たせていた幼馴染を迎え入れた……

しかし、とは言え、これまでの“罪”は、赦されたわけではない―――

傭兵団自分達の名声の為に―――他人の財や生命を奪う(ごと)に、これまでにも幾つものそうしたモノを奪ってきた事か……


そしてそれは、盗賊であったノエルも同様でした。


彼女達は今―――自らの(けが)れを……濁った血と共に流している…………


けれども、彼女達の事を一番よく理解していた者にとっては、見て見ぬふりなど出来るはずもなかったのです。






つづく






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ