#71
現在、“接見”を行っている王女は、『王女シェラザード』―――では、ない……。
ならば、シェラザードは一体どこに?
その謎を解くカギは―――
「(……)何をやっているのだ? お前は―――」
「ああ、アウラ様―――これには少々“事情”と言うものが……」
「そう言えば5日ほど前、この城の城門近くで“テロ未遂”の騒動があった……と、耳にしたのだが?」
「それ……本当なんです―――」
この日、身代わり王女と接見しているのは、ダーク・エルフの王国『ネガ・バウム』の“姫”アウラでした。
しかしアウラは近しい過去に、彼らと交流を持ったことがあるからか、今現在、自分が接見しているのは本物の王女ではない事が判ってしまった―――
しかもどうやら、そうなった経緯もどことなく心当たりがあったようでして……
そう―――それが、この日から5日前……
まあこれが、彼女達が王国入りした当日の出来事なのですが……。
「なんですってぇ?! もう一度言ってご覧なさいな!」
「何度でも言ってやるよ! こっちゃ、頼んでなんて一度もないのに、興味本位でついてきちゃってさあ~~!」
「な……なあ―――あの……これ止めないと、さすがにヤヴぁいんじゃ……(ハハハ……)」
「『止める』……“アレ”をでしゅか?」(ムヒョ?)
「ああそうだよ! それにもう城門に着いてるのに、益々ヒート・アップ……」
「いえ、既に手遅れなんでしゅけど……それでも『止め』ましゅ?」(ムヒ?)
「(え?)あの……“既に”―――って……」
「シェラさんが、『ヨケーなコブ』言ってた件でしゅ☆」
彼女と彼女のvsは、冷めるどころか益々熱を帯び、そんな“火中”に『制止』の手を出そうものなら、“大火傷”は必定―――な、訳もあり。
看過するのが最上策とした黒キ魔女により、ついに已むに已まれず、膨張しすぎてしまった怒りは、当然の如く破裂する……
この時放たれた『鬼道巫女』の、『阿頼耶識:厳寒:西方白虎』の術により、氷/凍結の世界に閉ざされてしまった、エヴァグリム城門前……
ようやく平穏を取り戻せつつあった王国の、このタイミングでの“テロ未遂騒動”に……と、現場に駆け付けてみれば、動かぬ証拠が……
それが、氷漬けになりながらも、互いが互いを鬩ぎ合う―――いづれが“龍”か“虎”か……
まさしくの容疑者二人がいたからには、最早どんな弁解も通用するものではなく……
そんなこんなでありまして、現在アウラは、城門付近を騒がせたかどで拘束を余儀なくされている二人を、(軽蔑した眼差しでw)見下していたのです。
「(じーーー)」
「そんな眼で見つめないでぇ~? アウラぁ―――」
「(しくしく)」
「(ハア~~)言いたいことは山ほどあるのだが、反省はしているのだろうな?」
首より下を岩の内に埋め固められ、首より上は自由に出来る―――ものの、恥辱の視線や罵詈雑言からは逃のがれられない……とは言え、自分達がこうなってしまったのも、ある程度判っていたみたいで……
「え゛~~~でも、私全然悪くないモーーーン!」
「反省しているんだよなあ??」
「私は、悪くないモ~~ン!!」
「子供か!お前は……全く――― それで? クシナダはどうなのだ―――お前は、反省しているんだよな?」
「私も……悪くなんかありません―――」
「(はああ~~……)あのなあ~~~お前達……」
「だって! この人が全然素直じゃないんだもの!」
「―――はい?」
「本当は……私達に手伝って貰いたいくせに―――本当は、自分王女がしている事を、見てもらいたがってるくせに……! そんな事、全然言わないんだもの……」
「はあ~~? 何言ってんの―――そんなこっ恥ぱずかしいコト、一言だって言ってやしないしぃ~~~!」
「ほらっ―――こんな調子なんですよ?」
嗚呼―――なんと言う事でしょう……
単なる痴話喧嘩―――そんな事で氷漬けにされてしまった、エヴァグリム城門前……
しかも、事情聴取を終えてみて―――の、“判決”の行方は??
「なるほどな……よぉ~く判った―――お前達が、大変仲が好い―――と、言う事が、な。」
「はあぁ~~~ぃい~?! ちょっと、アウラ―――あんた、どこをどう見たら、私達の仲が……」
「勝手にほざいてろ―――なぜ、こうなったか……の、原因動機を探ろうとした私もバカだったが――― お前達はもうちょっと、頭を冷やす必要があるようだな。」
「あっ……ちょ、ちょっと待ってよ! 接見する内なかには、私“本人”じゃなけりゃ……」
「ハイハイ―――そこももう手配済みだ。」
「あのう~~~ましゃか……?」
「先程、ササラ殿からも相談を受けてな。 この私が、お前の代理をするように依頼をされたのだ。 まあ―――気にするなw お前達はお前達で、存分にその愛を育んでおれw」
「あ゛~~! ちょっと待ってえ~~! アウラあ~~!! もうこんなトコやなのぉ~~!! 暗いし、視えないし、音聞こえないし、二人っきりだしいぃ~~!! ねえ?アウラ?? アウラしゃまあ~~! 聞こえてんでしょぉお~~?! 出してよお―――出して! ここから出してよぉお~~!!」
#71;意外な“弱点”
実は、シェラザードは幼少の頃“おイタ”をやらかしてしまった時、よくこうした“お仕置き”を受けていたモノでした。
しかも、“幼少”……その頃に受けた心の傷は、いかほどのモノか―――
この時の抵抗する姿勢を見ても判るように、尋常ではなかった……
{*所謂ところの『暗所恐怖症』『閉所恐怖症』}
それから2日後、刑期を終えた二人は―――
「暗いのコワいよォ……聞こえないのコワいよォ……視えないのコワいよぉぉ~~……」(ポロポロ)
「私の周りで黒光りするちっさくて素早いのが……カサカサ言ってるよおぉぉ~~」(ガクブル)
「ヤメテ……ヤメテをぉ~~私の首筋這い回らないで……私の身体で大運動会開催しないでえぇぇ~~~!」(ビエエ)
「お勤めは無事、果たされたようですねッ―――」(ムシシw)
「それより~~クシナダさんは、思ったより精神負荷に抵抗があったようですねぇ?」
「ええ―――まあ……『巫女』の修行で、近いモノありましたし……」
「ところで―――どうしましょう? これから……」
「“アレ”で使い物になると思いましゅか?」(ムヒ)
まるで、魂が抜けてしまった抜け殻のような―――“傀儡”の様な、(本物のw)王女様。
これではさすがに使い物にならないと、仕方なく“身代わり”が継続して、王女の公務をこなすことになるのでしたが……
“怖いもの知らず”と思われた、彼女の意外な弱点―――
知ってしまった、知られてしまった……だから、この後―――
宜しく立ち直り、本来の職に戻った―――は、いいものの……
「お~~今日もやり合ってんなあ―――シェラのヤツ……」
「まあ、現在のエルフは一番難しい時期に来ていますからねぇ。 だから、締めなければならない処は締めなければならない……そこは判るのですが――― あまり締めすぎて議論を長引かせると、当然その余波は……」
「庶民にも―――ですよねえ……では、どうするのがベストだと?」
「そうですねぇ―――まずは、平行線の議論を収まらせる為に、王女様には静かにして頂きましょう♪」(ムヒw)
新たなる、明るく拓かれた王国を目指す為に―――と、熱い議論を交わす王女と官僚達。
しかしそこには、以前の様な既得権益を巡っての議論ではなく、王国に暮らす庶民を思っての、政策と政策のぶつかり合いだっただけに、以前よりかは幾分かマシ……だったのでしたが。
政治と言うものは、ある程度“妥協”をしないといけない……
政策を決定する場合に於いては、相互が歩み寄り“妥協”をするなどして迅速に動かなければ、庶民達にも少なくない影響を齎すため、現在のシェラザードの様に下手に議論を長引かせるのも、良くない―――と、思われたため……
――ずぽっ――
頭が入るくらいの大きさの麻袋を被せられ、急に動かなくなってしまった王女様……
すると、黒豹人族の成人女性にして黒い導衣を召していた術師が……
『どうやら王女様におかれましては、非常にお疲れのご様子』
『後は、この黒キ魔女が王女様の代理として、決定を行いたいと思います。』
宜しくその後、その政策は黒キ魔女の裁量により、決定されました。
ですが―――なぜ王女様は、頭から麻袋を被せられただけで大人しくなったのでしょうか。
その答えとは―――『簡易性暗所』……
頭からすっぽりと麻袋を被せられた為、“視えない”“聞こえない”“息苦しい”等の事を感じてしまい、只今機能停止中―――
その後宜しく麻袋を取り外された王女様は、“ベソ”を掻いていた―――と、言う事です。
つづく




