表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/103

#59

場面は一転し―――“現代”へ……



魔界の王たる者の居城―――『魔王城』の麓にある“城下”を訪れたシェラザード達は、またその場所で、更なる再会をしたものでした。





「さぁ―――っすが、魔王様のお膝元……って、言うか。」


「マナカクリムやエヴァグリムとは、どことなく違いますよね。」


「私の盟友(とも)は、特に“経済”と言うモノに力を入れていたからな。   かと言って、ルベリウスも()(おさ)めていたのだ。   “ああなる”までは―――な……」





その時代に生きていたからこそ、“豹変”ぶりが知れてくる……。


“豹変”するそれまでは、上手くこの世を統治できていた―――なのに、ある日突然、狂い始めてしまった……


魔王の変異ぶりに、まず戸惑ったのは、彼の配下でした。


その変異ぶりを指摘し、諫言してくる者達を排除し、代わって暴虐ぶりが目に付き始めた……


市場(しじょう)は混乱し、“闇”の市場(いちば)が形成され、いかがわしい商売を生業(なりわい)とする者達が増え始めた。


“奴隷”などは、その最たるもので、その憂き目に晒されていたのは、亜人であり、獣人であり、人だった……。


それを、魔王ルベリウスは承認し、(あまつさ)庇護(ひご)をしたのです。



しかし、それを批判すれば、『現政権に叛意ある者』と捉えられ、善意ある者、忠臣の類は姿を隠棲(かく)し、逆に(おもね)る者や曲学阿世(きょくがくあせい)の類が幅を利かせる。


つい先頃まで、エヴァグリムの国内で蔓延(はびこ)っていた状況と同じ……

いや、この当時は、魔界(せかい)全体が、エヴァグリムの様だった。


そして、この窮状(きゅうじょう)を救ったのが、シェラザード自身憧憬(こが)れて()まない、緋鮮の覇王であったり、この度接見をする―――




あれ……?

あの後ろ姿、ひよっとして……?




魔王城の城下を(はし)大路(おおじ)を進んでいる途中、見かけたことがある後ろ姿を、シェラザードは見つけました。





「あの……ちょっと―――?」


「う~ん? やあ―――君達、こんな処で会うなんて、実に寄寓だねぇ。」


「ミカさん?」


「あの後、また“プイ”と、いなくなったと思ったら……」


「フ・フ―――ボクは“渡り鳥”なのサ。   一つの留まり木ではなく、また別の留まり木を求め、“街”から“町”へと―――人やその出会いが詩を作るから、ボクはそこへと呼ばれて行くのサア~♪」





その“後ろ姿”―――こそ、自分達のクランの、古参のメンバーだった吟遊詩人のミカでした。



実はこの人物は、以前シェラザード達と顔見せをした後、また気の向くままにマナカクリムを離れ、魔界の各所へと渡っていた……ようなのでしたが、また再会できたことを機会と捉え、現在自分達が、ここにいる事を述べると……





「ふう~~ん、魔王君に用があるのか。」


「(“君”?)ええ―――まあ、そうなんですけど……」


「ミカ殿、私の盟友(とも)を、未だに“君”付けとは……あなたくらいのものですぞ。」


「ははは―――あの人とは、古くからの知り合いだからねえ~ けど、そうだなあ―――久しぶりに、生存報告くらいしておかないと、無用な心配をさせちゃうからねぇ☆」


「(……?)ササラ様―――どうかされたのですか?」


「いえ……なんでも―――」




やはり……似ている―――

この吟遊詩人が醸す雰囲気が、限りなく“あの方”に……




再会の喜びを分かち合う仲間達……

その()(はず)れで、ササラだけがこの吟遊詩人に対し、ある種の“疑い”の眼を向けていたのです。


けれど、なにもその“疑い”は、悪いものではなかった―――

いや、寧ろ……




それはそれとして、魔王へ接見する者が、また一人増え……たとて、その足は愈々(いよいよ)、魔王城の城門前に到着しました。


そこでやはり、最初の関門として待ち受けていたのは……





「“見張り”―――『衛兵』ですな……それも、たった一人で?」


「お前エたち―――なニもの……ダ?」





明らかに、屈強な戦士―――『黒銅鋼』の鎧を纏い、その頭に二本の角を頂き、“筋肉ダルマ”ではない程度の筋肉をつけ、身の丈もヴァーミリオンと同等……


そう……つまり、鬼人(オーガ)番兵(センチネル)―――


しかも、“彼女”が手にする武器は、長身の鬼人(オーガ)の倍以上もあろうかとされる、長柄武器(ポール・アックス)……





「久しぶりだな、『テスタロッサ』。」


「ヴァーミリオン……なニよウ―――デ……こコ に?」


「旧知の(よしみ)を温める為―――」


「ソの予定……聞いテ―――なイ。」


「ヘレナ―――」


「この“私”が、通行手形代わりだ―――そう言ったら?」


「通ヨう……しナい――― こノ門、固メるは―――ワレの役メ…… ワレのやク目、怠慢とナれば……主上ニ危害及ブ。」


「ヤレヤレ―――取り付く島がないったらw」


「テスタロッサ殿、そこをお通し願いたい。」


「黒キ魔女―――たとイ、あナた様の願いデ アロう―――とモ……」


「テスタロッサ―――お通しを。」


「『侍従長』……了解―――シタ。   通行を許カ……する。」





#59;侍従長





(かたく)なまでに、自分の職務に忠実―――

それが例え、昔からの親交があり、可愛がられた……とはしていても―――

何者にも(ほだ)されもせず、ただ(かたく)なに、城門から先へと進ませなかったのです。


しかしながら、テスタロッサなる番兵が先を譲った経緯とは、たった一人の、たったの一言……


ノエルやササラと同族であり―――“黒豹ふの耳と尾を持つ、獣人の女性……

()”を―――『サリバン』





「助かりました、伯母上様。」


「“伯母上”? ああ~~道理で……」


「私も、嬉しいわ……。   姉上様のお子であるあなたの成長した姿を、こうして(まみ)えるなんて。」


「あ~の……ちょっとご質問。」


「はい、なんでしょう。」


「ササラの“伯母上”で―――ノエル様を“姉上”……って、事は―――」





ササラやノエルと同じく、黒豹人族の『侍従長』―――

そして、彼女達の“伯母”にして“姉”とした者こそは、ノエルの一家で生き残った、5人兄妹の“一人”なのでした。


しかしながら、そうした人物が、今代の魔王に仕えている―――と、言う事は……





「生き残った私達5人の兄妹は、(あまね)く今代の魔王様に仕える事を許される身となったのです。   “前代”の御代(みよ)に於いては、ゴミか塵芥(ちりあくた)の如きの扱いを受けていた獣人(私達)を、今代の魔王様は、初めて人として認めて下された……このご恩に報いる為ならば、例えこの身命を賭してでも、お仕えしよう……と、言うのが、私達兄妹の使命と考えております。」





あの“5人”―――

ノエルの兄妹達は、あの時点で一番年上のノエルの功績が認められ、魔王の陣営へと就職することが出来ていたのです。


それにこれは、シルフィも以前言っていたように、魔王の(もと)で働けると言うのは、業界の最高峰と言われていただけに、就職倍率もかなり高かったのです。


それを、350年前当時、底辺の種属や身分とは言え、魔王の(もと)に就職できていたと言う事は、“大抜擢”そのものと言えた―――

それに、大抜擢された当初は、批難怨嗟の声もあったものでしたが、そうしたモノを失くしてしまったのも、『魔王』と言う、影響力があったからこそ……




豹変し、狂ってしまったとは言え、『魔王』―――

何者にも屈さず、侵されざる者……

その“発言”や“一挙手一投足”が、影響を与える存在……

そうした印象を、一つとして損ねることなく“()”を継ぐる―――

そうした者に、これから接見(あう)―――


侍従長サリバンの案内で、『王』が坐するべき“間”に、通され―――

たはいいのですが。





「あれっ? 誰もいないジャン―――」


「あらあらマアマア―――一体どこへといらっしゃっているのでしょうね?」


「なあ~~ヘレナ―――君、アポちゃんと取ったのかい?」


「ん~~? ここんところ、平和してるもんだから、暇持て余してるだろ? そう思って―――」


「つまり、“していない”―――と、言う事だな。   了解した。」


「伯母上様方……あなた方にとっては日常的かも知れませんが、他の者達にとっては……」


「“非”日常的―――と、言うのでしょう? それに、ヘレナの言葉ではありませんが、暇を持て余していても、“政務”は回っているのです。」


「ん? それ―――って、もしかして……」


「“政務”に(たずさ)わってこられた方は、理解も早くて何よりです。   いかにも―――『摂政』と言う、“代行行政機関”を置き、それは滞りなく……そして、『摂政』を担当するのも、私達の兄妹でありますがゆえに。」





驚くべき新事実として、今代の魔王は、直接的には政治を見ていない―――と、言う事が発覚したのです。


が、それは、普遍的に対処できるレベルであれば、“代行機関”で事足りるだろうとされたからであり、普遍的よりも、より高度な判断が必要な場合は、魔王が直接自ら判断する―――そう言う体制を取っていたのです。



ならば―――?



高度な判断が必要とされるとき以外、魔王は一体何をしていた……―――?




ので、しょうか―――





つづく





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ