表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/103

#58

今代の魔王に接見する為―――にと、自らにかけた封を解いた黒キ魔女ササラにより、一路シェラザード達は、ある場所へと転移してきたのでした。


その場所こそは―――





「(ゴク~リ)なんだかんだと言っても、とうとう来ちゃったわね……」


「あれが……魔王城―――   あの、ここで合っているんですよ……ね?」


「(?)ええ―――   この場所こそが、魔界の『中央行政府』であり、『官邸』……つまり、魔王の居住でもありますから。」


「けれど……『緋鮮の記憶』では、最終決戦場―――」


「そこは、敢えて否定しませんが―――今も昔も変わらず、魔王城(この場所)こそは、魔界の中心であらねばならないのです。」


「どうしてなの?」


「言葉通り……魔王城(この場所)に魔力・魔素が集中し、魔王城(この場所)から魔界の各所に、均等に分配されている―――からですよ。」


「私にしてみれば、感慨深いものがある……。   私の盟友(とも)からの啓示があったとは言え、魔界の王に弓引くのだ。   今にして思えば、正しい結果となったわけだが、もし返り討ちにされた場合、私の盟友(とも)とて無事には済まなかったろう―――   それに、この魔界全体も、現在とは違っていたかも知れないな。」





“経験”は、物語る―――

緋鮮の記憶(あのお話し)』では、華やかな活躍しか描かれはしなかったけれども、事を起こすのには、失敗(返り討ち)も考慮に入れておかなければならなかった……。


あのお話しは、事実に基づいている―――

けれども、何者かの作為により、ほんの少しだけ“創作”の味付けがされ、都合の悪い処はぼかされている―――……


それは、決して許された行為ではありませんでしたが、為さねばならない事でもあった―――……


それに、未だ―――……


彼女達は、“無知”だったからこそ、本来の“敵”が見えていない……

ただそれは、“無知”だったからこそ―――


けれど、(いにしえ)の昔、自らが得た“知識”により、啓示はなされる。

それは、大多数の住人達には無自覚とされてはいても、進行し―――侵蝕する、『病状』に……


まさに、この事が原因で、有り得ない―――あってはならない事態が、魔界を包み込んだのです。


それが―――魔王ルベリウスの“豹変”……


そう……有り得ない、あってはならない事とは。



              =魔界の王が、狂い始めた=



この事を的確に掴んでいた人物により、その当時で話題に上りつつあった者達を召集にかけた(よびあつめた)のです。






#58;『伝説』と成る(とき)



          *      *      *      *




ここから少し、過去に遡り……



ニルヴァーナと、その仲間達は、ニルヴァーナの紹介もあり、その人物の庵を訪れていました。





「なあ……ここがそうなのか?」


「“鋼”を“金”に変質(かえ)ると言うから、『大工房』を想像していましたが……意外と“こぢんまり”していますね。」





普通(ただ)の“鋼”を“金”に変質(かえ)てしまう『錬金術』―――


そうした、聞き慣れない“魔法”、或いは“技術”を有する者の居住まいを、聴くだけなら、さぞかし大層な施設を想像していたのです。


それが……いざ眼にしてみれば。

(みち)よりも程なく外れた処に建つ、『ぽつんと一軒家』みたいな庵であった事に、元”傭兵団頭領に“元”盗賊の首魁は、肩を落とすしかなかったのです。



それはともかくとして―――





「失礼するよ、カルブンクリス―――」


「やあ、君か……注文された品なら、仕上がっているよ。」


                      んっ?!


「この人が―――そう?」


「そうだが? それが何か……?」


「いや―――(あ゛~~)」


「もっと、ゴッツイ職人気質かたぎのおっさんを想像していたのですが~~」


「な゛っ―――?! こっ……コラ―――失礼だぞ!」


「あっははは―――正直なことを言うモノだね。」


「済まないな―――」


「別に、気にはしていないよ。   寧ろ、君達のご希望に添えず、申し訳ない。」





失礼を言ったにも拘らず、気にすらしていない―――

それだけで、この人物の度量・器量の大きさと言うものが、知れてくると言うもの……。



いや―――それどころか……





「これが―――注文を受けていた品だ。」


「『黄金の胸当て』『黄金の小手』『黄金の腰鎧』に~~……」


「『黄金の軍靴』までありますね……」


「すごい……総て黄金で(あつ)らえた、装備一式―――」


「しかし……数が少し多いでは?」


「私が、これから“お願い”をすることは、とても君一人だけでは、成し遂げることが難しい……だから君を含めた仲間達の装備一式―――総てを私手ずから揃えさせてもらった……。」


「―――私達のも?!」


「けれど―――」


「礼は言わなくていい……その“対価”は、『君達の生命』―――なのだからね。」


「私達に“死ね”と?」


「そう言っておいた方がいいのかもしれない。   だけど、むざむざ君達の生命は散らせはしない……。   そうした手解(てほど)きを加えてあるのだからね。」


「お聞きしましょうか―――内容を……」





家伝来の“鋼の剣”を、“黄金の剣”へと変質(かえ)させた存在……

しかし、この人物の(もと)を訪れた時、(かね)てより注文をしていた装備を受け取る際、一人分の装備だけではなかった……


しかし、ニルヴァーナが仲間を得たと言う情報を、知る手段は無きに等しかったのに、ならばなせ、この人物は知ることが出来ていたのか……


そこを難しく考えても、得られる(こたえ)はなかったので、先に進めるとして―――


その人物―――カルブンクリスが余分に造った装備は、ニルヴァーナがこの(たび)新しく得た仲間達へのモノ……


リリアには、ほぼニルヴァーナと似た様式の甲冑一式を与えられ。

{*但し、材質は“精霊(ミスリル)銀”}


ホホヅキには、『布都御魂(ふつのみたま)』と言う、“銘刀”一振り―――


ノエルには、敏捷性向上の付与能力が最初から与えられた、膝から下の脚全体を護る『脚装備』。



けれどカルブンクリスは、その“対価”としての金額を請求しなかった……

請求は、しませんでしたが―――

その代わりとして求めたものが、『彼女達の生命』……


そして、仲間の一人が口にする―――『私達に“死ね”と?』



それは、間違いではありませんでした。



とは言え、彼女達の生命を“対価”として求めたとは言え、簡単に彼女達を死なせるような事は講じていなかった―――


そして、その内容が明らかにされる。


それこそが……



『今代の魔王を討伐(うちたお)して欲しい。』





「また……なぜ―――?」


「質問を、質問で返すようだけれど―――ならば君達は、現状の、この世界に満足をしているのかな? 満足をしていると言うのならば……なぜ意図していない“略奪行為”や“殺人”などが横行している? 『飢えた兄妹達の為に』―――『感情を喪失(うし)なった幼馴染の、治療費の為に』―――なぜそうまでして、その身を(おと)しめなければならない……。   総てが狂ってしまっているのだ。   この魔界(せかい)の頂点に立ちうるべき『王』が、狂ってしまったばかりに。   だからこそ、是正をしなければならない――だからこそ、(ただ)さなければならない―――   そこで私は、少しばかり知恵を巡らせ、腕に覚えがある者達を(おび)き寄せる為に、『優秀な鍛冶師』の“噂”を流させた……。   そして、その“可能性”―――『ニルヴァーナ』が、私の(もと)へと訪れた……。   ニル……その鎧の下には、“これ”を着るといい―――“物理攻撃””魔法攻撃”“精神攻撃”そのいずれにも“耐性”を込めさせた。   『緋鮮のドレス』―――君のその、情熱的な緋鮮(あか)をモティーフにしたものだ。   そして名も……この時を(もっ)て、こう改めるといい……」



           『緋鮮(ロード・オブ)の覇王(・ヴァーミリオン)



「と……」





その人物は、自分達の事を(あまね)く見てくれていた……


なぜ自分達が、この手を汚し、何の為にと生きてきたかを、知ってくれていた……


際限なく、この手を汚しても、得られる結果は少なく、また、この手を汚していくに従い、次第に麻痺していく感覚……


自分達の代わりに怒ってくれた……憤慨してくれたことに、ただ感謝をし、ここに『魔王討伐隊』は結成されたのです。





つづく





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ