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#51

ニルヴァーナ達が(しのぎ)の削り合いをしていた―――と、ほぼ同じ頃。

別の場所―――別の処で、ある邂逅が発生していました。



* * * * * * * * * * * * * * * * * * 



その場所とは……集落から集落を繋ぐ“(みち)”―――

そこから程なく離れた場所に建つ『庵』……


その庵を、訪ねてきた人物こそ―――……





「ご在宅でいらっしゃいますか?」


「ああ、君か……待っていたよ。」





後世に、【美麗の森の民】とまで称された―――

当時のエルフの王国、『エヴァグリムの王女』―――【ローリエ】……



そして、彼女と直接対面していたのは……



『昂魔』の証しでもある、『立派な角』を頭に頂き―――

盛る火焔の様な『熾緋』の長髪―――

その眸に宿せるは、情熱の焔と見紛(みまが)えるばかりの『熾緋』の眸―――

同じ女性だとて、溜息が漏れそうになるまでの、豊満な身体つき……



そして、この人物こそが、後の――――――





#51;今昔<道   標(しるべ)





「それで―――?」


「はい……一応、王室より容認を取り付けて参りました。」


「そうか……これで“ようやく”―――だね。」


「それより、本当に現れているのでしょうか。」


「その点については心配ない。   この私が、数十年来交流を深めた者に対し、ある種の“導き”を行ったからね。」


「それで……その方は―――」


「種属としては鬼人(オーガ)―――だが、その志には、大いなるものを持っている。」


鬼人(オーガ)……ですか―――」


「不安……かい?」


「―――はい……   あなたからの“教え”には()たっているのですが……その印象が強い余りに……」


「私は、その“風聞”は、何者かの意図によって、そうされてきたと思っているけれどね。」





この当時の、『エルフの王女』と話し込んでいたのは、自身が修めた学識で、迷える者に対し“導き”を行っている、『学者』の類でした。


その知識は『確か』―――

確かであるがゆえに、揺るぐことはない―――


しかも高い知力によって、普通ならば理解するのに難しい説も、噛み砕いて分かり易いようにさせる……

そうした者が、この魔界に存在しているのです。


それに“今”は、『エルフの王女』が、この『学者風の人物』の教義に()たっていた……と、言う事実―――





「それが、『差別』―――と、言う事ですね。」


「うん―――   私達は、この世に“産まれた”と言う時点から、平等であるはずなのに。   実は、その『この世に産まれた瞬間』から、そうした差別(モノ)は発生していると言った方がいい。   “それ”は、種属の『別』もさながらに、産まれ出た瞬間の“身分”“家柄”に関しても言えることだ。   王女―――あなたが“エルフの王族”に産まれてきたのは、あなたの運命だ、あなたが、“エルフ”と言う種属に産まれてきたのも、またあなたの運命なのだ。   そこは、“あなた”がどう思い悩んだところで、どうしようもない。   ならば、その“運命”を、利用してしまえばいい―――   “あなた”がエルフであると言う事―――“あなた”が『エルフの王女』であると言う、“立場”を利用して出来る事は、ある。」





ローリエは、『エルフの王女』―――……


これは、誰が……そして自分が、いくら否定しようとも、不変の(かえられない)運命(さだめ)と言うものでありました。


産まれてくる子供に―――産んでくれる母体(おや)に、その差別()は、ない……

どちらも選択(えら)んで、産む事……産まれる事など、出来はしないのだから。



だとてローリエは、その事で苦悩をしていたものでした。


それはまた、シェラザードが、変革を起こそうと決意するまでの気持ちを表せた、彼女の『日記』にもあった事なのですから……


自分達は、高貴な身分(やんごとなき)方々であるがゆえに、佞臣の類が、自分達には不都合な真実を知られまいと、耳を塞いでくる……


しかし、王女ローリエは知ってしまう……


それはまた、“プイ”とエヴァグリムの城を訪れた、一人の『吟遊詩人』の手によって……



              ?   ??   ???



吟遊詩人の、その“語り”により、城下に住まう者達の……そして、国外に住む、様々な種属達の実情を知っていくこととなる、王女ローリエ。


ただ、この時代が、シェラザードの時代より“幸い”だったのは、未だこの頃には、エルフの王国は開かれていた……


だから、ローリエは―――『王女』だとしても、“自由”に国外へ出て、魔界の様々な実情を知ることが出来たのです。


そして、様々な伝手(つて)を辿り―――行き着いた先が、この『庵』……



『昂魔』と言う、魔界三大派閥の一つ―――


他のどの種属よりも魔力が高く、内蔵させる量も豊富で、知力・知性共に高く、また身体能力に於いても、かの鬼人(オーガ)をも(しの)ぐ集団……


そして、これまでにも、幾人もの『魔王』を輩出させてきた、優秀なる派閥……


そうした派閥に属する種属の一人であるはずの、この“学者風の女性”が、他者との交流を断ち、たった一人で何かの研究に没頭している……


ただ、この解釈も一つ違わせてみれば、そう(ぼっち)に見えるものの……

いざ話し込んでみると、それ(ぼっち)は間違いだと気付かされるのです。





「まあ―――私も私だが、私自身の“師”も、かなりな変わり者だからね。」


「あなたにお師匠様が―――?!」


「ああ、そうだよ。   私が身に着けた、この高度な学識も、私が独自で得たモノではない。   ()しんば、出来たとしても限度と言うものがある。   この世の総ての(ことわり)を解し、更なる高みに昇華(のぼ)るのならば、良い“師”を見つけ、“師事”しなければならない……」


「その―――あなた様のお師匠様とは……?!」





熾緋(あか)き学者風の女史は、“その名”を口にする―――


この魔界(せかい)(とき)を紡ぐこと数千年であり―――


その身は決して朽ちることはなく、飽くなき知の探究を求めし者……



  『死せる賢者(リッチー)』とも   『大魔導士(ロード・マンサー)』とも   『大悪魔(ディアブロ)』とも


称されたる者……





「『多彩なる称号(マルチ・タレント)』の保持者(ホルダー)―――」


「あの人に弟子入りしたまでは良かったのだけれどね―――   それからというものは、徹底的に扱かれたものだよ。   ただ……そのお蔭もあり、『私は盲目ではなくなった』―――」


「確かそれは……   『私は盲目だった、けれど今は視える』―――でしたね。」


「その通りだ。   君も今は、私と最初に出会った時より、物事は“視え”ているはずだ。   そして以前、私との交流で“導き”に()たった、私の盟友(とも)を探し出し、その“()”の(なか)に入りなさい。   そして君が、その()(なか)に入る頃には、様々な運命が、私の盟友(とも)を取り巻いている事だろう……。」




              だから―――……


              期待をしなさい


      “あなた”が求めているモノが   きっとそこにある……


                そして


       あなたの旅路(ものがたり)は  まさにここから始まるのだ





()()()“運命”――――――


そして


()()()“運命”――――――




歴史上の事実だけを述べるのならば、この後、王女を待ち受けていた運命の終局は、過酷そのものではありましたが。


逆説的に言えば、この“繋がり”こそが、錯綜し合っていた“運命共同体”達を一つに纏めたとしたならば―――?




そして場面は―――……



* * * * * * * * * * * * * * * * * * 





「―――なにっ?!」





なんだ……この(ひか)りの―――




盗賊の首魁が修めた、“忍”の暗殺術は、確かに鬼人の急所を捉えたはずでした。


が……………


その直前に、“何か”に阻まれた―――


それは“(ひか)りの帯”の様であり、“盾”の様にも見えなくもなかった……

そんなものは、今までにも目にしたことなどなかった……とは言えども、その事によって、鬼人は一命を取り留めていたのです。






つづく






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