#40
「実はですね、私達――― 他のPTの方と共同協力をして、一つの依頼をこなそうとしたのです。」
「ふぅ~ン……で、それが? 割と普通によくある話しじゃない。」
「しかもその依頼、難度も『B』で―――」
「だったら楽勝だったんじゃない?」
「ああ―――“普通”だったら……な。」
「結果としては、評価『B』。 報酬も1万リブルを越えないものだったのです。」
「ナニ?ソレ? 誰がヘマやらかしたん?」
「私達は―――やらかしてませんよ……」
「(……)だろーねぇ。 て、ことは―――……」
「シェラザード様は、私達が原因ではないことが、判るのですか?」
「そりゃ当然でしょ。 あんた達の実力は判ってるんだから。」
「……でェ? ヤラかしてくれたアンポンチンは、どこのどいつなんじゃい!」(エルフ語)
自分が戻ってきた時に、不自然に感じたクランメンバー達……
その原因を探ってみたところ、ここ数日にあった出来事を、聞き終えたシェラザードは、クリアできたとしても、低評価に終わってしまった元凶を聞き、例の二人組の事を知るのでした。
そのまた一方で、“お使い”を果たしてきた事を報告するため、ギルドへと立ち寄った時に―――
「無事、“お使い”完了しました~!」
「ご苦労様――― それで、どうだった?彼女達……」
「いやあ~こってり絞られましたよw あれ、普通の戦闘だったら、何回死んでた事かw でも、その度に、鍛錬終了後の『ドンチャン騒ぎ』で、体力回復させられるんですからねえ~w」
「けれど……それが、強靭な身体を作る方法なの。 あなたも『王女様』なのだから―――とは言いたくないけれど、あなたを失ってしまう事で、『失ってしまう価値観は安くない』……と、言う事を覚えておいて。」
『やはり、そう言う事だった―――』
そうシェラザードが思った様に、ノエルが、スオウへ赴かせた意図を、そこで語ったのです。
確かにエルフは、他の冒険者達と比べても、優れた能力を発揮できる―――
が、その分、『耐久力』『頑健さ』にかけては、多少なりとも見劣りがちだったのです。
そこへ、ノエルなりに気を利かせた象で、かつて自分が所属したPTの内でも、実力上位の2人に鍛えてもらえば……と、言う事もあったようです。
それはそれとして―――
「それより―――確かあなたのクランには、私の娘……ササラも所属しているのよね?」
「はい―――そうですけど……」
「(……)申し訳ないけれど、私の処へ出頭するように、伝えてもらえないかしら?」
「―――なにか、あったんですか……?」
「大したことじゃないのよ。 ちょっとした、親子関係……と、言えば―――ね。」
それは、ちょっとした“違和感”ではありましたが。
事実、ノエルとササラは実の母娘なのですから、その部分に触れるのは野暮だと感じていたのです。
#40;“水”の発生源
それはそうと、今日の本来の目的―――
自分達のPTに、多大なる迷惑をかけたにも拘らず、未だに自分に詫びの一つも入れない不届き者達に対し―――
{*と言うより、シェラザードは、『今回の件』に関しては、無関係の様に思えなくもないのですが……?w}
「なあ~~ちょっと、あんた達~?」
「ほへっ?!Σ なな……っ、なんでしょう~?」
「(はッ!)アンジェ……こ、この人―――ここの『顔役』ですよ!!」
「ふえぇぇ~~??」
「(いや……『顔役』と言われてもなあ―――)ちょっと違うんですけど~~ソレ……と、言うより、あんた達か? 私んとこのPTと、合同協力した~~て時に、妨害しまくってたと言うのは……。」
「そ―――そそそそそそそそれはははははは、ごごごごご誤解と言うものですうぅぅぅぅぅぅぅ~~(ガクガクブルブル)」
「他人と会話する時ゃ、相手の目を見ろ―――て、礼儀作法で習わなかったかァ? 今のあんたの目、活きの良い魚みたいに、泳ぎまくってるわよ―――?」
「あ、あ、あのうぅ~~お、落ち着いて―――ね? 冷静に―――なって―――話そうよおぉ~~(涙目)」
「私ャ、これでも、冷静だヨ? 込み上げる怒り―――抑えに抑えまくって……コレだよ? これ以上―――だと、下手したら、血ィ見る事になるゾ?」
その最初から、下手人達(w)に目星をつけ、見つけた時に、ドスの利きまくった声色で脅しつけるものですから、どこか2人も、怯えきってしまうのも無理らしからぬ処―――と、言ったようです。
しかし、とは言え……これでは話しが進展しないものと思ったからか―――
「それ―――で? 何で妨害したりしたの。」
「ですからあ~~それ、誤解なんですぅ~」
「誤解? どこがどう誤解なのよ―――」
「ですからあ~私達が最近、組ませてもらった人達は、“炎系”のスキルが、得意なよう―――だったんですけれど……」
「この子が得意としているのは、“水系”のスキル―――なのですよ。」
「(あ゛~……)だったらさあ―――その時点で気付いているんだったら、止めりゃいいじゃん。」
「そう言う―――訳にも……いかなかったんですぅ~」
「(は?)『そう言う訳にはいかない』って、どう言う事情よ。」
「すみません―――ごめんなさい! それ以上は言えないんです~!」
いや……てか、“その部分”が重要なんだろうによ……。
ケ~ど……なんなんだろうなあ―――この人達……
何か隠している―――から、後ろめたい? ……って言っていいのか―――
な~んか、怪しいんだよな―――この2人……
要するに、ササラも辿り着いていた“事実”なのですが―――
スキルや属性等の喰い合い―――
“火”は“水”に弱いし、水気のある処で『雷』や『電流』は厳禁―――
そう言う処が、低い評価に繋がってしまった―――のは、判ったのでしたが。
ふと、シェラザードが気付かされた、この2人と自分達との『溝』―――の、様なもの……
まだこの時は、漠然とでしか、捉え切れていないモノでしかありませんでしたが……
このまま―――煮え切れないままで放置させておくのは、自分の内で許せないと思ったシェラザードは……
「よし―――んじゃ、次は私が協力してあげよう。」
「えっ?いいんですかぁ?」
「いい―――ケド……協力してもらえるから~つって、油断してたらイカンよ?」
「最初から猜疑を以て―――ですか……まあそれも、致し方のない処と言った処でしょう。」
「けど―――…… うん……これである程度、判ってくることも、あるからね……。」
「アンジェ―――」
「えっ? あ……ははは、ゴメン――― ちょっと余計なコト、ゆっちゃったかぁ~モネ☆」
今度はシェラザードが、自身の眼を持って、彼女達が“真”か“鴈”かを見極める為、彼女達に協力を申し入れたのです。
すると……ほんの少しだけ見え隠れしてきた、この2人の動機―――
アクアマリンの、“自称”天使騎士の軽装剣士が、“ポツリ”と漏らしたことに、誇大表現が得意な錬金術師が、すかさず“フォロー”に入ろうとした……?
『やはり、何かを隠している』
とは思ったものの、ならばやはり、自分達と組んだ時に、その尻尾は掴めるものとした、シェラザード―――なのでしたが……
その一方―――
シェラザードからの連絡により、母ノエルに呼び出されたササラは……
「お呼びだとか?」
「ササラ―――あなた、“コレ”を見て、何だと思う?」
「なんですか?この“遺体”―――」
「まずは、あなたの所見を聞きましょうか……。」
するとササラは、手をかざし、変形した魔獣の遺体に遺る、何かしらの“残滓”を読み取り始めました。
「………………。 これは―――『水』です。」
「そう―――“そう”言う事ね……。」
「お母上、この遺体を見つけた場所に、何があったのですか?」
「『何もない』―――と、言ってしまえば、そうなのかもしれない……けれど、乾燥するこの地帯で、明らかにその場所だけが、『水浸し』になっていたの。」
「(…………『水』―――)」
「どうしたの?ササラ―――」
「私達は……何か『大きなもの』を、見落としているのかもしれません。 まだその現場は、一般開放されていませんよね?」
「ええ―――……」
「ならば、私もそこへ行きたいと思います。 行って……確かめなければ―――」
ノエルが、ササラを呼んだのは、なにも母娘関係だから―――と言う事ではありませんでした。
そう―――それも、言うなれば“方便”……
端から見れば、実の母娘ではありましたが、ノエルは、ササラの母―――としてではなく、優れた一級の冒険者としての意見を、聞きたかったのです。
つづく




