#26
“かつての仲間”だった、シェラザードとの依りを戻す為にと、ササラ主導の下、“依頼”は開始されました。
しかしここで、思わぬ告白が、仲間の一人である『赫キ衣の剣士』より齎されたのです。
それこそは―――人族だと思われていた、男女一組……
『ヒヒイロカネ』と『クシナダ』に関わる、“ある秘密”だったのです。
#26;緋鮮の記憶
「ササラも聞いてくれ―――実は、このオレとクシナダの身体には、僅かながらだが、『鬼人の血』が流れているんだ。」
その“秘密”……とは―――
ヒヒイロカネとクシナダの2人は、“純粋”な人族ではなかった―――と、言う事実……
そう―――彼と彼女の体内に流れている血に、“鬼人”の要素が含まれている……との告白が、そこでなされたのです。
『鬼人』―――……
敵性の『亜人』として、“強者”に部類される種属。
力強く、その武は、たった一人でも人族や、エルフ族の一軍団にも匹敵すると言われている。
しかも中には、魔法を唱えられる者もいるとされている。
ただし、他の種属との関係は、決して良くはなかった。
ただ―――……過去に、たった一人だけ、“ヘテロ”が存在していた……
「『鬼人の血』……? それは……まさか―――?!」
その、“存在”は……かつて、こう―――呼ばれていた……
【緋鮮の覇王】
と―――……
シェラザードや、クシナダ達、若い世代の誰もが、その生き様に憧憬れを抱き、幾度となく読み返された、“創作話上”の、登場人物……
しかしそれは、決して創作話ではなかったことを、『赫キ衣の剣士』は、話し始めたのです。
そう……ヒヒイロカネとクシナダは、奇しくも、かの英雄が組んだとされる、“仲間”の子孫だったのです。
「オレの“母さん”は、緋鮮の覇王が率いていた、仲間の一人―――【清廉の騎士】……。 そして、クシナダの“母”は、【神威】と呼ばれていた。」
「(“母親”……?)それはおかしくありませんか? 確か人族は、どう生き長らえたところで、100年そこそこが関の山のはずですが……」
「そうよね……言われてみれば――― それに、かの“お話し”は、350年も前の…昔話―――?」
「“普通”に考えればな……。 だが、あの“お話し”にもあったはずだぜ? 緋鮮の覇王の仲間の2人が、瀕死の重傷を負った時、そこで何をされたか……」
「(!)確か……緋鮮の覇王の血を―――与えられて…… そう言えば、あの“お話し”には、『仲間の2人』としか記述はありませんでしたが…… それでは??」
「そう言う事さ―――“人”と“鬼人”の血を、半分ずつ持った、オレの母さんとクシナダの母は、人族の国の“都”である、『マジェスティック』には、戻りづらくなってな…… だから“今”は、緋鮮の覇王の国……鬼人族の“郷”『スオウ』に身を置いている。」
「そんな事が……かつて魔界を救ってくれた人達が、そんな迫害の憂き目に曝されていたなんて……!」
今にして知らされる、かつての英雄達の末路―――
魔界の危機の為にと立ち上がってくれた者達が、今や煙たがられて、本来の種属からは“出入り禁止”を言い渡されているとは……知る由だになかったのです。
けれど、大切な処は、そんな処ではなく……
「それよりも、ヒヒイロカネさん、まさかあなたは―――?!」
「ああ―――その通りだよ……ササラ。 このオレの身には、緋鮮の覇王の“英霊”を宿すことが出来る……。 けどな、この『降霊術』を施してくれた、クシナダの母―――【神威】である『ホホヅキ』様から、言い聞かされてきたモノだったぜ……。」
『あなたが、その身に宿すこととなる“方”は、強力過ぎます……。 強すぎる“薬”は、時として“毒”となりて、あなたの肉体を蝕むでしょう…… ゆえに、レベルが低いうちに、この術を使おうとは思わぬように…… ただ―――“あの方”が、お求めになられれば、その限りではありませんが……。』
「―――と、な。」
「なるほど……“それ”が、賭けの正体だったのですね。 では、勝算は―――?」
「正直言うと、判らねえ…… まさに、“鬼”が出るか“邪”が出るか……て、ところだな。 だけど……オレ達の気持ちが、緋鮮の覇王に届いていれば―――……」
勝算は―――5分と5分…… いや、その予測も少々虫が良すぎるかも知れない……と、思えるほどでしたが、そんな不確定なものにでも縋らなければならない時、弱者はどうするのか……
それは、最早言うまでもなく―――……
* * * * * * * *
一方その頃、アウラはその行動を早めていました。
軽めの武装を施し、エヴァグリムの城下に舞い降りる、『飛竜高機動兵団』……
突如たるダーク・エルフの襲来に、城下の街は混乱の坩堝と化しました。
そして、その報を受けた王女シェラザードも、アウラの行動に抗しうるべく、“常備兵”“予備役兵”、更には城内に常駐する“近衛”の一部を、対処に回しました。
これにより……一時的に、エヴァグリムの城内には、常駐の兵力は“手薄”となった―――
そう―――“これ”が……“これ”こそが、シェラザードが希んだ状況……
“保身”の術に長けた、“老いた亀”の様な―――“肥りすぎた豚”の様になってしまった“連中”の身辺には、程度の警護すらついてはいない……
これが“機会”―――ようやく巡ってきた……
この一瞬を作り上げる為だけに、私がどれほど骨を折ってきたことか……
待っていなさいよ―――“連中”!
しかし―――王女の目論みは、呆気なく潰える事となる……
それも、目が冴える程の、『緋鮮のドレス』を身に纏い、『黄金』で誂えた『甲冑一式』を装備し、『黄金の剣』を携たずさえたる……
一人の“女傑”の手によって―――。
つづく




