#25
今現在に於いて、自分達が得られた状況と情報を手にし、『黒キ魔女』であるササラは、考察を巡らせました。
シェラザード様は、恐らくエヴァグリムの国に蔓延っている、悪徳の芽を摘むために、国内ではなく、国外であるマナカクリムに、“助け手”を求めに来た……
そして、一定以上の“絆”を深めた仲間達に対し、その『真の目的』を話したのでしょう……
それは、これから仲間達自身の身に、“死”と言う危険性が及ぶとしても、一定以上の“絆”を深めた者達からの同意は得られたはず……
なのに―――なぜ……“見切り”を?
もしかすると、『公爵ヘレナ』……その存在の所為?
そこは判るにしても……アウラの動機が、今一つ判らないのですよね……
確かに―――今、展開されている包囲陣は、知らない者達から見たら、“脅威”そのものでしかないのですから……
けれど、その“実態”は――――――
アウラ……あなたは、『武装をしていない軍隊』で、なにをしようとしているのです?
ササラは、ネガ・バウムの姫将軍たるアウラが、軍略に優れた“武将”であることを周知していました。
そしてまた、かの国家が擁する、その軍団としての強さも―――
その事実一つを取ってしても、“脅威”ではあったものの、今回の『出師』に関しては、その主旨を異にしていたのです。
それは……『武装を解除している』と、言う点……
この『事実』を、ササラは知っていた―――
けれどしかし、『軍略に優れている』と言うのは、ある意味で“虚”を“実”――― “実”を“虚”と見せるのも、巧みでなければならない……
そしてササラは―――そこを踏まえた上で、一つの結論を下すのでした。
#25;“秘密”の暴露
「皆さん―――私からのお願い……いえ、『依頼』を受けてもらえませんか。」
「えっ?ササラからの依頼クエスト―――? また、『黒キ魔女を討伐せよ』以上の『無理クエ』なんじゃ……」
「そうですね、ある意味では“それ”以上かも―――」
「ヒィ君……」
「悪ぃ……」
「けれど……まだ内容を伺ってはいませんが。」
「はい…… 今、私が把握している事だけを申し述べると、現在エヴァグリムの城を包囲するように展開している、アウラ率いる軍団は――― 『ハリボテ』です……。」
「(……)―――は? いや……え??」
「そんな……アウラ様が率いている軍団が、『ハリボテ』―――などとは……」
「けれど、ササラ様は“その事”を知っている―――なぜです?」
「“使い魔”―――です……。 それを方々に巡らせることで、私は“ここ”に居ながらにして、魔界全土の出来事を把握出来ているのです。 それに、アウラ率いる軍団を、“ハリボテ”と言い切った理由も――― かの軍隊は、“全武装を解除している”…… まあ言わば、今回は『慰労旅行』と言ったところでしょうか?」
「そん…な―――では、アウラ様の、エヴァグリムでの口上は、“ハッタリ”??」
「“それ”も、“その時点”では正解です。 が……情報の伝播は、既に本国へと届いている事でしょう。」
「お……おいおい―――そりゃマズい…ってもんじゃ……」
「だから、ここで“一手”打つのです。 それに、シェラさんも“その事”に、既に気付いている…… そして、それに伴う、ネガ・バウムからの援軍も――― 今、シェラさんが欲しているのは、『破局点』なのです。
「(!)では……“その為”の『私達』なのであり―――『公爵ヘレナ』……」
「はい…『緋鮮の記憶』の記述が、ほぼ事実であるとするならば、あの桁外れの強さを持つヘレナとの『血の誓約』は、何者にも代えがたいことだったのでしょう…… それに、私達は所詮“生者”です、常に“死”と言う危険と、隣り合わせである冒険者とは言えど…… 深き“絆”―――“信頼”を分かち合ったとは言えど、『死んでくれ』と言うには、憚れもしたのでしょう……。」
「(……)シェラ―――」
「クシナダさん……だからと言って、“あなた”は、このままでいいのですか? あんなにまで“嫌悪”し――― あんなにまで一人の異性を巡って“火花を散らし合い”――― あんなにまで……“大切となってしまった”『王女』と言う存在を…… “あなた”は放っておける―――と、言うのですか。」
ああ……その通りだ――――――
私の想いなど、所詮見抜かれていた……
あんなにまで“嫌い”――――――
あんなにまで“邪魔”に思い――――――
こんなにまで“大切”になってしまった、王女と言う存在を……
見放す訳には行かないと――――――
クシナダは―――別離れの挨拶もないまま、自分達の下から去ってしまった、かつての仲間から譲渡られた、豪華な装飾具を手に、胸元近くで『ギュッ!』と握りしめると、誓いを立てたのです。
「(……)ササラ様―――あなたからの『依頼』、私は受けようと思います。 そして彼女に会った時、面と向かって、こう言おうと思います…『いい加減にしろ』―――と……。」
「(……)判りました―――“今は”それでいいでしょう…… それで、他の方は?」
「私も―――クシナダと同意見です。 私達を頼ろうとしながら、強力な味方を得たからと、それまでの関係をご破算―――ですか? 私も冒険者である以上、“沽券”と言うものがあります。 それを、王女様に見せつけてやりたいですね。」
「(……)そうですか―――では、ヒヒイロさん……あなたは?」
かつての仲間シェラザードの想いを汲み取り―――次々と誓いを立てる『|同志《なかま達』……
ただ―――その内で、最後に残された『赫キ衣の剣士ヒヒイロカネ』は……
「オレの気持ち……か――― そうだな―――……」
このオレ達の“可能性”を信じ、“それ”に賭けてくれた『あいつ』……
そうか…そう―――だよな……
『あいつ』も一方的だったが―――ならオレも、一方的はダメ……ってことはないよな。
その“決意”を問はれた時―――“自分”と、『ある者』に関する、“ある秘密”を打ち明けるのでした……。
「なあ……クシナダ――― ならオレ達も、そろそろ明かすとしようぜ……」
「(えっ?)ヒィ君―――? あなた………まさか―――」
「ああ……シェラのヤツは、一時でもオレ達の事を頼ってくれた……。 確かに、あいつの想いは、シェラの一方的な想いかも知れないが……」
「ダメよ―――! 何を言っているの……?! 今のままじゃ私達は―――」
実は、彼ら2人には、“ある秘密”がありました。
それは、クランのメンバーだったシルフィにさえ、語った事のない……
ある、危険性を孕んだ秘密―――
「えっ?! あなた達……仲間である私や、“あの人”にも、語っていなかった事があるの?」
「ああ……その通りだ。 けど、“ある時機”が来たら、この秘密を話そうと思っていたんだ。」
「ヒィ君?どうしたと言うの……? その気持ちは判らないではないけれど……今の私達のレベルでは、成った処で、立ち待ちの内に……」
「ああ……判っているさ、クシナダ――― だからこれは、このオレの、一方的な想いだ!!」
つづく




