#24
今回―――ネガ・バウムの姫将軍、アウラが起こした軍事行動に、疑問を投げかける者がいました。
そして“その者”は、数々の疑問を紐解いていく内に、ある……“最悪の事態”を際立たせてきたのです。
「(……)これは…少々まずいことに―――」
「だから、どうしたってんだ?ササラ―――」
「先程、私が至った予測と、今しがた至った予測とで、状況が激しく違わせてきているのです。」
「それは……一体どう言う事?」
「先程の、シルフィさんが得たと言う、“過去”の『布陣図』。 それに伴う“過去”の『着地点』のあり方…… そして―――“今の代”は、“前の代”とは、考え方が根底から違う……」
「(はっ!)ああっ―――!?」
「そうです―――“過去”のように……“今まで”のように……“対処”をしてしまえば、『エヴァグリム』は確実に、この世から消滅してしまいます。 そう……優れた軍略家である、アウラの手によって―――!」
「そ……そんな?! では…シェラは? シェラは―――?!」
「判りません―――けれどシェラさんは、この事も視野に置いて、身分を隠し―――“ここ”を訪れた…はず…… なのに……なぜ………“今になって”その事を―――『断念』? いえ…違いますね―――」
「どうしたんだ?ササラ―――」
「少しお待ちを………もう少しで、見えてきそうなのです―――シェラさんの…真の目的が………」
#24;『破局点』の模索
優れた智嚢を持ち、経験も豊か―――であるがゆえに、思考は巡る…廻る……めぐる………
そして、巡った果てに見えてきたモノとは―――
その一方―――シェラザードは………
「(ふうぅ~~んむむ…)―――………。」
「我が主―――なにか悩ましい事でも?」
「ああ…いやね―――折角アウラが取ってくれた行動、無駄にしちゃいかんでしょう? ………とは言ってもねえ~“タイミング”ての? それを間違っちゃうと、立ち待ちの内に、この国は危うくなっちゃう…… てかさあ~~この“タイミング”てのが実に厄介でね? ほんの少しでもズレちゃえば、アウラの目論み通り、この国は魔界から消滅しちゃう―――のよねえ~…」
「つまり………あなた様からすれば、『破局点』が欲しい―――と?」
「そ―――…それがあれば、間違いなく私の真の目的も叶う……… もうこれ以上、“連中”のやりたい放題をのさばらせておくのは、我慢の限界なのよ―――」
シェラザードの【真の目的】―――
それこそ、今まで王国の王家を蔑ろにし、仇を為してきた者達への、『粛清』―――それでした。
彼女はもう、我慢がならなかったのです―――
“連中”が起こす行動は、総てが自分達の為―――
城下へ住む、下々達のことは露ほども考えず、いつも贅沢三昧に振舞える“様相”に―――
しかも、自分の父であり、この国の王であるセシルも、“象徴としての王”として、成り果ててしまっている……
例え、“連中”の派閥である、“子爵家”から婿養子として、出されてはいるにしても、一国の王なのだから、言うべき処は、言ってもらいたかった……
けれど……“側仕え」には、それが出来ない―――
“側仕え”は、“連中”が政治を壟断しやすいようにと、シェラザードの“実母”である『ヒルデガルド』に嫁がせた、カイライ………
しかし、そこに夫婦間の愛情はなかったか―――と言えば、シェラザードはこう答えるでしょう…
『そんなことは、ない』―――と……
そう…確かに、『政略結婚』であったとは言え、ヒルデガルドが亡くなるまで、夫であるセシルは妻を愛した―――
ヒルデガルドもまた、“連中”の手によって殺されてしまうまで、夫を愛した―――
その愛の結晶こそが、シェラザードなのです。
しかし―――母であり、妻である者を失ってしまった時から、“親子”間の関係も、『流転』する―――
“国王”とは名乗りながらも、政治の実権などはなにもない……
だからこそ父は―――自分の娘の『監視役』としての、“側仕え”として生きていくことを選択した……
父は―――娘であるシェラザードしか見ていない……
それは、“父”であるからこそ―――そしてまた“国王”であるからこそ…
あるいはまた、“連中の傀儡”であるからこそ、娘の動向を見続け…ながらも―――
自分の“ご主人様”達の為にと、報告を上げていたものだったのです。
それはまさに歪んだ愛情―――いえ、最早それは、歪み過ぎた愛憎……
だからこそ、シェラザードは、そんな“父”に同情出来なかった―――
国王たる父には、同情すら湧かなかった―――
もう…国内には、味方は見当たらない―――
だからこそ、国外に救いを求めたのです。
そこで巡り合った、“運命共同体”―――
私の選択は間違っていなかった……
きっとこの人達なら、“連中”へのカウンター・パワーとなってくれるだろう……。
けれど、そこで―――“一つの誤算”が生じました。
それが、自分の行き過ぎを、差し止める為に…と、“連中の傀儡”と成り果ててしまった、父から差し向けられた刺客―――
しかし、この“刺客”の正体こそ、自分も幾度となく読み返したことのある、『緋鮮の記憶』…
あのお話しに登場している、『ヴァンパイアの公爵』その人だったのです。
そのお話しでは、『ヴァンパイアの公爵』の記述は、そうありませんでしたが……
“強さ”に関しては、桁外れになされていた―――
その事を知っていただけに、シェラザードは兼ねてからの計画を変更したのです。
それと言うのも―――
実際自分が、これから起こそうとする変革は、無事で済む―――とは思っていなかったから……
だから…これから、一緒に傷つき、或いは死んでくれと言う、ある意味無茶ブリにも似たことを頼み込むのに、“絆”を…関係を深めようとしていたのです。
そんな中で出会った、“強者”―――
もう既にその身は“不死”であるから、程度以上の心配はいらない……
それどころか、あのお話しでも、主人公達を手助けしてくれていた……
呆れるほどに“強く”―――
呆れるほどに“不死”―――
呆れるほどに“独善”で―――
呆れるほどに“傲岸”にして―――
呆れるほどに“不遜”―――………
それが唯一許された存在―――【公爵ヘレナ】だった………
そうした“彼ら”が、私と『血の誓約』を立ててくれた………
この、唯一無二にして、強者である存在が、私の味方に付いてくれるなら………
だからこそ、絆を紡いできた者達に、『見切り』をつけたのです。
つづく




