#19
高らかなる宣言を以てなされてしまう―――宣戦布告……
けれど、お互いを知っていた者達は、彼女達の関係が良好であるのを知っていただけに、少々困惑をしていました。
しかしまた、お互いを知っていた者は、彼女達の関係―――のみならず、お互いの国家同士の関係を知っていただけに、困惑はしませんでした。
しかしながら―――……
そう……これが、本来の―――“エルフ”と“ダーク・エルフ”の、両国家間の関係……
それを、いわば『休戦状態』にまでさせたのは、間違いなく“彼女”の手腕。
しかし……判らないものです―――
なぜ、あなたは、“今”になって?
それはそれとして―――
「あなたの国『ネガ・バウム』が、私の国『エヴァグリム』を獲る? やはりそう言う事だったのね――― 私達が飼っている『禽』からの報告によると、この城を包囲するように、ネガ・バウムの『飛竜高機動兵団』が、展開している事を知りました。 そして……前線の指揮官である『姫将軍』であるあなたが、近くの街であるマナカクリムに現れた―――との報告も受けています。 つまり……あなたの『姫としての公務』も―――」
「フ・フ・フ―――そうだ、さすがに察しがいいな…… この日の為に、私は準備を着々と整えていたのだ。 贅を尽くし、民草のことは知らぬとばかりに貪り尽くす、この国に巣食う“身中の蟲”のような、上級貴族や一部の官僚を駆除するために立ち上がったのだ! 貧困に喘いでいる民草に施しをしようともせず、結局エルフの王族は、そうした者達に救済の手を差し伸べることすらもせず、上級貴族や一部の官僚に媚び諂い、利益を貪るだけの“獣”と化してしまったのだ。 だが、安心するがいい……この国を獲った暁には、民草たちには安寧の日々が訪れる事を約束してやろう!」
今の……彼女達のやり取りを受けて、一体どちらに正義の軍配が上がるかは、本当の両国家間の関係を知らなかった、ヒヒイロカネやクシナダにも判ってきたことでした。
そう―――あの時、アウラが言っていたように、『姫としての公務が忙しい』と言うのも、総ては『この日』の為……
『休戦協定』を締結ぶ際、取り交わされたであろう“条件”―――
この国は、この私が責任を持って変える―――だから、“その時”が来るまで待って。
けれど、それだけを言ってばかりじゃ、あなたの信を得られないだろうから……定期的に“ここ”へ訪れて頂戴……
その時に、進捗を話してあげるから……
けれど――――――
もし………………
#19;“真実”は、不都合の塊
お前の力不足で、お前自身が屈してしまい、お前が上級貴族や一部の官僚と同様に堕ちてしまった時……
私は―――ネガ・バウムは、エヴァグリムを獲るに際し、躊躇なく……容赦なく侵攻を開始する―――
そう言う“約束”……だったのだからな。
そう―――これが本来の、彼女達の関係……両国家間の関係だったのです。
だからこそ―――あの時……マナカクリムでお互いの顔を見合わせた時……
シェラザードは―――
もう……進捗を話す時が来ちゃったんだ……。
うわぁ~~てか、ちょっと早すぎくない?
一応は、“尻尾を掴んだ”ってところまでなんだけど……
“行動”を起こすまでには至らないかなあ~~―――
けどまあ、“いざ”となれば、“裏の手”もあることだし。
ああ~~けどなあ~~なるべくなら“裏の手”は、使いたくないと言うか……
―――と、この様に、嬉しさ4分、苦悩6分と言った様な状況……
では、一方のアウラは―――
彼女がマナカクリムに居ようとはな……
……と、言う事は、ほぼ内偵は進められて、“変革”はすぐそこまで迫っている……と、見ていいようだな。
では、各部隊に伝達の齟齬が起こらぬようにしておかねば……な。
―――と、こういう解釈をしていたのです。
ですが……蓋を開けてみれば、何も変わらなかった――― 何も変えられなかった―――……
? ?? ???
しかし―――?
たった一つ判らなかったのは、“その動機”……
なぜ―――“彼女”は、“今”になって、元の鞘に収まろうとしていたのか……
なぜ―――“彼女”は、大切な仲間達の前で、王女として振舞ったのか……
なぜ――――――“彼女”は………………
そして、宣戦の布告を終えた、ダーク・エルフの姫将軍は……
「あの……アウラ様―――?」
「今回は済まなかったな。 私達の両国家間の“つまらない事”につき合わさせて……」
「(えっ……)“つまらない事”―――?」
「(……)『戦争』など―――侵略行為など、一番の下策だからですよ……。」
「えっ―――けど、じゃあ……」
「“小競り合い”程度ならば、幾つかはあったのですが…… 今回の様に、大規模な軍事行動の展開は―――実に350年ぶり……」
「(!)350年―――て……大昔あったとされる、当時の魔王軍との……」
「それに……その出来事は、あのお話し―――『緋鮮の記憶』が、そのモティーフにしたと言われている…… だったとしたら―――やはり、あのお話しは……!」
「そう……“創作”ではありません―――何者かが、“真実”を覚られないよう、巧妙に“脚色”をした、『不都合の塊』なのです。」
「(真実を覚られない……?)あの―――っ……『真実を覚られないよう』……って、どう言う事なのですか?」
「『真実を知る』と言う事は、ある意味で都合のよい事ばかりとは限らないからです。 それに“あなた達”には、『不都合な真実』を知るには、まだ尚早過ぎるのです。」
ダーク・エルフの姫将軍であり、『黒竜の乗り手』として知られるアウラは、自分達の真実を見せようと……
いや、本当の処は、何かの冗談であってほしい―――と願いを込め、ヒヒイロカネやクシナダ、そしてササラの3人を伴い、シェラザードの真意を確かめようとしました。
本当の処は……仲間である3人の姿を見せれば、絆されて、“間違い”であることを示してもらいたかった……
なにしろ、その場所には“いた”のですから―――
けれど、そこで思わずも知れる……
自分が認めた者の、変わり果てた姿に……
だからこそ布告られてしまう―――
かつて約束したことを……
それに、皮肉にも、アウラの側には、本来であれば自分達の国家間の関係上、関係のない者達が3人……
だからこそ――― 一旦その場は退くことにしたのです。
だが、しかし―――――――――
つづく




