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第4話 純粋それとも単純?

「あたしと涼樹は同じクラスだって。よかったね」

「それはさっき聞いたからわかってるって」

 先ほど受け付けで聞いたことを真琴は嬉しそうに繰り返している。

 オレと真琴は自己紹介をし終わった後、受け付けのほうへと行った。

 そこで、受け付けを行っていたのはオレ達の先輩。つまりは上級生だった。その人に自分の名前を言ってどこのクラスになるのかを教えてもらった。それだけならよかった。

 けど、その上級生に微笑ましい光景を見るような笑顔を浮かべて「よかったですね。お二人とも同じクラスですよ」とか言われた。

 たぶん、いろいろ勘違いをされていたと思う。いや、あの表情は絶対に勘違いしていたはずだ。恋人か何かに。

 真琴は真琴で嬉しそうな表情で「そうなんですか!」といやに弾んだ声で言ってた。たぶん、そのせいで誤解を正せないくらいに勘違いされたはずだ。

 こいつは、純粋すぎるんだと思う。または周りがしっかり見えていない。まあ、どちらにしろ危なっかしいって事は確かだ。

 というか、なんでこいつはオレに好意的、というか懐いてるんだろうか。前世の記憶の中であったことが原因だとは思うんだが、懐かれるようなことをした覚えはない。

「涼樹、同じクラスだから、ずっと一緒にいられるね」

 真琴は幼い顔に嬉しさを溢れさして、その嬉しさをオレに分け与えるかのような笑顔を浮かべてそう言った。なんというか、その、すっごく可愛かった。

「りょ、涼樹、そ、そんなにじっと見られてると、恥ずかしいんだけど……」

 微かに頬を赤く染めながらオレから視線をそらす。そんな真琴の様子を見ていてオレははっと我に返る。オレは不覚にも真琴の表情に見惚れてしまっていたようだ。

 知らぬ間に脈打つのが早くなった心臓を落ち着かせるためにオレも真琴から視線をそらす。

 こんなにも落ち着かないのは初めてのことだと思う。緊張することは幾度となくあったがそんなときでもオレは落ち着いていたはずだ。

 それなのに今のオレはとても落ち着かない。でも、緊張はしていない。だから、オレはいろいろと戸惑っていた。

 なんでオレは落ち着いていられないんだ、ただたんに真琴の顔を見てただけだろ?自問自答を繰り返すが答えは出ないし落ち着くことはない。

 そうこうしている間に体育館の前まで来た。ここで入学式をするらしいがまずは教室に行くのが先だ。だけどオレと真琴はそこで立ち止まる。

 この学校の体育館はオレが通っていた中学校のものよりも一回り大きい。それだけ経済面で豊かな学校なのだろう。

 一際目を引くものがその体育館についている。この学校の校章である鏡とその上にある『高』という文字だ。鏡が鏡峰の鏡を表しているのはわかる。しかし、峰、というのはどこにどうやって表されているのだろうか。

 オレが見る限りそれらしいものは見受けられない。もしかしたら、峰、というのについては全然考えられていないのかもしれない。

「ここで、入学式をするんだ。……すっごく大きい体育館だね」

 真琴は「はわー」とか感心してるんだか驚いてるんだかよくわからない声を漏らしながら体育館を見上げている。

 オレはその姿を見て微かに笑った。なんだかその姿が小さな子どものような反応のようで面白かったからだ。

「?涼樹、何で笑ってるの?」

 どうやら真琴はオレが笑っているのに気がついたようだった。

 怒ると思い嘘をつこうと思ったがやめた。真琴だったらおもしろい反応を返してくれそうな気がしたからだ。

「いや、お前の行動が子どもっぽくっておもしろかったからつい、な」

「むぅ、あたしのことそんなふうに見てたの?あたしは子どもっぽいんじゃなくて純粋なんだよ!」

 真琴は怒りながらそういう。けど、少しむきになってるところが子どもっぽくっておもしろかった。というか、自分で自分のことを純粋なんて言うか?

「そんな反応をしてる時点で子どもっぽいって」

 オレは声を殺して笑いながらそう言ってやる。

「むむ、涼樹のいじわる」

 不満そうに口を尖らせながら真琴は言う。

「さってと、早いところ教室の方に行くぞ」

 オレは真琴が不満そうな表情をしていることを無視して再度歩き始める。

「あ、涼樹、ちょっと待って」

 オレが歩き始めたのに気がついた真琴が慌てたようについてくる。ちらり、と後ろを振り返ってみると真琴の顔から不満そうな表情はなくなっていた。

 真琴が芝居で表情をかえられるほど器用なやつだとは思わない。だから、慌てたときに一瞬にして不満な表情が崩れたんだろう、とオレは思う。たぶん、心の中でも全然不満な気持ちなんてなくなってるはずだ。

 まあ、これはオレの単なる想像なのでわからない。けど、もしオレの思っているとおりなら真琴はどんだけ単純なやつなんだ?

 そんなことを思いながらオレは真琴と共に自分達の新しい教室へと向かった。

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