第9話:棘の森と、回復の連打
無頼の牙パーティーが休日を終え、九日目の朝を迎えた。
アレン・ヴォルドは宿屋の部屋で道具ベルトをしっかりと締め直し、小型のノートをポケットに入れた。
黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日の集中力を込める。
休みの日の温かさがまだ胸に残っていたが、今日からはまたクエストの日々だ。
ギルドの入り口では、いつもの三人が待っていた。
ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。
「アレン! おはよう! 休みは楽しかったな! 今日はまた本気でいくぜ!」
レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。
「ははっ、ガルドは休み明けから張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」
バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。
「アレン、今日は飯の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」
アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。
「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。今日のクエストはなんですか?」
ガルドが豪快に胸を叩く。
「ミリアちゃんに回してもらった『棘の森』の魔植物退治だ! 報酬もそこそこいいらしいぜ!」
クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして笑顔で待っていた。
「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは棘の森の魔植物群です。棘が飛んでくるので気をつけてくださいね。アレンさんたちの連携なら大丈夫だと思います!」
ミリアは地図を渡しながら、追加で小さな情報もくれた。
「森の奥に大きな親株がいるらしいです。そこを倒せば一気に片付くはずですよ。このパーティー、どんどん目立ってほしいんです。頑張ってくださいね!」
アレンは丁寧に礼を言った。
「ありがとうございます、ミリアさん。いつも情報まで教えてもらって助かります」
ガルドが親指を立てる。
「おう! ミリアちゃん、期待しててくれ! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」
レオンがくすくす笑う。
「受付嬢の期待を背負うとはな。アレン、回復、頼りにしてるぞ」
バーンがのんびり頷く。
「まあ、戦いが終わったら飯だな」
四人は馬車に乗り、西部の棘の森へと向かった。
森に入ると、地面から生えた棘のような植物があちこちに生い茂り、危険な雰囲気を漂わせている。
魔植物の群れが動き出し、鋭い棘を飛ばして襲いかかってきた。
「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前でぶち破る!」
ガルドが大剣を振り上げて突進した。
魔植物の棘がガルドの腕や肩に突き刺さり、すぐに血がにじむ。
「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」
「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」
アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。
緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、棘の傷を癒していく。
同時に支援魔法でガルドの力を強化し、動きを少し速くする。
「ガルドさん、親株を狙ってください! 周りの小さいのは後回しで!」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」
レオンが後方から風の刃を連発し、魔植物の棘を切り落とす。
「おいおい、また無茶かよ。アレン、俺にも強化を!」
バーンが盾で棘の雨を受け止め、斧で魔植物を叩き切る。
「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」
戦闘は激しく続いた。
魔植物の棘が次々と飛んできて、ガルドとバーンが何度も傷を負う。
アレンは汗を浮かべながら回復魔法を懸命に連発した。
精神力がじわじわと消耗していくのを感じつつも、仲間たちの傷を一つずつ癒していく。
「アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」
「了解です……回復、続けます!」
緑色の光が何度も閃く。
アレンの魔法がなければ、この棘の森での戦闘はすぐに苦戦していただろう。
レオンが風魔法で棘の軌道を乱し、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。
ガルドが大剣で親株の根元を狙い、ようやく大きな魔植物を切り倒した。
親株が倒れると、周りの小さい魔植物も勢いを失い、次々と枯れていった。
森に静けさが戻る。
ガルドが息を荒げながら大笑いした。
「ははっ! 勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら危なかったな!」
レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。
「ははっ、相変わらず無茶だったが、よく耐えたぞ」
バーンがのんびり笑う。
「いい運動になった。今日は飯を豪華にしようぜ」
アレンは汗だくになりながら、軽く微笑んだ。
「みんな、無事でよかったです……連携が少しずつ良くなってきてると思います」
ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。
「お前がいるおかげで、俺たちはもっと無茶できるんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」
ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから明るく手を振ってきた。
「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか?」
ミリアの緑の瞳が輝いている。
アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は嬉しそうに頷いた。
「すごいですね……アレンさんの回復魔法がみんなをしっかり支えてるんですね。このパーティー、どんどん目立ってほしいです!」
その夜、『鉄の杯』で四人は勝利を祝った。
ガルドがジョッキを高く掲げて叫ぶ。
「無頼の牙に乾杯!」
レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。
「ふっ、今日もアレンの回復が鍵だったな」
バーンが肉を頬張りながらのんびり言う。
「アレン、これからもよろしくな」
アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。
棘の森での激しい戦い。
回復魔法を連発する毎日。
ミリアの温かい応援。
そして、男ばかりのバカな仲間たち。
追放されてからわずか九日。
無頼の牙での日々は、確実に自分の居場所になりつつあった。
明日もまた、回復を連打する日々が続く。
でも、今はこの仲間たちと一緒に、前を向いて歩いていけそうな気がした。




