第4話:パーティー名は「無頼の牙」だ!
朝のギルドはいつものように賑やかだった。
アレン・ヴォルドは宿屋から出て、道具ベルトをしっかりと締め直した。
黒髪を短く整え、茶色の瞳に少し疲れを残しながらも、今日もクエストに向かう準備を整える。
ギルドの入り口では、すでに三人が待っていた。
ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて大声を上げている。
「アレン! 今日も元気か! 昨日はよく回復してくれたな!」
レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら皮肉っぽく笑う。
「ふっ、ガルドがまた無茶する気満々だぞ。アレン、回復の準備はできてるか?」
バーンは無精髭を撫で、のんびりとした顔で盾を担いでいる。
「アレン、朝飯はちゃんと食ったか? 戦う前に腹を満たさないと力が出ねえぞ」
アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。
「みんな、おはようございます。今日のクエストはなんですか?」
ガルドが豪快に胸を叩く。
「今日は少し南の森で出た『樹木の魔獣』退治だ! 報酬も悪くないらしいぜ!」
四人がクエスト受付カウンターに向かうと、ミリアが明るい笑顔で迎えてくれた。
金髪のポニーテールが元気よく揺れる。
「アレンさんたち、おはようございます! 今日も頑張ってくださいね。……あ、ところでパーティー名って決まってるんですか? 報告書に書くときに必要なんですけど」
その言葉に、四人は一瞬顔を見合わせた。
ガルドが目を丸くする。
「パーティー名……? そんなもん、考えてなかったぜ」
レオンが肩をすくめる。
「ふっ、確かに。適当に『ガルド隊』とかでいいんじゃないか?」
バーンがのんびり笑う。
「俺は『飯食い隊』でもいいけどな」
アレンは少し困った顔になった。
「パーティー名はちゃんとあった方がいいと思います。ギルドのランキングにも影響しますし……」
ミリアがカウンターに肘をつき、興味津々で身を乗り出す。
「男の人たちばかりのパーティーですし、かっこいい名前がいいですよね! 何かイメージありますか?」
ガルドが突然、拳を握りしめて立ち上がった。
「よし、決めた! 俺たちのパーティーは『無頼の牙』だ!」
レオンが即座に突っ込む。
「無頼の牙……? お前、そんな大層な名前、急にどうしたんだよ」
ガルドが大剣を軽く振り回しながら豪快に笑う。
「いいだろ! 無頼ってのは、ルールに縛られねえって意味だ! 牙ってのは、俺たちの攻撃が鋭いってことだぜ! アレンが回復で支えてくれりゃあ、俺たちはどんな魔物にも噛みつける! 完璧じゃねえか!」
バーンがのんびり頷く。
「まあ、響きは悪くないな。無頼の牙……なんか男臭くて気に入ったぜ」
アレンは少し驚きながらも、静かに言った。
「無頼の牙……ですか。少し荒っぽい名前ですが、みんながいいならそれでいいと思います」
ミリアが目を輝かせて手を叩く。
「無頼の牙! いい名前ですね! なんだか熱くて、応援したくなります! 報告書にしっかり書いておきますね。アレンさんたち、無頼の牙パーティー、頑張ってください!」
ガルドがミリアに向かって親指を立てる。
「おう! ミリアちゃん、ありがとうな! これからは『無頼の牙』として、どんどん活躍してやるぜ!」
クエストを受けて、四人は南の森へと向かった。
馬車の中で、ガルドがまだ興奮冷めやらぬ様子で話し続ける。
「無頼の牙、いい響きだろ? アレン、お前も気に入ったか?」
アレンは小さく微笑みながら答えた。
「はい……少し照れくさいですが、悪くないと思います。みんなで決めた名前ですから」
レオンが窓の外を見ながら皮肉っぽく言う。
「ふっ、無頼の牙か。まあ、ガルドが一番無頼っぽいから、ぴったりかもしれないな。アレン、回復は今日も連発でお願いするぞ」
バーンが干し肉を頬張りながらのんびり言う。
「牙が折れねえように、アレン、よろしくな」
森に到着すると、樹木の魔獣が姿を現した。
大きな木の幹のような体に、鋭い枝のような爪を持つ魔物だ。
二体が絡みつくように動き、攻撃を仕掛けてくる。
「よし、無頼の牙の初陣だ! いくぜ!」
ガルドが大剣を振り上げて突進した。
魔獣の枝爪がガルドの肩を切り裂くが、ガルドは構わず斬りかかる。
「アレン、回復!」
「連打しろ! まだ来るぞ!」
アレンはすぐに軽い回復魔法を唱え、緑色の光でガルドの傷を癒した。
同時に支援魔法で皆の力を強化する。
「ガルドさん、側面から回り込んで!」
「そんな悠長なこと言ってる暇はねえ! 無頼の牙は正面突破だ!」
レオンが風の刃を放ち、魔獣の動きを乱す。
バーンが盾で攻撃を受け止め、斧で反撃を加える。
「アレン! 俺にも強化を!」
「了解です……回復も続けます!」
アレンは後方から必死に魔法を連発した。
精神力が徐々に消耗していくのを感じながらも、仲間たちの傷を一つずつ癒していく。
樹木の魔獣の攻撃は激しく、ガルドとバーンが何度も傷を負うが、アレンの回復がそれを支え続けた。
「無頼の牙、負けねえぞ!」
ガルドが叫びながら大剣を振り下ろす。
レオンの風魔法が魔獣の体を切り裂き、バーンがとどめを刺した。
二体の魔獣がようやく倒れ、森に静けさが戻る。
ガルドが息を荒げながら大笑いした。
「ははっ! 勝ったぜ! 無頼の牙、初勝利だ! アレン、お前の回復がなかったら危なかったな!」
レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。
「ふっ、連打お疲れ。無頼の牙の回復役として、よく働いたぞ」
バーンがのんびり笑う。
「アレン、今日も飯奢るぞ。無頼の牙の勝利を祝おうぜ」
アレンは汗だくになりながらも、軽く微笑んだ。
「みんな、無事でよかったです……パーティー名、ちゃんと決まってよかったですね」
ギルドに戻ると、ミリアがカウンターから身を乗り出して迎えた。
「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 報告書にパーティー名をしっかり登録しましたよ。なんだか、この名前、印象に残りますね」
ミリアの緑の瞳が少し熱を帯びているように見えた。
「アレンさんたちの活躍、ギルド内で少しずつ話題になってきてます。次も良いクエスト、優先的に紹介しますね!」
ガルドが笑う。
「おう! ミリアちゃん、ありがとう! 無頼の牙はこれからもっと目立つぜ!」
レオンがアレンを指差す。
「回復役のおかげだな。アレン、連打の調子が上がってきたぞ」
バーンが満足げに頷く。
「アレン、今日もよく頑張った。無頼の牙の要だな」
その夜、『鉄の杯』で四人は勝利を祝った。
ガルドがジョッキを高く掲げて叫ぶ。
「無頼の牙に乾杯!」
レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。
「ふっ、無頼の牙か……まあ、悪くない名前だ」
バーンが肉を頬張りながらのんびり言う。
「これからもよろしくな、アレン」
アレンは麦酒を一口飲み、静かに仲間たちを見回した。
追放されてからわずか数日。
地味な支援役だった自分が、「無頼の牙」という男臭いパーティーの一員として、回復魔法を連打しながら戦っている。
まだ連携はぎこちないが、仲間たちの笑顔を見ていると、少しずつ前を向ける気がした。
ミリアの積極的な応援の視線も、どこか心強い。
無頼の牙パーティーの物語は、まだ始まったばかりだった。




