第35話:勝利の余韻と、4人の未来
ギルドの大きな掲示板の前に立ったとき、アレン・ヴォルドは静かに息を飲んだ。
三十五日目。無頼の牙パーティーは今日、古代灯台の守護者を倒した余韻の中で、ギルドの雰囲気が少し変わっているのを感じていた。
ここ数週間、回復魔法を連発する負担が体に蓄積し、朝の目覚めが重く感じる日が続いていたが、今日の勝利は少し特別だった。
ガルドが大剣を肩に担いだまま、赤毛を掻き上げながら満足げに言った。
「ははっ、昨日はでかかったな! あの守護者、ようやく倒せたぜ。アレン、回復連打お疲れ!」
レオンが銀髪を軽くかき上げながら、珍しく穏やかな笑みを浮かべた。
「ははっ、ガルド、お前はいつも勢いだけだな。アレン、昨日はかなりキツそうだったぞ。無理してないか?」
バーンは無精髭を撫でながら、のんびりとした足取りで言った。
「アレン、今日は肉を多めに持ってきてくれたか? 勝利の飯は俺が豪華に作るからな」
アレンは少し微笑んで答えた。
「みんな、ありがとうございます。昨日は守護者の魔力波が強くて、回復が追いつかなくて焦りました。でも、みんなが無事でよかったです」
四人がギルドのホールに入ると、周囲の冒険者たちの視線が集まっていた。
「無頼の牙だ」「昨日、古代灯台の守護者を倒したらしいな」「男ばかりなのに、だんだん本格的になってきてるって評判だぞ」
ガルドが胸を張って笑った。
「聞こえてるぜ! 無頼の牙はこれからも頑張るからな!」
レオンがくすくす笑いながらアレンを見た。
「ふっ、視線が増えてきたな。アレン、お前の回復が効いてるぞ」
バーンがのんびり言う。
「アレン、今日はいい気分だな。飯、豪華にしようぜ」
ミリアがカウンターから少し早足で近づいてきた。
「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 昨日は古代灯台の守護者討伐、おめでとうございます! ……アレンさん、顔色が少し疲れてるみたいですが、大丈夫ですか?」
アレンが軽く報告をすると、ミリアは目を輝かせて言った。
「すごいですね……無頼の牙の成功率、最近本当に安定してきてますよ。ギルド内で『あの男ばかりのパーティー、だんだん本格的になってる』って声がたくさん聞こえてきます。このパーティー、どんどん目立ってほしいです!」
その時、他の受付嬢たちもカウンター越しに視線を向け、ひそひそと話していた。
「無頼の牙、昨日も無事に帰ってきたよね」「回復役のアレンさん、頑張ってるみたい」
アレンはそれを聞いて小さく息を吐いた。
まだ小さな変化だが、無頼の牙の名前が確かに広がり続けている。
その夜、『鉄の杯』では四人がいつものテーブルに座っていた。
今日は勝利の余韻が残る中、静かに酒を飲んでいた。
ガルドがジョッキを掲げたが、トーンは少し低めだった。
「無頼の牙に乾杯……昨日はみんな、お疲れ」
レオンがワインを注ぎながらアレンを見た。
「アレン、昨日は特に負担が大きかったな。少しペースを落としてもいいんじゃないか?」
バーンが肉を焼きながらのんびり言う。
「アレン、今日はゆっくり休め。俺が飯を多めに作ったから、たくさん食え」
アレンはジョッキを手に、静かに言った。
「みんな、ありがとうございます。まだ大丈夫です。でも、気遣ってくれて嬉しいです」
四人は静かに酒を飲み、昨日 の戦いの話を少しずつ交わした。
古代灯台での激しい戦い。
回復を連発する日々の積み重ね。
そして、仲間たちが自分を気遣ってくれる温かさ。
ガルドがジョッキを置いて、真剣な顔で言った。
「なあ、アレン。お前が来てから、俺たちは本当に変わったと思うぜ。これからも一緒にやろうな」
レオンが珍しく真面目な声で続けた。
「ははっ、認めるのは癪だが……お前がいなかったら、今頃俺たちはもっと苦労してただろうな」
バーンがのんびり笑いながら言った。
「アレン、感謝してるぜ。これからもよろしくな」
アレンはジョッキを手に、静かに言った。
「みんな……ありがとうございます。俺も、このパーティーにいられてよかったです」
四人は静かに酒を飲み、今日の出来事やこれまでの戦いの話を少しずつ交わした。
ギルドでの視線とざわめき。
回復を連発する日々の積み重ね。
そして、仲間たちが自分を気遣ってくれる温かさ。
アレンは麦酒を一口飲み、胸の奥が少し軽くなるのを感じた。
追放されてから三十五日。
無頼の牙での日々は、試練を増やしつつ、確実に「仲間」というものを教えてくれていた。




