第36話:無頼の牙の絆と、未来への一歩
ギルドの大きなホールに朝の光が差し込む中、アレン・ヴォルドは静かに息を整えた。
三十六日目。無頼の牙パーティーは今日、ギルドから特別に推薦された「輝く平原の魔獣群」討伐クエストを受けていた。
ここ数週間、回復魔法を連発する日々が続き、体に蓄積した疲労が少しずつ重くなっていることを、アレンは自覚していたが、今日は少し違う気持ちでクエストに臨んでいた。
ガルドが大剣を肩に担いだまま、赤毛を朝日に輝かせて元気よく言った。
「よし、今日は輝く平原だ! 魔獣群がいるらしいぜ。アレン、回復頼むな! お前がいなきゃ俺、突っ走ってただろうな」
レオンが銀髪を軽くかき上げながら、皮肉っぽく笑った。
「ははっ、ガルド、お前はいつも同じセリフだな。アレン、顔色があまり良くないぞ。無理してないか?」
バーンは無精髭を撫でながら、のんびりとした足取りで盾を担いでいた。
「アレン、今日は肉を多めに持ってきてくれたか? 平原は風が強いからな。戦いが終わったら温かい飯にしようぜ」
アレンは少し微笑んで答えた。
「みんな、今日は平原なので視界がいいそうです。回復をこまめにかけながら、連携を意識しましょう。……少し負担が大きいかもしれませんが、頑張ります」
ガルドが豪快に笑った。
「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いだ! お前がいるからこそ、俺たちは無茶できるんだぜ」
四人が輝く平原に到着すると、広大な草原に魔獣の群れが広がっていた。
風が草を揺らし、魔獣たちが一斉に動き出す。
「よし、来い!」
ガルドが大剣を振り回して突進した。
魔獣の爪がガルドの胸を切り裂き、激しい痛みが走る。
「アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」
アレンは即座に回復魔法を唱えた。
緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、傷を癒していく。
同時に支援魔法でガルドの力を強化する。
「ガルドさん、群れの中心を避けて! レオンさんが風で散らしてくれれば……」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」
レオンが後方から風の刃を連発し、魔獣の動きを乱した。
「おいおい、群れが多すぎるぞ! アレン、強化も頼む!」
バーンが盾で爪攻撃を受け止め、斧で魔獣を狙った。
「アレン、こっちも来てるぞ!」
アレンは汗を浮かべ、精神力を振り絞って回復魔法を懸命に連発した。
頭の奥がずきずきと痛み、視界が少し狭くなってきたが、必死に光を維持し続けた。
戦闘は平原の広い空間で長引いた。
魔獣の群れが次々と襲い、ガルドとバーンが何度も傷を負う。
アレンは息を荒げながら、回復と支援を交互に繰り返した。
限界を感じる中でも、仲間たちの傷を一つずつ癒し続けた。
ようやく最後の魔獣を倒した時、アレンは膝をついて大きく息を吐いた。
ガルドが息を荒げながら笑った。
「ははっ……勝ったな。アレン、今日はお前もかなりキツそうだったぜ」
レオンがアレンの背中を軽く支えながら言った。
「ふっ、群れが多かったな。アレン、よく持ちこたえた」
バーンがのんびりとした声で言った。
「アレン、今日は少し休め。飯は俺が多めに作るから」
帰りの馬車の中は、いつもより少し静かだった。
ガルドが珍しく声を落として言った。
「アレン、お前が倒れたら俺たち終わりだぞ。無理すんなよ」
レオンが窓の外を見ながら続ける。
「ははっ、認めるのは癪だが……お前がいなかったら、今頃俺たちはもっと苦労してただろうな」
バーンが干し肉を齧りながらのんびり言う。
「アレン、感謝してるぜ。これからもよろしくな」
アレンは小さく微笑んだ。
「みんな……ありがとうございます」
ギルドに戻ると、ミリアがカウンターから明るく手を振ってきた。
「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます!」
ミリアの緑の瞳が輝いている。
アレンが報告を終えると、彼女は嬉しそうに言った。
「すごいですね……無頼の牙の成功率、最近本当に安定してきてますよ。ギルド内で『あの男ばかりのパーティー、だんだん本格的になってる』って声がたくさん聞こえてきます。このパーティー、どんどん目立ってほしいです!」
その夜、『鉄の杯』では四人がいつものテーブルに座っていた。
今日は勝利の余韻が残る中、静かに酒を飲んでいた。
ガルドがジョッキを掲げたが、トーンは少し低めだった。
「無頼の牙に乾杯……今日はみんな、お疲れ」
レオンがワインを注ぎながらアレンを見た。
「アレン、今日は特に負担が大きかったな。少しペースを落としてもいいんじゃないか?」
バーンが肉を焼きながらのんびり言う。
「アレン、今日はゆっくり休め。俺が飯を多めに作ったから、たくさん食え」
アレンはジョッキを手に、静かに言った。
「みんな、ありがとうございます。まだ大丈夫です。でも、気遣ってくれて嬉しいです」
四人は静かに酒を飲み、今日の戦いの話を少しずつ交わした。
輝く平原での激しい戦い。
回復を連発する日々の積み重ね。
そして、仲間たちが自分を気遣ってくれる温かさ。
ガルドがジョッキを置いて、真剣な顔で言った。
「なあ、アレン。お前が来てから、俺たちは本当に変わったと思うぜ。これからも一緒にやろうな」
レオンが珍しく真面目な声で続けた。
「ははっ、認めるのは癪だが……お前がいなかったら、今頃俺たちはもっと苦労してただろうな」
バーンがのんびり笑いながら言った。
「アレン、感謝してるぜ。これからもよろしくな」
アレンはジョッキを手に、静かに言った。
「みんな……ありがとうございます。俺も、このパーティーにいられてよかったです」
四人は静かに酒を飲み、今日の出来事やこれまでの戦いの話を少しずつ交わした。
ギルドでの視線とざわめき。
回復を連発する日々の積み重ね。
そして、仲間たちが自分を気遣ってくれる温かさ。
アレンは麦酒を一口飲み、胸の奥が少し軽くなるのを感じた。
追放されてから三十六日。
無頼の牙での日々は、試練を増やしつつ、確実に「仲間」というものを教えてくれていた。
これからも、回復を連発する日々が続く。
でも、今はこの仲間たちと一緒に、ゆっくりと前進していける気がした。




