第33話:ギルドのざわめきと、4人の約束
ギルドの大きな掲示板の前に立ったとき、アレン・ヴォルドは軽く息を飲んだ。
三十三日目。無頼の牙パーティーは今日、ギルド内で少し変わった空気を感じていた。
ここ数週間、回復魔法を連発する日々が続き、体に蓄積した疲労が少しずつ重くなっていることを、アレンは自覚していた。
ガルドが大剣を肩に担いだまま、赤毛を掻き上げながら言った。
「よし、今日はギルドで次のクエストを選ぶぜ! 何かいいのないか?」
レオンが銀髪を軽くかき上げながら、皮肉っぽく笑った。
「ははっ、ガルド、お前はいつも勢いだけだな。アレン、顔色があまり良くないぞ。無理してないか?」
バーンは無精髭を撫でながら、のんびりとした足取りで言った。
「アレン、今日は肉を多めに持ってきてくれたか? ギルドの飯も悪くないが、俺の焼いた肉が一番だぜ」
アレンは少し微笑んで答えた。
「みんな、今日はギルドでゆっくりクエストを選びましょう。回復をこまめにかけながら、慎重にいきましょう。……少し負担が大きいかもしれませんが、頑張ります」
四人が掲示板の前に立つと、周囲の冒険者たちの視線が集まっていた。
「無頼の牙だ」「最近、成功率が高いらしいな」「男ばかりなのに意外と粘り強いって評判だぞ」
ガルドが胸を張って笑った。
「聞こえてるぜ! 無頼の牙はこれからも頑張るからな!」
レオンがくすくす笑いながらアレンを見た。
「ふっ、視線が増えてきたな。アレン、お前の回復が効いてるぞ」
バーンがのんびり言う。
「アレン、今日はいい気分だな。飯、豪華にしようぜ」
ミリアがカウンターから少し早足で近づいてきた。
「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日もクエストですか? ……アレンさん、顔色が少し疲れてるみたいですが、大丈夫ですか?」
アレンが軽く報告をすると、ミリアは心配そうに言った。
「最近、無頼の牙の名前をギルド内で本当にたくさん聞きますよ。『あの男ばかりのパーティー、だんだん本格的になってる』って声が増えています。このパーティー、どんどん目立ってほしいです!」
その時、他の受付嬢たちもカウンター越しに視線を向け、ひそひそと話していた。
「無頼の牙、最近クエストを順調にこなしてるよね」「回復役のアレンさん、頑張ってるみたい」
アレンはそれを聞いて小さく息を吐いた。
まだ小さな変化だが、無頼の牙の名前が確かに広がり続けている。
その夜、『鉄の杯』では四人がいつものテーブルに座っていた。
今日はギルドでの視線とざわめきが残る中、静かに酒を飲んでいた。
ガルドがジョッキを掲げたが、トーンは少し低めだった。
「無頼の牙に乾杯……今日はみんな、お疲れ」
レオンがワインを注ぎながらアレンを見た。
「アレン、今日は特に負担が大きかったな。少しペースを落としてもいいんじゃないか?」
バーンが肉を焼きながらのんびり言う。
「アレン、今日はゆっくり休め。俺が飯を多めに作ったから、たくさん食え」
アレンはジョッキを手に、静かに言った。
「みんな、ありがとうございます。まだ大丈夫です。でも、気遣ってくれて嬉しいです」
四人は静かに酒を飲み、今日の出来事やこれまでの戦いの話を少しずつ交わした。
ギルドでの視線とざわめき。
回復を連発する日々の積み重ね。
そして、仲間たちが自分を気遣ってくれる温かさ。
ガルドがジョッキを置いて、真剣な顔で言った。
「なあ、アレン。お前が来てから、俺たちは本当に変わったと思うぜ。これからも一緒にやろうな」
レオンが珍しく真面目な声で続けた。
「ははっ、認めるのは癪だが……お前がいなかったら、今頃俺たちはもっと苦労してただろうな」
バーンがのんびり笑いながら言った。
「アレン、感謝してるぜ。これからもよろしくな」
アレンはジョッキを手に、静かに言った。
「みんな……ありがとうございます。俺も、このパーティーにいられてよかったです」
四人は静かに酒を飲み、今日の戦いの話を少しずつ交わした。
ギルドでの視線とざわめき。
回復を連発する日々の積み重ね。
そして、仲間たちが自分を気遣ってくれる温かさ。
アレンは麦酒を一口飲み、胸の奥が少し軽くなるのを感じた。
追放されてから三十三日。
無頼の牙での日々は、試練を増やしつつ、確実に「仲間」というものを教えてくれていた。




